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第五十二話 南部連合国対合衆国その21

 はい、前回の続きを話します。


 引き続き、戦艦「ノースカロライナ」の乗組員の手記を引用します。




 我々は敵の潜水艦が正確には何隻いるのかも分からないまま一晩中対潜戦闘を続けた。


 水中聴音機に耳を澄ませ、海中に爆雷を投下した。


 時間が経つのがとてつもなく遅く感じた。


 夜の暗闇の中での戦いが永遠に続くかのように思えた。


 朝が来るのか待ち遠しかった。


 東から太陽が昇ってくるのがあんなに嬉しかったことはない。


 朝になり海面が明るくなると、敵の潜水艦からの攻撃は止んだ。


 戦闘が一段落したと判断した戦艦「ノースカロライナ」に座乗する司令部では、激しい議論が行われた。


 戦艦「ノースカロライナ」が被雷し浸水したことで速力が大幅に低下してしまった。


 作戦を続行するか、作戦を中止して撤退するかが参謀たちで議論されたのだった。


 作戦を続行する方の参謀は「撃沈されたのは駆逐艦数隻で、戦艦『ノースカロライナ』は速力が低下して戦艦同士の砲撃戦では不利だが、沿岸都市への艦砲射撃ならば問題は少ないコンディションにある。作戦は続行すべきだ」と主張した。


 それに対して、作戦を中止し撤退する方の参謀は「ここから先の海域にも敵の潜水艦が待ち伏せている可能性がある。さらに戦艦『ノースカロライナ』が被雷して損害が許容範囲を超える場合も考えられる。作戦を中止して撤退すべきだ」と主張した。


 我がアメリカ合衆国は民主主義国家ではあるが、どこの国の軍隊も多数決では運用されない。


 決断するのは司令官だ。


 司令官は「朝になり護衛空母の艦上機が対潜哨戒に使えるようになったので、対潜能力は夜間にくらべて大幅に向上している。この先の海域に敵の潜水艦が待ち伏せていても対応可能だろう」と主張し作戦の続行を決断した。


 司令官は口には出さなかったが、作戦を中止し撤退することで、一部マスコミで「欠陥戦艦」と言われている「ノースカロライナ」の評価が悪くなることを気にしたのも作戦を続行する判断に影響していた。


 さて、戦後に分かったことだが、五隻の「ターゲット・タイプ・A」は魚雷をすべて撃ち尽くしていた。


 速力が遅く、航続距離も短いので我が艦隊を追撃するのは不可能だった。


 乗組員は全員生還したが、南部連合海軍は「普通の潜水艦を建造した方が有用」と判断し、「ターゲット・タイプ・A」の開発を中止した。


 この夜の戦闘が「ターゲット・タイプ・A」の最初で最後の戦闘になった。




 続きは次回に話します。

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