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第37話 クロスケール

 ──ざわざわ。



 俺達がギルドのウエスタンゲートを潜ると、周囲がざわつき始めた。


「おい、あれが噂の大型新人冒険者(ルーキー)、『独自の物差し(クロスケール)』だ……」


「相変わらず綺麗だなぁ……ビビちゃん……」


「俺は、何と言ってもアスカちゃんだな! あのクールさが堪んねえ!」


 口々に、俺達を噂する冒険者達。そう。俺とアスカは、これまで誰とも組む事は無かったビビとパーティを組んだ事により、冒険者達の注目を集めていた。その上、ここ数日で目まぐるしい成果を挙げ続けた為に、このギルドでは大型の新人冒険者(ルーキー)として更に注目を浴びている。


 ビビとアスカの美貌(見た目)も相まって、俺達『独自の物差し(クロスケール)』はこの町のギルドでは話題の中心になっていた。


 因みに、パーティ名の『独自の物差し(クロスケール)』は、アスカとビビが勝手に登録を済ませた名前だ。俺の名前(クロス)と、口癖である物差し(スケール)をかけて決めたらしい。まあ、俺はパーティ名なんて何でもよかったのだが。


「ちきしょう……あんな美人を二人も連れやがって……」


「どうせ、魔物を倒してるのは炎熱姫(ビビちゃん)なんだろ? あの坊主は只の情夫だって噂だぜ?」


「全く、色男(イケメン)は得だよなぁ……大した事ねえ癖にB級パーティのリーダーなんだからよ……」


 男達の俺への嫉妬は、日に日に強くなっている様だ。まあ、殆どがビビかアスカのファンみたいな連中なのだが。そんな、馬鹿げた噂話を聞き流していると、知った声が混じっているのに気付いた。


「馬鹿野郎! お前等、何にもわかってねぇ……」


 初日に、少し痛い目にあわせた髭の大男……ゲイルだ。傍らには、例の細いのと太いのを連れている。


「あの連中の中(パーティ)で一番()()()のは、あの坊主なんだよ……。あの、クロスとかいうガキは只者(ふうつ)じゃねえんだ……」


 やられた時の事を思い出したのか、少し恐怖に顔を引きつらせながら、そう、側に居る冒険者達に説明するゲルド。気になってチラリと目を向けただけで、奴は目を反らして下を向いた。


「そんなにビビらなくてもいいのに……」


 苦笑いを浮かべながら、俺は呟いた。そして、それ以上は特に気にする事もなくカウンターへ進み、昨日の成果をバラバラとアリスの前に広げる。


岩壁の巨熊(ロック・グリズリー)の牙と、ついでに倒した魔物達の戦利品(一部)です。適当に精算して貰えますか」


「相変わらず、とんでもない戦果ね……貴方達のパーティ。これ、A級の魔物まで混ざっているじゃない。まあ、どう考えても只者じゃないと思ってた所に、灼熱姫(ビビさん)まで加わったんだから、当然と言えば当然か……」


 驚きを通り越し、もはや呆れに近い表情のアリス。しかし、ビビの奴……結構、有名人なんだな。灼熱姫とか呼ばれてるみたいだし。


「いつも、持ち帰る戦果(魔物の一部)が黒焦げになっているせいですわ」


 何も聞かずとも、ビビはそう説明した。なるほど。あくまで固有能力(ユニークスキル)の存在は隠しているらしい。炎系の魔法でも使ったと誤魔化しているのだろう。


 すると、報酬の内容を確認しながら、アリスが問いかけて来た。


「もう、随分稼いだんじゃない? ここ数日で……」


 何気ない、世間話のつもりだったのだろう。だが、俺もちょうどアリスに聞きたい事があったので、好都合だった。


「ええ……。お陰様で、幾らか余裕が出来ましたよ。だけど、俺の目的は金だけじゃないんです」


 当面の生活費は稼いだし、アスカやビビの装備もある程度は整えた。だが、まだ物足りない。俺は、どんなRPG(ゲーム)でも十分にレベルを上げてからボスに挑むタイプなんだ。旅を続ける前に、もう少し魔物相手に経験値を積んでおきたい。それに、どうしても手に入れておきたい物もある。


「……アリスさん。スミスと言う鍛冶屋に会いたいんですが、どうすれば会えますか?」


 ──魔法剣。


 武器屋の親父から仕入れた情報だ。俺は、その存在を知った時から、どうしても魔法剣(これ)だけは手に入れたい理由があった……。


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