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第33話 ストーカー

「──いい加減にしろ!」



 俺の怒号に、アスカとヴィヴィアンがシュンとなる。宿の食堂で、俺達三人を少し気まずい空気が包み込んだ。


 ヴィヴィアンと初めて会ったあの日から、数日が過ぎた。相変わらず、わざとらしい程に毎回、偶然を装って現れるヴィヴィアン。そして、同じく毎回の様に、あの手この手でヴィヴィアンを殺そうと敵意が剥き出しのアスカ。この二人のやり取りに、俺はいい加減、嫌気がさしていた。で、今の状況である。


「そもそも、ヴィヴィアン。どうして、そんなに俺達に付き纏うんだ?」


 食堂での待ち伏せだけでは無い。事ある毎に、例のバレバレな尾行で俺達を付け回して来る。まるで、監視でもしているかの様に。昨日等は、俺達が捨てたゴミまで漁っていた形跡がある。何を調べているのかは知らないが、ハッキリ言って殆どストーカーだ。


「そ、それは、その……」


 言い難そうに、ゴニョゴニョと呟くヴィヴィアン。そんな彼女に、俺は重ねて問いかけた。


「俺達なら、パーティを組んでも遠慮なく固有能力(ユニークスキル)を使えるからか?」


 既に、俺達にはヴィヴィアンが固有(ユニーク)持ちなのはバレている。ならば、仲間になった所で、もう能力(スキル)を隠す必要は無い。確かに、パーティに誘うには十分な理由ではある。しかし、だ。本当にそれだけの理由で、ここまで俺達に付き纏う物だろうか。そんな俺の思惑通り、ヴィヴィアンはその考えを否定した。


「ち、違いますわ! 勿論、それも理由の一つではありますけど……それよりも……」


 ハッキリと否定しつつも、またもや歯切れが悪くなるヴィヴィアン。


「それよりも?」


 俺は、そんなヴィヴィアンに答えを急かした。


「そ、それよりも岩壁の巨熊(ロック・グリズリー)をたった二人で倒したと言う、貴方達の能力に興味が湧いたのですわ。私の秘密も知っている上に、そんな実力(ちから)まで持っている冒険者なんて中々おりませんもの……」


 なるほど。確かに、彼女にとって俺達は、ようやく見つけた仲間候補なのかも知れない。それも、かなり有望な。俺が何となく納得しかけていると、アスカは冷たい視線をヴィヴィアンに向けて、簡潔に言い放った。


「……それだけじゃない。これは、女の勘……」


 女の勘?


 何の事だ? そう思い、俺が首を傾げていると、ヴィヴィアンは慌てて否定し始めた。明らかに、少し動揺している。


「な、何の事かしら? わ、私は別にクロスの事なんて気にはなっておりませんわよ……?」


 なんてわかりやすい奴なんだ。


 なるほど、そう言う事か。俺は、見た目は若くても中身はおっさんなんだ。流石に、この反応にはピンと来る。まさか、本当にストーカーの予備軍だったとは……。


「わ、私が身分を明かしても、態度が変わらない男なんて初めてだったんですもの……」


 まるで、自分に言い訳でもするかの様に、丸聞こえの独り言を呟くヴィヴィアン。


 当たり前だ。俺は、自分の基準(物差し)でしか人を判断し(測ら)ない。例え、それがこの国の王女であってもだ。



 ──しかし、面倒な事になった。まさか、アスカ(ヤンデレ)の次はヴィヴィアン(ストーカー)に好かれる事になるなんて……。


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