第10話 忌み子
「──私も……混血。忌み子なの」
目を反らし、悲しそうに呟くアスカ。
これまで、この紋様が原因で、辛い思いをして来たのかも知れない。なんて声をかけて良いのか、わからない。そんな俺の様子を見て、アスカはシャツを整えながら話し出した。
「……この村、廃れてるでしょ?」
ここに来る前に俺がした話。あの時は『仕方ない』の一言で片付けられた。しかし、今度は話してくれるみたいだ。
「この村で暮らす人達……皆んな、私と同じ混血なの」
村人全員が混血?
つまり、ここは『混血者の村』と言う事か。廃れた村。『仕方ない』と言う、アスカの言葉。ここまで聞けばピンと来る。
「つまり、ここは混血であるが為に差別され、追いやられた人達が暮らす村……と言う事か?」
コクリとアスカは頷いた。
なるほど、そう言う事だったのか。
「……驚いた。純血は私達に近付かない。それなのに貴方は、ビアードさん達について来た。記憶が無いと聞いて、一度は納得した。でも、もしかしたら奴隷狩り……あいつ等の偵察かも知れないと疑ってた。それが……」
「それがまさか、自分と同じ混血だとは思わなかった?」
余りアスカが思い詰めない様、俺はわざと戯けて答えた。俺を疑った事に、罪悪感があるのだろう。なにしろ、結果だけ見れば、自分の仲間を疑ってしまったのだから。
「……ごめんなさい」
アスカが深々と頭を下げる。
「気にすんな。寧ろ、教えてくれて有り難いくらいだ」
冗談っぽく笑って見せる。それを見て、アスカの表情が少しだけ和らいだ。俺は敢えて、軽い調子のまま話を戻した。
「しかし、忌み子……混血と言うのは、そこまで嫌われる存在なのか? たかが迷信だろ?」
俺の問いに、少し平静を取り戻したアスカが答える。
「忌み子が災いを齎す……これは真実。歴史がそれを証明してる」
相変わらず簡潔な回答。だが、最初よりは随分、話してくれる様になった気がする。しかし、歴史が証明って……。実際に、災いを齎した事実があると言う事か? だが…
「まあ、俺は自分の『物差し』でしか物事を測らないけどね」
その災いとやらの原因が、本当に忌み子だという証拠は無い。なにしろ、俺はこの目で何も見ていないのだから。
「自分の……見た物でしか……信じない……」
何やら衝撃を受けたのか、ブツブツと俺の言葉を繰り返すアスカ。
「おい、どうした?」
「ハッ! あ、いえ……その。嬉しいな……と……」
慌てて我に帰るアスカ。何故か、耳まで赤くして照れている。俺が歴史を信じなかったのが、そんなに嬉しかったのだろうか。
「まあ、いい。それよりアスカ。俺はこの世界について、殆どの記憶をなくしちまった。混血の件みたいにな。暫く世話になる間、色々教えてくれないか? この世界の事……」
この村にそう長居する気は無い。だが、人間が住む町に入るまでに、色々と知っておいた方が良さそうだ。この世界の常識も含め、俺は知らない事が多過ぎる。
「……勿論。私の知る事は全部……クロスになら」
辿々しいが、もはや普通に話をしてくれる様になったアスカ。やたら、頬を赤らめているのが気になるが……。まあ、いい。暫くこの村で情報を集め、旅の支度を整える事にしよう。
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