第175話
義兄上から正式に色々認めてもらった後、帝の元へ行くまでに時間があったので、一旦屋敷に戻ろうと思っていたら、御所の中で急に声をかけられた。
「今川様、少し良いですか?」
「なんでしょうか?」
声をかけてきた人は見たことがない顔だ。一体誰だ?
「三好孫二郎慶興と申します。父が今川様と話したいと。できたら今お時間をいただきたいのですが」
「三好殿の子か。しかし三好殿が?にわかに信じられん」
「はい、国を率いる立場の二人で話、和解をしようと」
「まず最初に言っておくが、国を率いるのは上様であって、私たち家臣はあくまでも補佐する身分。後は三好の家格は今川よりも格下であって、嫡男であったころならともかく、当主を呼び出すのは不敬だ。私がいくら若年だといえど舐めないで欲しい。私とゆっくり話したいのならばご自身で参られるが良い。わたしは時間がないのだ。もし本当に会いたいのならば、会談を京奉行を通じて、用意し、領内まで来ていただきたい。それか時期が合えば京でも良いが」
「それは.....」
「無理ならば会うことはできぬ」
そうすると三好の嫡男はさっていった。少し強く言い過ぎたかもしれないが、三好殿は信用できん。暗殺の危険もあるし時間があるといえどおいそれと向かうわけにはいかなかった。
嫡男は僕より確か若いが、まあ僕も同じ様な年齢で政治に関わっていたし変わらないだろう。年齢が違うと言ってもたった4つの差だし。しかし三好とあっても三好が暗殺を企む可能性が1番高いしな。今やこの2家の仲は非常に悪い。いつ戦が起きてもおかしくないぐらいにな。
毛利に付き、尼子と大友に停戦命令を出したことで、あの2家は不満を持っている様だ。そして、三好的にはこれは面白くない。今川を倒したいだろう。それには新当主たる僕の暗殺が1番良いはずだ。父上は未だに健在だが、弟は僧門に入っていて教育を受けていないだろうし、僕自身存在を知っているだけであったことがないしな。
現在、僕は今川家の屋台骨でもある。それだけに相手も僕のことを警戒しているだろう。僕に後継ぎもいないし。そう考えると早く作る必要があるな。そしたらまた声をかけられた。今度は上様の側近の幕臣が話しかけてきた。
「今川様、上様が時間があるのならば共に昼餉を食べないかとのお誘いにございます」
「参内はいつの予定だ?」
「羊の刻です」
「じゃあ時間があるな。受けましょう。わざわざありがとうございます」
「いえいえ、上様は話し足りないとのことでしたので」
「そうでしたか」
そのまま、居間の様な場所に案内された。そこには御台様も居た。御台様は慣れていないから緊張するんだけれどなあ。更に既に料理が3人分おかれていた。
「彦五郎、よく来たな」
「義兄上、よく私が来るとわかりましたね」
「ふっ、朝廷の予定は知っている。それゆえに参内の時間わかっておった。余が命令して時間を調整をさせたからな。だからだ。まあ良い、まずは食べよう」
「ありがとうございます」
義兄上は本当に良いお方だ。お世話になっているしこの方に仕えるのは僕的には楽しかった。大義名分もくださるし、そのおかげで戦いを避ける事がよくできたわけでは、本当に感謝しかなかった。
そして食事だが、僕的には室町御所の食事も美味しいけれど、今川家の方が実は美味しいんだよなあ。まあ一番の用事は政治の話をすることなのだけれど。




