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第29話

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「父上、彦五郎帰還致しました。」

「そうか。色々聞きたいことがある。其方が手紙で許可を求めたものは行うが良い。しかし飛騨は事前に何にもなかった。何故だ?」

「はっ、一度駿府に戻るよりも早いと思いましたし、三木にバレたら攻められるでしょう。その前に動きを気取られず行う必要がありました。」

「しかしせめて手紙を待て。」

「行き帰り1週間はかかります。流石にそんなに待てませぬ。」

「結果は上手くいけたから良いものの。今度からはこのようなことを行うな。それと提案だが家督を譲ろうと考えている。」

「父上、某はまだ15です。もう少し嫡男としてさまざまなことを経験したいです。」

「うむ。20になる前には譲る。」

「はっ」

「甲駿同盟の話だが、少しこのままだと関係は悪化する。飛騨を取られたことが武田家には気に食わないようだ。」

「しかし父上、江間と姉小路は我らに自ら臣従を申し出て参りました。それだけ切迫していた状況だとも言えるでしょう。某はそれを考慮して父上にも許可を得ず、独断にて動いたのです。」

「飛騨の件は許す。もうそれは言わなくて良い。其方のことだから深く考えたのであろう?余は其方を信頼しておる。家督継承に先立ち、少しずつ権限を与えていく。余には立派な跡継ぎがおるのだ。少しはゆっくりしたいものよ。」

「褒めてくださり、嬉しいです。」

「うむ、彦五郎、其方が結婚をしてくれれば嬉しいのだがな。誰か気になる者でも居らぬのか?正妻は無理だが側室なら迎えるが。」

「某は今の所女性には興味がございませぬ。」

「困ったものだ。彦五郎、正妻候補が未だ居らぬ。其方には後継ぎを作る義務がある。男色なのか?それだったら困る。わかっておるであろう。後継者の責務を。」

「父上、考えすぎです。そもそも恋愛感情というのが、某には分かりませぬ。」

「困ったな。其方は子を作る必要があるのだが。」

「父上、恋愛感情がなくても義務は行えるはずですが?」

「そうだが。恋愛関係があった方が良いのだ。彦五郎にはまだわからぬだろうな。」

「父上、僕には分かりませぬ。」

「この調子だったら松が先に結婚しそうだな。松には武田家嫡男と結婚する話が出ている。」

「母上が亡くなったからですか。」

「そうだ。」

「しかし血が濃すぎるかと。それに妹たちには他の有力大名との結婚相手としてまだ結婚してほしくないです。」

「其方は政治のことを考えすぎだ。少しは私生活も充実させろ。元服してからというもの、戦と政治改革などばかりではないか。幼い頃より勉学と武芸に熱心で、体を壊すというのに、そればかり行い、公家の技能も交流する時のために身につけたのであろう?」

「はい、それが評価されているので良いのでは。近衛関白殿とも親しくなれましたし。」

「確かにそれは良いことだがな、真面目すぎる。もう少し休むことも覚えよ。何か趣味はないのか?」

「ありませぬ。」

「困った子だ。優秀だがな、何か欠けている。彦五郎、自分で抱え込もうとするな。家臣や余を頼れ。」

「僕もやっています。」

「まあ忙しかったであろう。休んでおけ。軍のことは既に募集をかけておいた。準備は進んでおる。」

「父上、ありがとうございます」

少し叱られたが父上に許されてよかった。結婚は興味ないんだがなあ。戦車とかないし。開発しようかな。色々知っているし。




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