第74話 賠償責任
──騒然とした様相から、若干の落ち着きを見せ始めたボウダの町。その中心で、ヒスイは何事も無かったかの様に何食わぬ顔をしている。
「少しは頭が冷えたか? この惰竜」
「うむ……確かに少しやり過ぎた様じゃの。すまぬ、旦那様よ……」
荒れ果てた町並みを見て、ヒスイは苦笑いを浮かべた。すると、そんな俺達のやり取りを見て、スミスが溜息を付きながらぼやく。
「しかしまあ、派手にやっちまったなぁ……。どうするよ、あんちゃん……これ……」
その視線が指し示すのは、見事に崩壊したボウダの町。範囲こそ目に映る程度の規模で済んではいる物の、跡形もなく崩れた建物や大通りは、まるで爆撃でも受けたかの様に破壊されている。パッと見でも、その修繕には莫大な費用がかかりそうだ。
「はぁ……。まぁ、やっちまったもんは仕方ないが、これ、幾らぐらいかかるんだろうな……」
確かに、手持ちの金銭には余裕がある。正直、今の俺達はかなりの金持ちだ。しかし、それでもこの規模の修繕工事を保証するとなると、幾ら位かかるのか想像もつかない。足りないという事は無いだろうが、かなりの痛手である事は間違い無いだろう。財布役のスミスが頭を抱えるのも仕方のない話だ。
そんな事を考えていると、突然、後ろから声をかけてくる人物が現れた。蜥蜴の頭……初めて見るが、おそらくリザードマンと言うやつだろう。その、杖を付いた老人と思われるリザードマンは、恐縮しながら話しだした。
「儂はこの町の町長をしております、リザドと言う者ですじゃ」
「あ、ああ……。俺はクロス。騒ぎを起こして申し訳無い。この通り、古代竜はもう落ち着いた。こいつも悪気は無かったんだ。特に敵意があってやった訳じゃない。弁償については出来るだけの事はするから、穏便に話し合いたい」
この町の町長……。その肩書きに思わず身構える俺とスミス。賠償責任の話だろうか。おそらく、騒ぎを聞きつけて駆け付けて来たのだろう。俺は、亜人に対して敵意が無い事を強調して答えた。今は、人間と亜人の国は紛争中。余計な勘違いでゴタゴタに巻き込まれる訳にはいかない。しかし、リザドと名乗るその老人は、そんな俺の予想とは違う反応を見せ始めた。
「べ、弁償なんてとんでもない! あの方の先程の姿……あれは、紛れも無く古代竜様。我等はその逆鱗に触れてしまいましたのじゃ。寧ろ、古代竜様に失礼を働きながら、この程度の被害で済みましたのは貴方様のお陰。逆に礼をさせて頂きたい位の話ですじゃよ……」
は?
弁償どころか礼をさせろ?
──どうやら、ヒスイの奴……自分で言う様に、本当に亜人達からは恐れ崇められる様な存在だったらしい。





