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第61話 暴走モード

「さあ、旦那様! 早速、子作りに励もうぞ! 我も、実はこう見えて初めてなのじゃ……優しく頼むぞ?」


 ヒスイがそう告げた瞬間。


「……氷の微笑インサニティ・スマイル


「な、何じゃ!?」


 不意を突かれたヒスイが、慌てて光の防御壁を展開する。俺達を庇った、あの魔法だ。轟音と共に氷の剣と猛吹雪が荒れ狂い、ヒスイを中心に辺り一面が氷の凍土に覆われる。辛うじて直撃を免れたヒスイは目を見開き、驚いた表情で呟いた。


「こ、これは……! 何という魔力じゃ……まともに食らえば、さすがの我もかなりヤバかったぞ……今のは……」


 ヒスイが額に滲んだ汗を拭う。そんなヒスイに向かい、表情の抜け落ちたアスカが抑揚の無い声で宣告した。


「……死ね。変態竜(エロドラゴン)


 やっぱり……。ぶちギレ(ヤンデレ)状態(モード)だ。冷たい視線は瞳孔が開き、その様はまるで感情を持たない人形の様。だが、事態は俺の予想を遥かに上回っていた。


嫉妬の炎(ストーカーズ・ラブ)!!」


 今しがた凍り付いたばかりの大地が、今度は凄まじいまでの獄炎に包まれる。


「な、何じゃとおっ!?」


 驚きを隠せないヒスイ。何と、ビビまでが暴走(ヤンデレ)状態(モード)に入っていたのだ。ヒスイは、光の魔法陣を最小限で身に纏う。どうやら直撃に備えているらしい。おそらく、先程の防御壁は間に合わなかったのだろう。完全に不意を突かれた形だ。


「死になさい……色欲竜(エロドラゴン)。クロスは私の物……誰にも渡さない……」


 瞳孔の開いたその目は、焦点すら合っていない様にさえ見える。どんよりと暗く光る瞳が、ヒスイをぼんやりと見据えていた。


 一体、何なんだこいつ等……。


 いつの間に、こんなとんでもない能力(ちから)を……。凍り付いた一面の凍土は、一転、見渡す限り焦げ付いた焦土と化した。まさか、俺の様に()()()()()覚醒でもしたのだろうか。さすがに、スミスもこれにはドン引きしている。


 すると、プスプスと燻っている白煙の中で、僅かに動く人影が見えた。やがて、少し着物を焦がしたヒスイが姿を表す。多少のダメージは受けている物の、致命傷には至らなかったみたいだ。さすがに最強の古代竜といった所か。そこへ、暴走(ヤンデレ)状態(モード)の二人がゆっくりと歩み寄る。


 全てを凍り付かせる様な、冷たい碧の殺気(オーラ)と、一切を焼き尽くす紅蓮の紅い殺気(オーラ)。そんなアスカとビビを見て、ヒスイが嘆く。



「くっ……! この力、まさか限界突破能力(オーバー・スキル)か……!! よもや、こんな小娘達まで使えるとは……。一体、何者なのじゃ……お主等……」


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