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女神と共に、相談を!  作者: 沢谷 暖日
心音と共に、

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65/83

ソワソワの時間

 部屋をウロウロ。

 時計を見てはウロウロ。

 時計を見てはウロウロ。

 それを繰り返してる。ウロウロ。


 時計が指すのは八時半。

 あと三十分もあるらしい。

 ──あるらしい? いや、ある。

 先程、家を出たとラインがあった。

 三十分。いつもは短いその時間が、今となっては遥か遠くの手の届かない物のように思えてならない。


「そうだ!」


 私はウロウロを止める。

 今日、持っていくものを確認しよう!

 それなら時間も潰せる。

 宿題はもうリュックに詰めたから、あと何か持っていくものあるかな。

 と、私は部屋を見回す。

 何もなさそうだった。


 いや待て。

 今一度、準備物の確認だ。

 英語の課題、数学の課題。

 地理の課題に現代文。

 それと反省文の用紙二枚。

 やる事多いな。

 ……えっと、後は、スマホは必要だし。

 なんならスマホは必要最低限な気がする。

 これがないと心音とのコミュニケーションができない──。

 いや待て。

 私がスマホを忘れたということにしよう。

 心音は私とハグをしなければ声に出して会話ができない。

 つまり、コミュニケーションをとるためには、常時ハグの状態じゃなければいけない!


「あ……」


 待て待て。

 これだと、筆談になる可能性もあるのか。

 むしろそっちかな。

 残念。スマホ忘れたフリ作戦は諦めよう。


「はぁ……」


 なんか今日の私は不安定だ。

 気分が上がったり下がったり。

 蝶々が飛んでる時の様な心持ちだ。

 考えてからこの表現は微妙かなと思う。

 ……まぁいいか。

 伝家の宝刀『まぁいいか』。

 便利な言葉だと思った。


 心音と一緒にいる時に必要なもの。

 おやつとか……?

 んー。勝手に家のものを持ち出すのもな。

 ゲーム機とか……?

 心音はあまりしなさそうだしな。

 トランプとか……?

 あ、トランプどっかに失くしたままだ。

 じゃあ、何も無いじゃないか。


「心音がいるから……それで、いいのかな」


 いいのだろう。

 時計を見れば四十五分。

 よし。半分を切ったな。

 もう持ち物はこれで十分だし。リュックに詰め込んだ。

 じゃあ、後は、待つのみ。


 けれど暇なので私の格好を確認する。

 黒のハイネック、黒のショーパン。

 ブラックに染まった私である。

 けど、洒落た服はこれくらいしか無かった。


 香水とかつけようかな。

 とか思ったけど、やめておいた。

 なんだかそれは張り切りすぎだ。


 あー。楽しみだー。

 女の子の家に遊びに行くだけで、こんなにも張り切っている人は私だけだろう。

 これって、一般的にはちょっと変なことなのかも。

 ……一般的ってなんだっけ。

 そもそも論、そこが不明瞭だった。

 同性の恋愛なんて、きっと自分達が計り知れないほど前からあったもので、それを一般的から除外するのは何処か違う気もする。

 好きだから、それでいいと、私は勝手に思っている。


 こんな複雑なことを考えても、私に得はない。

 時計を見て、そろそろかなと思い、リュックをしょって階段を降りる。

 迷わず玄関に向かい、靴箱からスニーカーを取り出した。

 ドアを開けて振り向いて。


「いってきまーす!」


 家の中に明るく呼びかける。

 母親の力ない声が聞こえてきた。

 多分まだ寝ぼけておるな。

 ま、今は心音だ。


 外へと出て、私は彼女の到着を待つ。

 同時に少し緊張の波が押し寄せてくる。

 心音ママと話すのもだけど、やっぱり心音だ。

 先週、遊園地に行く時に会ったのも緊張はしたが、だけど今は、それとは違う色の緊張感を覚えていた。


 家の敷地外に行って道路を見渡してみる。

 するとこちらに一台、見たことのある車が向かってきていた。

 すぐに心音の家の車だと理解をする。

 私は少し後ずさりその車が来るのを待つ。

 ショーパンの小さいポケットに入ったスマホがバイブレーションを起こしたと同時に、先の車が私の前でブレーキをした。


 ちなみに私から見て、車が向いているのは左方向。

 助手席側の窓が下りてきて、そこから心音ママが顔を覗かせた。


「お久しぶり! どうぞ、乗っていって!」


 陽気に言い放たれ、「おねがいしまーす」と割と丁寧にお辞儀をし、心音のいる後部座席へと私は入っていった。

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