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勇者パーティを追放され一人取り残された剣聖は、次代の勇者を育てる  作者: 雨在新人/星野井上緒
ネズミ勇者、剣聖と旅する~ドキドキししょーと二人っきりの逃亡生活編~
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冒険者ランク

「……そういえばししょー」

 身長差故の上目遣いでネズミな弟子がファリスを見上げてきたのは、そろそろ夕方と言うタイミングであった。

 

 「どうしたんだいニア?」

 「ししょー、ニアちょっと気になったんですけど、ニアってぼうけんしゃ、なんですよね?」

 「うん。今の君は冒険者ってことになっているね」

 少女が首から下げたギルド証を見つつ、ファリスは頷く。

 

 「でもニア、色々しらないです!」

 「……まあ、そうだね。まだまだ駆け出し冒険者だし、生涯続けるとも限らないからね」

 「でも、でもですよししょー!

 冒険者になったのに基本の事をしらないと、リガルくんにそんな事もしらねーのか溝鼠は!って言われちゃいます!」

 「……そうなんだ」

 好きな子にその発言はどうかと思うぞリガル少年。

 なんて言葉は口のなかで転がして。ファリスはへぇと頷く。

 

 「しかたねーから教えてやるかって、上から教えてはくれるんですけど……」

 まあそうだろうとファリスは一人で納得する。あの猫耳少年だって好きな子をバカにしたいのではなく、こんなこと知ってる俺すげーだろ!ってアピールがしたかったのだろう。

 見事に滑っていたようだけど。と、負けられないです!と小さく頬を膨らませて知識欲を見せる弟子の少女を見て、剣聖は結論を出した。

 

 「じゃあニア、冒険者として何が知りたいの?」

 「……えっと……」

 ぴくぴくと大きな耳を動かしていた少女は、やがてリズム良く左右に振っていた尻尾を真っ直ぐに立てた。

 

 「えっと、ぼーけんしゃのランクってどうなってるんですか?」

 と、少女は己の赤くてEと書かれたギルド証を見せてきた。

 「私も詳しくはないよ?」

 「いつも教えてきたリガルくんも詳しくはなかったですよ?」

 そこは付け焼き刃止めようなリガル少年。

 

 「まず、A」

 『A』と空中に闘気で蒼い文字を書き、剣聖は言う。

 「これが一番上。正確にはそれに+が付いたA+が頂点かな。これは、覚えやすいよね」

 「えっと、上がとがってて一番上って感じのきごーですね……」

 「だから実際一番上。文字としても最初らしいよ」

 「へぇー、そうなんですね」

 自分の掌に小さくAを書いてニコニコする弟子に少しだけほっこりしながら、剣聖は話を続けた。

 

 「Aは本当に頂点。A+は規格外。

 実力、実績、あとは信頼。それらが全部文句無しと言われた本当に凄い人だけがAだよ。

 言うのはちょっと恥ずかしいけど、Aランク冒険者ならとりあえず信用して良いよ、ニア」

 「ゆーしゃさまと一緒だった頃のししょーは?」

 無邪気に聞く弟子に、ファリスは頬を掻いて答えた。

 「だから、ちょっと恥ずかしい言葉なんだ、私がこれ言うの」

 「Aなんですかししょー!?」

 「うん。昔はA。って言っても、一年くらいだけね」

 

 「一年ということは、龍の時?」

 「そう。紅の皇龍……紅焉が終来したと言われたあの事件を機にAになった。

 逆に言うとね。人類ではないものを含めても、瘴気の魔物でない普通の生命の中でエルフと並び最強ではないかと言われているあの皇龍を撃退して漸く私はAなんだ」

 「……ししょーの噂、ギルドのおにいさんやおとーさんから凄いの幾つも聞きましたよ?」

 それでAじゃないならAって他に居るんです?と首を傾げる弟子に、師は困ったように告げた。

 

 「まあ、私は人間だから。人間風情ってちょっと反対派も多くてね。信頼が足りなかった。

 本来はもうちょっとAの基準は緩いけど、それでも……鐘の守りを破って襲ってきた四天王から三人で街一個護り抜くとか、全員そのレベルの人」

 

 キラキラした目で見上げる少女に向けてパン!と手を叩いてAを消し、次にオーラで描くのはBの文字。

 「これが『B』。ニアもある程度数字は分かると思うけど、1と3が合わさるから間で2番目……なのかな。

 とにかく、Aの次に凄い人達。ここまでは、本気で信頼と実績がないとなれないから、ほぼ間違いなく変な人は居ないよ」

 「おとーさんがしてくれた昔のゆーしゃさまの仲間みたいな変な人、居ないですか?」

 「それは居る。ほら、私の姉弟子とか変な人だろう?

 彼女もBだからね」

 「Aじゃないんですか?」

 「実力は間違いなくAだよ。私より強い

 でも、彼女はエルフだから。突然じゃボク一年くらい寝るねって昼寝感覚で言われる可能性がある(ひと)を、流石にA判定は出来なかったんだろうね」

 と、言いつつファリスは遠い目をした。

 

 「私の言う変な人っていうのは、糞尿(スカトロ)なゴミ共……

 ごめん、汚い言葉だから言い直すと終末大好き(エスカトロ)な人達のこと。Bまでは怪しいからそんな居ないはずだよ」

 「Aは?」

 「居ないよ。全員知ってるけど」

 「ぜんいんっ!」

 ピン!と弟子の少女は尻尾を立てた。

 

 「とりあえず、話を戻すと……『C』が3つめ。

 これは……他の街転移しての依頼とか、故郷外に駆り出される最低ランク。逆に言えば、故郷から他のギルドへの救援として出して恥ずかしくないと思われる実力と信頼がある感じ

 ここまで上位冒険者」

 

 DEFとファリスは並べて書く。

 「左からD、E、F。この3つが下位冒険者。ギルド側から直接依頼されたりしない普通の冒険者だね。

 此処は単純に実力主義の話。上の方だと私の姉弟子のネージュはAな昔の私やA+なディランより強かったけど、サボったり寝てたりするかもしれないからB+止まりとかあったけど、ここはそれはないね。

 パーティ単位の評価だとまた違うけど個人同士なら、総合的な力ではDよりEが強いことは有り得ない」

 「へーそうなんですか?」

 「でも、これはあくまでも実力だけの話。Dランクの冒険者の方がEより悪どいとかはあるかもしれないから気をつけてね」

 「ししょーが居ればへーきですよ?」

 こてんと小首を傾げる少女に、私が居るうちはねと言って、ファリスはその頭を撫でる。

 

 「覚えておかなきゃいけないのは、私が居なくなった後。

 冒険者続ける場合、誰かと仲間を組むことになるから。悪い人に捕まらないように、ね」

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