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女神と共に、相談を!  作者: 沢谷 暖日
心音と共に、

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62/83

待ちかねたキス

 放課後だ。

 例によって、授業はあまり聞いていない。

 頬杖をついて、窓の外と心音を見ていたら、いつの間にか終わっていた。

 なんて素晴らしいことなのだろうか。


 今日も部室に向かう。

 今日は。心音とキスをするからだ。

 そういう理由がなくても、一応部室には向かう予定だったのだけれど。

 そういう明確すぎる理由が、今日はある。

 何日ぶりかな。二日か、三日?

 考えるのも意味ない気がして、私は席を立ち上がった。


「……心音」


 荒れ狂う心と真逆に、私のボソボソという声。

 さすがに補聴器はそれを拾わないと思ったが、普通に心音も立ち上がる。

 こくりと頷くのを確認して、私は心音の手を取る。

 いつもよりも、なんだか手汗の量が多い気がした。私の手汗がだ。



     ※



「ただいま。我が部室」


 正確には学校の部室。

 その場所へと足を踏み入れ、カバンをそそくさと端っこに置きに行く。

 カバンからスマホを取り出して、また、心音もスマホを取り出す。

 なんだか隠れてスマホを使っているこの状況は、なんだか不良らしい。

 と言うよりスマホ中毒者?

 少なくとも、ライン中毒になりつつあるのは事実だった。


『さてと。心音!』

『はい!』


 呼びかけると心音から元気の良い返事が返ってくる。ラインだけど。

 横を見れば、やっぱり真顔です。

 けど。昨日は一応、笑顔を見せてくれたんだよなぁ。と思い返す。

 私が美結ちゃんの家へと向かう時だ。

 あの時は割と非常事態でそんなに意識していなかったけど。

 心音の笑顔というものは非常に貴重なものだ。

 もうちょっと頭に焼き付けておけばよかったなぁと。そう思う。

 ダジャレとか言えば笑ってくれるのかな……。いや、笑うわけないな。

 と、考えながら、私は心音へと送る文面も同時に考える。


『キスをいたしましょう!』


 考えたって、これしかなかった。

 美結ちゃんのことが頭をよぎったが、でも、私の相手は心音だ。

 今、見るべきは心音。


『出た。今日は積極的なタイプの伊奈さんなんですね』

『そうですがなにかー!』


 というか積極的なタイプの伊奈さんってなに。

 ほのおタイプとか、みずタイプの私もいるのだろうか。

 いません。


『そんなにキスがしたいんですか?』

『い、いや。これはですね。心音さんが、私とキスをしたいって言ったからですね……』


『あ。そうなんですね。そういう考えならしませんけど』

『うっそーーーー! 私がしたいんですーー!』


『へー。伊奈さんが。私と。キスを。したいって思っているんですねー。へー』


 助けて。

 これはなんて返せばいいのだろうか。

 前にキスした時も、こういうやりとりがあった気がしなくもない。

 ともかく。手の動くままに返信しよう。


『そうですがっ! じゃあ、心音さんはどうなんですかー?』

『したいです』


「うっ」


 その即答に思わず口から漏れる。

 私の心にこうかはばつぐん。

 既に早かった心拍数が加速していっている感じがする。


『しないんですか? あと、十秒以内にしてくれなかったらしませんけど』

『します‼︎』


 急かされて、私はスマホを速攻ポケットに突っ込んだ。

 心音もいつの間にやらスマホをしまったらしく、私の方を向いていた。

 キスを欲しがっている顔には見えなかった。

 これじゃ、こんなに顔が熱くなっている私がバカみたいだけど。

 それでも、私は、心音との距離を縮める。

 部屋は少し暗い。

 外は雨で、この部屋の電気も付けるのを忘れていたから。

 心音と私の背丈は近い。だからしやすい。

 今、何秒経ったかな。もう十秒は超えている。

 いきなりすぎるキスで、私も若干困惑中だ。

 まぁ。私からしようって言ったんだけど……。


「じゃ、じゃあ……」


 心音の頬に手を当てて。

 一本じゃ足りないので、両頬に。

 耳に入る雨音と私の心音(しんおん)を意識しながら。

 私は、ゆっくり。ゆっくりと。口を近づける。

 心音は目を閉じた。

 私は目を開けたまま。

 外さないように、その口へと──。


「んぁっ……」


 口を合わせた途端、心音のエロい声が耳を刺激した。

 刹那、私の下半身が微かに震える。

 その震えの正体を理解できない。


 私は両頬を押さえたまま、少しだけ離れる。

 舌で、私の乾いた唇に水分を含ませて、また心音の唇に戻る。

 本能的にしたその行動で、心音の唇との密着度が上がった気がした。


 けど。何かが物足りない。何がだろう。

 キスをしているのに。もっともっとって。

 私の中の何かが、私を掻き立てるのだ。


 私は、心音をもっと引き寄せた。

 こんなことをしていいのかと悩んだ。

 けど、止まれずに。私は心音の口内に、舌を──。

 これは流石にまずいと思ったけど、心音は。私に、舌を絡めてきた。

 歯と歯も触れ合った。変な感触だ。


 心音の手が、私の両腕を掴む。


「んっ……。はっ……ぁ」


 苦しそうに声を漏らしている。

 やっばい。ちょーかわいい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ごぼぁっ(尊死) [一言] 待ってました。
[良い点] キスに至るまでの二人の会話が軽いノリでありつつも互いに積極的で、まさに「待ちかねた」感が……。 そしてなんと言っても百合キス。これはもう何度目であっても良いものですね……!
[一言] ただひたすらに尊いです、ありがとうございます(T-T)
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