第36話 組んではいけない二人
「──どわあああっ!!」
「……おはよう」
目覚めると、目の前にアスカのドアップ。名もなき村を出て暫くは収まっていた筈のこの行動が、ここ何日かで復活していた。ちょうど、ビビと行動を共にする様になってからだ。
「……どうやって入った?」
ビビとパーティを組んでからは、彼女の強い反対で部屋割を変えている。アスカとビビが元の二人部屋、俺はビビが借りていた隣の一人部屋を使っていた。だが、それからと言うもの、こうして毎朝の様に目覚めるとアスカが見つめている。何度経験しても、これだけは慣れない。そもそも、どうやって毎朝、アスカは俺の部屋に侵入して来るのか……。鍵はしっかり閉めている筈なのに。
「……秘密」
アスカは、その方法を明かしてはくれない。まあ、どんな手を使っても入って来そうではあるので、そこまで真剣に聞こうとは思っていないのだが。
「全く、心臓に悪いよ……これは。まあ、一発で目が覚めるのはありがたいのかも知れないけど……」
誰に言うでもなくベッドから降りると、俺は着換えを済ませながら愚痴を零した。そんな事等は気にも止めず、アスカは淡々とした表情で口を開く。
「……朝食。ビビは先に降りている」
この宿の一階にある食堂の事だ。俺達は毎朝、そこで朝食を摂る事にしている。アスカは俺をおこしに来た……と言う体で、毎朝ここに現れる。何時からいたのかは、余り考えない様にした方が良さそうだが。
ビビが正式に仲間に加わってから数日。どうやら、アスカはある程度、彼女の存在を認めた様だ。やはり、ビビの『この世界を変えたい』と言う想いを知った事が大きいのだろう。何だかんだ、上手くはやっているみたいだ。
「ああ、すぐに降りよう」
部屋内に備え付けられた水桶で顔を洗い、早々に準備を済ませると俺は告げた。アスカと共に、一階の食堂へと向かう。
「──おはよう」
「おはようございますですわ」
既に席に着くビビと挨拶を交わし、俺とアスカも席に付いた。目の前には既に、朝食のスープと黒パン、そして簡単なサラダが用意されている。俺は、早速パンをスープに浸すと、口に運んだ。すると、向かい側に座るビビが話しかけて来た。
「クロス。そんなに慌てて食べたら体に良くないですわ。昨日も遅くまで起きていらした様ですし……。冒険者は体が資本ですのよ」
そう、母親の様にお節介を焼いてくる。しかし、俺はその言葉に違和感を覚えた。
「……何故知っている?」
俺が遅くまで起きていたと言う事。確かに、昨日は眠れなくて遅くまでこの世界の文字を勉強していた。だが、どうしてそれをビビが知っているんだ?
「な、何の事かしら?」
明らかに、動揺して目を反らすビビ。
「……お前、また覗いていたな?」
アスカとはまた違ったタイプの性癖。ビビは、所謂ストーカーだ。どんな方法でなのかは知らないが、何故かいつも俺は監視されている。ビビは、恐ろしい程に俺の行動を把握しているのだ。
そして、最も厄介なのは、その情報をアスカと互いに共有している事だ。二人が仲良くやってくれるのは良い事なのだが、その方向性が少しおかしい。彼女達にとっては当たり前の事の様に、当然と言った顔で俺の情報を交換している。
「はぁ……まぁいい。サッサと食ってギルドに行くぞ」
俺は、この二人の性癖については、既に諦めの境地に達していた。幾ら注意しても聞かないからだ。
──俺に近付こうとする女を尽く殺そうとするヤンデレと、俺の行動を逐一監視して、付け回すストーカー。ある意味、組ませてはいけない二人が手を組んだ。俺は、そんな見た目だけは超絶美少女の二人を連れて、今日も頭を悩ませながらギルドに向かった……。
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