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第56話 灼熱竜

《──人間如きが俺を倒すだと?》



 俺と古代(エンシェント)(・ドラゴン)のやり取りを聞いていた、灼熱竜(ヒート・ドラゴン)が不快そうに言い放つ。そして、俺の言葉を受け入れたのか、成り行きを見守る様な素振りを見せる古代竜。すると、吹き飛ばされて散り散りになっていたアスカ達が、徐々に俺の周りに集まり出した。


灼熱竜(お前)の素材は良い武器の材料になるらしいんでね。それに、さっき俺の仲間を殺そうとした事……悪いけど、見逃す訳にはいかない」


「ヒ、灼熱竜(ヒート・ドラゴン)相手に、あくまで上からの物言い……」


「さすが私の旦那様……」


 相変わらず驚きを隠せないビビと、何故か誇らし気なアスカ。スミスはその様子を、ただ呆然と眺めている。すると、激昂した灼熱竜(ヒート・ドラゴン)が叫んだ。


《この身の程知らずの人間がぁ! あの世で後悔するがいい!》


 そう言って再び、その大きな(あぎと)を裂けんばかりに開く。俺とビビは左右に飛び退き、アスカはスミスを庇う様な陣形を取った。そして、いち早く灼熱竜の左側に回り込んだビビが固有能力(ユニークスキル)を放つ。


「──【拒絶する炎(リジェクト・ファイア)】!!」


 (かざ)したビビの両手から、炎の火柱が迸る。幾重にも重なり、絡み合う様な無数の炎の鞭。灼熱竜(ヒート・ドラゴン)を捕獲する様に、ビビから放たれた火柱が唸りを上げた。しかし……


《フンッ! 人間にしては大した炎だが、俺に火属性の魔法とは笑わせる! そもそも、こんな脆弱な炎など俺には効かぬわ!》


 ギロリとビビを睨み付け、一瞬で炎を掻き消す灼熱竜(ヒート・ドラゴン)。プスプスと白煙だけが残り、いとも簡単にビビの魔法は掻き消された。


「なっ!?」


 驚きの余り、固まるビビ。俺は、その隙をついて灼熱竜の懐に潜り込んだ。目指すのは、奴の弱点……。『逆鱗』と呼ばれる喉元の隙間、僅かに鱗の薄い部分だ。


「──【不意討ちサプライズ・ストライク】!!」


 灼熱竜(ヒート・ドラゴン)の意識から外れ、一直線に喉元へ斬りかかる。その時だった。


 ギロリ!!


 灼熱竜の()()が、ギョロリと動いて俺を捉える。


「何っ!?」


 確かに奴は今、一瞬、俺の姿を見失った。だが、すぐに俺の存在を捉え直す。


 立て直すのが異常に早い! 


 (ドラゴン)ならではの勘と言う奴なのだろうか?


《奇妙な技を使いやがって……小賢しい!!》


 即座に反応を示し、その長い尾で俺を振り落とす灼熱竜。


「ぐはあっ!!」


 側面からまともに尾を叩き付けられ、俺はそのまま吹き飛ばされた。


「クロス!!」


「旦那様!!」


「あんちゃん!!」


 強烈な一撃を見舞われて、地面に叩きつけられる。思わず出る咳と共に、大量の吐血。どうやら、肋骨(あばら)だけでなく内臓もやってしまったらしい。


「が、がはっ!」


 上手く、呼吸すら出来ない。視界の端に、駆け寄って来るアスカが見える。俺は、動く事も出来ずに彼女の治癒能力を待った。しかし、灼熱竜は攻撃の手を緩めない。


《人間風情が調子に乗るからだ! 俺の戦いを邪魔しやがって……死して後悔するがいい!》


 容赦無く、巨大な火球が灼熱竜の(あぎと)から放たれる。


「きゃあああっ!!」


「うわあああっ!!」


 アスカとスミスに襲い掛かる、禍々しい火球。


「──【拒絶する炎(リジェクト・ファイア)】!!」


 咄嗟に割り込んで放たれたビビの魔法が、灼熱竜の火球とぶつかり合う。だが、その威力の差は歴然。放たれた火柱毎飲み込まれ、火球は俺の目の前で爆発した。


「きゃあ!!」


「くっ!!」


「ぐわあっ!!」


 今度は直撃を受け、再び吹き飛ばされるアスカ達。俺は、ただその様子を倒れたまま見せつけられた。そして……



 ──ドクン!!



 何かが、俺の中で弾けた。


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