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第06話 名もなき村

二章スタートしました!

 ──名もない村。



 敢えて名を付けるなら、この村はそう呼ばれるらしい。人の良さそうな髭の男、ビアードがそう説明してくれた。


「村と呼ぶには余りにも小さいけどな」


 もう一人の痩せた色白の男、ミルドが話す。少し寂し気な、自虐的な笑みを浮かべながら。確かに、ようやく見えてきたその村は、余りにも閑散としている。今にも崩れそうな小屋がポツポツと点在し、僅かばかりの田畑が見えるだけだ。村と言うよりも、どちらかと言えば集落。俺が案内されたのは、そういう村だった。


「ビアード、その黒いのは何者だ」


 村の入口に差し掛かると、屈強な大男が声をかけて来た。


「よお、ジャンク。『迷いの森』の入口で拾ったんだ。何でもこの坊主、記憶が無いらしくてな。そのまま放っておくのも何なんで、とりあえず連れて来た」


 ビアードがそう答えると、ジャンクと呼ばれた大男は顔を(しか)めた。


「お前はお人好し過ぎる! 幾らまだガキとは言え、他所者(よそもの)を簡単に入れる訳にはいかん。とりあえず、村長に伺いをたてるべきだ」


「そのつもりだよ、ジャンク。ちょうど今から呼びに行くところだ。心配なら、お前さんも立ち会うがいい」


 軽い調子で笑うビアードと、俺を睨み付けながら話すジャンク。対照的な二人に挟まれていると、ミルドが話に割り込んだ。


「落ち着けよ、ジャンク。坊主が可哀想じゃねえか。どうせ今から村長に会うんだ。(すご)むのは、坊主の話を聞いてからでも遅くないだろ」


 ミルドの言葉が効いたのか、ジャンクは大人しく引き下がった。フンッ! と一つ鼻息を鳴らし、この場を立ち去る。おそらく、村長とやらを呼びに向かったのだろう。


「気を悪くしねえでくれな。ジャンク(あいつ)も悪い奴じゃねえんだ。ただ、この村(ここ)にはああいうタイプはいねえから……。あいつなりに、この村を守ろうと必死なんだよ」


 立ち去るジャンクを見つめながら、ビアードはそう語った。他の村人より体も大きく、そして若いジャンク。彼には彼なりに思う所がある様だ。


「別に気にしませんよ、俺は」


 中身は三十代だからな、俺も。いちいち、こんな事で腹を立てる程、子供じゃない……つもりだ。


 そんな話をしながら暫く待つと、ジャンクが白髪の老人を連れて戻って来た。おそらく、彼がこの村の村長だろう。


「ふぉっふぉっふぉっ。ジャンクから話は聞いたよ、少年。記憶を無くして『迷いの森』を彷徨っていたそうじゃのぉ」


 優し気な、しかし厳しさも含んだ良く通る声で、その老人は語りかけて来た。



 ──しかしこの時、俺の目はその後ろに立つ、一人の少女に釘付になっていた。


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