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第54話 予定外の存在

「──近いわね」



 咆哮の聞こえた方向へと山中を進み、暫くした所でビビが呟いた。


「おそらく、この丘を超えた辺りにいる筈だ」


 先頭を歩く、スミスが告げる。アスカやビビの顔に緊張の色が浮かんだ。すると、いち早く丘の向こうの状況を確認した、スミスが声を上げた。


「なっ!?」


 俺達もスミスに続き、彼の視線の先に目を向ける。そして、俺は思わず言葉を失った。


「こ、これは……」


 搾り出す様にビビが呟く。俺達の目の前に広がっていたのは、尽く木々が薙ぎ倒されて、平地の様になった山の中腹。クレーターの様に地面は窪み、その中心部は緑一つ無い。しかし、俺達の目を釘付けにしているのは、山肌が顕になったその状況では無い。クレーターの真ん中で対峙する、()()()()だ。そう。(ドラゴン)()()いるのだ。


「……どういう事だ?」


 思わず、声が漏れる。目の前にいるのは、深緑の鱗に包まれた如何にもと言う姿の(ドラゴン)。そして、その正面にいるのは、見た目の違う、赤い鱗を纏い大きな羽根を持つ(ドラゴン)。深緑の(ドラゴン)より禍々しく見えるその(ドラゴン)は、飛竜タイプの様に見える。


「ヒ、灼熱竜(ヒート・ドラゴン)……!」


 アスカが驚きの余り、呆然としながら呟いた。その言葉に、ビビが反応する。


「そ、そんな馬鹿な!? 灼熱竜(ヒート・ドラゴン)と言えば、確か魔大陸に生息している(ドラゴン)の筈……」


 目の前の状況が信じられない。ビビの表情は、そんな反応を示していた。すると、呆然と立ち尽くしていた俺達の存在に、その灼熱竜(ヒート・ドラゴン)が気付く。ギロリと鋭い視線を俺達に向け、まるで裂けているかの様な口を開いた。何十本もの鋭い牙が覗き、糸を引く。


《……人間か?》


「喋った!?」


 またも、思わず声に出して反応してしまう。そんな驚きを隠せない俺に、スミスがそっと耳打ちした。


「あんちゃん……(ドラゴン)は最も神に近いと言われている存在だ。そこら辺の魔物とは格が違う。そりゃあ、言葉くらい話しても不思議じゃねえよ」


 なるほど。最も神に近い存在……か。そりゃあ、ギルドの依頼(クエスト)のレベルが高い訳だ。妙に納得した俺は、続けてスミスに尋ねた。


「……スミス。あの灼熱竜(ヒート・ドラゴン)の鱗や牙も、武器の良い素材になるのかい?」


 名前こそ違えど、同じ(ドラゴン)。きっと、良い素材に違いない。俺はそう考えた。すると、スミスが驚いた様な表情(かお)で答える。


「当たり前じゃないか! 灼熱竜(ヒート・ドラゴン)と言えば、古代(エンシェント)(・ドラゴン)と並ぶ竜種の頂点。(ドラゴン)達のトップに君臨する(ドラゴン)の一体だぞ? 詳しくは見てみないとわからねえが、おそらくとんでもない代物だ」


「ほう……」


 俺は、思わずニヤリとした。呆れた様な、恐ろしい物でも見る表情(かお)でスミスが零す。



「──あんちゃん……一体、何をするつもりだ……」


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