第72話 ヒスイの正体
──亜人の国。
国自体には、特に名はない。それぞれの種族がバラバラに点在し、時に結束し、必要に駆られれば町も作る。ここは、そんな町の一つだ。その為、国としての結束力は薄い。しかし、聞くところによると、今の様に他国と戦争なんかをする場合、種族の垣根を超えて無類の纏まりを見せるそうだ。
「人間の奴隷は高く売れますからね。特に、戦争で身内を殺された様な連中には尚更ね……。しかも、これ程の上玉ときたもんだ。相当、値がつく筈ですぜ。売り払う前に俺達も楽しませて貰いましょう」
「へへへ……兄貴は、亜人でもトップレベルの戦闘力と言われる、虎族の戦士なんだぜ? 怪我しねえうちにサッサと女を置いて消え失せな……」
何ともはや……。
定番過ぎる絡み方に、呆れ果てて言葉も出ない。そんな俺の様子を見て、ビビって喋れないとでも勘違いしたのだろう。更に調子付き始めるチンピラ達。
「おいおい、男も逃がすんじゃねえぞ? 最近、暴れる機会が少なくてストレスが溜まってるんだ。貧弱な人間とは言え、二人掛かりなら少しは楽しめるだろう」
「ヒヒヒ……それもそうですねぇ。こいつ等も運がねえや。兄貴に目を付けられるなんてな」
「二人掛かりどころか、兄貴なら目を瞑ってても勝てますぜ。それじゃあ野郎は兄貴に任せて、俺達は女が逃げねえ様に捕まえておきますか……」
ポキポキと指を鳴らしながら近づいて来る、虎族の男。そして、両脇にいた同じ顔の鼠面……子分と思われる男の一人が、ニヤニヤと下品な笑いを浮かべながらヒスイの腕を掴もうとした。しかし、その瞬間……。
「亜人風情が気安く我に触れるでないわ!」
「ぎゃあっ!」
ヒスイの体から発するオーラに吹き飛ばされ、指一本触れる事すら出来ず飛んでいく鼠男。
「いつから我にその様な不遜な態度を取るようになった、亜人共! よもや、我の存在を忘れたか!」
「おいおい、嘘だろ? 街中だぞ……」
大量の冷や汗を額に浮かべ、焦り始めるスミス。しかし、そんな事等お構い無しに、ヒスイは翠色の光を放ち始めた。一瞬にして、辺りが眩い光に包まれる。
「全く、このバカは……」
やれやれと溜息を付きながら、俺は溢した。やがて、少しずつ収まり始める光の中に、巨大な黒い影が現れる。そして……。
「げえええええええええっ!!」
最初に悲鳴を上げたのは、虎族の男。
「ふん。我の体に触れる事を許されるのは、世界広しと言えど旦那様ただ一人。身の程を知るが良い、無礼者が」
──バキバキと周りの建物を壊しながら、勇壮な深緑の竜……古代竜がその姿を現した。
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