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第58話 同族の情け

 ──『限界突破能力(オーバー・スキル)』?



 聞いた事がない能力(スキル)だ。


 俺は、暴走した能力(ちから)に意識を奪われそうになりながら、かろうじてその言葉を聞いた。どうやら古代(エンシェント)(・ドラゴン)は、この能力(ちから)について何か知っている様だ。


《ギャアアアアアアアアッ!》


 依然として、灼熱竜(ヒート・ドラゴン)は目の前で苦しみ悶えている。上顎の牙は全て切り落とされ、右眼も失った。喉元からは大量の血を流し、まさに満身創痍だ。しかも、未だに俺の姿すら捉えられていない。その目は、先程迄と違い絶望と恐怖に震えていた。


「……とどめだ」


 そう呟いた俺の声が、灼熱竜には聞こえたらしい。


《う、うわあああああっ!!》


 当初の威厳も何も無い、情けない悲鳴を上げて飛び立とうとする灼熱竜。どうやら、逃げるつもりらしい。勿論、俺は逃がすつもりは無い。広げた羽根に飛び移り、

切り裂こうとした、その時。


《待て! そこまでじゃ!》


 突然、古代竜が地鳴りの様な声で叫んだ。思わず、俺は動きを止める。そして、声の主……古代竜を睨み付けた。


「……どういう事だ?」


 古代竜に向かい、問いかける。奴は、俺と目を合わせる事も無く答えた。どうやら、俺の大まかな気配こそ感じている物の、正確な位置は把握していない様だ。


《仮にも、其奴は(ドラゴン)の頂点に立つ個体の一人。同族のよしみじゃ。すまぬが、見逃してやっては貰えぬか……》


 同情が混じった目で、そう話す古代竜。そうしている間に、灼熱竜は慌ただしく羽ばたきを始めた。そして、一度もこちらを振り返る事無く、飛び去って行く。その姿は、一瞬で小さくなり見えなくなった。


「ちっ……逃したか……」


 灼熱竜を一方的に蹂躙した事により、少しは溜飲が下がった。だが、まだ俺の怒りは収まらない。何しろ、仲間(アスカ達)をやられたのだから。すると、そんな俺の怒りを察したのか、古代竜が口を開いた。


《落ち着け、小僧……よく見るがよい。お主の仲間とやらは、皆無事じゃ》


 そう促され、俺は視線をアスカ達に向けた。


「う……ぐぐ……」


「ハァ……ハァ……」


「むぐぐぐ……」


 虫の息ではある物の、全員生きている! 俺は、一目散にアスカ達の元へ駆け寄った。


「大丈夫か!?」


 立ち上がろうとするアスカを支えながら、問いかける。すると、アスカは少し申し訳無さそうに笑いながら答えた。


「え、ええ……大丈夫。それより……ごめんなさい。役にたてなくて……。でも、やっぱりクロスは凄い……見てた……あの、灼熱竜(ヒート・ドラゴン)を一方的に……。さすが、私の旦那様……」


 そこまで話し、力尽きた様に俺へ倒れかかる。俺は、そんなアスカを支えながらビビやスミスにも目を向けた。二人共、何とか立ち上がってフラフラとこちらへ歩いて来る。


「良かった……皆んな、無事か……」


 一人で立っているのも難しそうだが、アスカも命に別状は無さそうだ。これなら、何とかアスカの固有能力(ユニーク・スキル)、『癒しの光(ヴィーナスフラッシュ)』を使えば皆が回復する事が出来るだろう。安心して気が抜けたのか、ホッとした途端に俺の全身を激痛が駆け抜けた。


「ぐはっ……!」


 何とかアスカだけは支えたまま、片膝を付く。どうやら、先程の限界突破能力(オーバー・スキル)とやらの反動が来たようだ。元々、動ける事自体が不思議な傷を負っていたんだ……こうなるのは仕方の無い話なのかも知れない。


 すると、そんな俺達の様子を見ていた古代竜が問いかけて来た。



《──どうやら、少しは落ち着いたみたいじゃのう。で、どうする? その体で我に挑むつもりか……?》


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