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女神と共に、相談を!  作者: 沢谷 暖日
仲良し少女の恋愛相談

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29/83

挨拶すらも特別な

 登校中。

 てくてくと、いつもよりも晴れやかな気持ちになりながら歩く。


 今日は私一人。

 いつもは楓花が隣にいるけど、今日は「私、先行くね!」とだけ言って、私より十分ほど早く家を飛び出していった。

 家から学校まで歩いて十五分ほどだから、もう着いてる頃だろうけど。

 いつもあんなにべったりと私に付いてきていたのに、今日に限って先に出ているのは、多分だけど桃杏ちゃんが関係しているのではと思う。

 一緒に登校しようと誘われたか、教室に早く行ってお話ししたいとか。

 そういうことを桃杏ちゃんに言われたんじゃないかな。

 だとすると、少し羨ましい。

 だって、いきなり恋人らしいことをしている。


 私は心音と一切そういうのは無くて……って。

 ……待て待て。

 私たちって、まだ付き合ってないじゃん。

 キスとかハグしているのに、付き合ってないっておかしいのではと思う。

 いや、普通におかしい。

 私の考える普通の流れというのは、まず。付き合って一ヶ月目で手を繋ぐ、付き合って三ヶ月目でハグをする、付き合って半年でキスをする。って感じ。

 私と心音は飛ばし過ぎというか、いや、飛ばし過ぎなのは心音の方であって。

 私は、ただ心音の思うままにやらせているわけで。

 だから。付き合ってると、いつの間にやら錯覚していた。


 でも心音は私と『私にこれからもキスして欲しい』と。そう言った。

 その時の、彼女の声、顔が容易に思い出せる。

 これってもう、彼女みたいなものだよね。

 けれど心音は、自分のことを知って欲しいから。

 付き合って、ではなくて、キスをしてと言ったんだ。

 付き合った方が彼女のことをよく知れるのではと、今更思うけど。

 そんなの所詮は結果論で。考えていても仕方のないことなのだと思う。


 だから。私は、心音のことを知ってから。心音と付き合いたい。

 最終的に、そういう結論にまとまった。


 そんなことを思案してたら、いつの間にか学校だった。


 学校の正門をくぐる。

 心音に会いたい。

 その思いが、私を早足にさせる。

 靴を履き替えて、私たちの教室へと歩みを進める。

 前のめりになってコケそうになりながら、たどり着いた教室。

 後ろの入り口から、心音の席の方を即座に見た。


「──いた」


 背筋を伸ばして凛として。

 いつもその場所にいるはずなのに。

 なぜだか、凄く嬉しくなって心臓が跳ねる。


 さっきまで早歩きだったのに。

 いざ、目の先に彼女がいると。足が動かない。

 緊張しているらしい。

 だけど。心音へと抱く思いが、私の背中を押す。

 ゆっくりと。一歩一歩を確かめつつ。

 私は心音の後ろへと辿り着く。


 制服を着た心音を見るのは、私が好きになってから初めてだ。

 女神様と謳われるのも納得の容姿だ。

 ラインしている時も、心音を近くに感じているわけだけど。

 実際に見てみると、かなり違うものがある。


 ──土曜日のキス。あの時から、ずっと溜め込んでいた心音への想い。

 その想いを吐き出すように。


「心音。おはよ」


 たったそれだけを。

 耳元で囁いた。


 微かに震えた、補聴器の存在感が際立つ心音の耳。

 それを確認して、私は自分の席に着く。


 キスできないのが、もどかしい。


 ……自分でも分かっている。

 好きになるのが、早すぎるって。

 でも。これが、私にとっての普通なのかもしれない。

 だって、私は恋をしたことがないから。

 好きって言ってもらえたことがないから。


 私は。心音という沼に、ハマっていってる。

 その沼に入ったら、抜け出せない。

 けれど、抜け出なくてもいいんじゃないかな。


 ……いや、沼はなんか汚い。

 だから。なんだろうな。

 やっぱり……というか。

 沼でもなんでもなく、心音は心音なのだろう。


 それ以上でも、それ以下でもなく。

 寧ろ。それがいい。

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