第四十四話 南部連合国対合衆国 その13
はい、前回の続きを話します。
合衆国に住む日系人に救いの手を差し伸べたのは休戦中のイギリス政府でした。
イギリス政府がした提案は次のようなものでした。
合衆国国内の日系人はカナダへの移動を認める。
そこからイギリス政府が用意した船で希望する国に送る。
日系人は全財産の国外への持ち出しが認められ、不動産などの持ち出し不可能な物は合衆国政府が適正価格で買い上げる。
これらのことに掛かる費用は全額合衆国政府が負担する。
合衆国だけが負担が大きいような提案でしたが、合衆国政府はあっさりと提案を受け入れました。
それには理由があります。
合衆国は国内にいる日系人のあつかいに悩んでいたのです。
強制収用所に送るのは中止したものの日系人が普通に合衆国市民として生活をするのは不可能になっていたからです。
日系人が街を歩いてるだけで白人から罵られたり石を投げられたりするのは、まだ良い方でした。
日系人が経営する商店が真っ昼間から覆面をした謎の集団に襲われ、商店を破壊され放火される事件が頻発し、地元の警察はまともに対応しないなどということも起きました。
白人至上主義者過激派の仕業でした。
白人至上主義者の中でも過激派は合衆国政府もコントロール出来なくなっていて、彼らによる日系人の迫害が続くと南部連合国に反宣伝の材料を与えるだけだと考えられていたのです。
合衆国国内から日系人がいなくなるのなら費用の負担ぐらいは問題ないと判断したのでした。
日系人へのカナダへの移送が計画され実行されることになりました。
日系人専用の臨時列車が何本も用意されました。
通常の列車に日系人が乗ることで白人とのトラブルを避けるためでした。
日系人の財産も専用の貨物列車が用意され、不動産などの持ち出し不可能な物は約束通り合衆国政府が適正価格で買い上げました。
カナダに向かう日系人専用列車は、最優先のダイヤが組まれ、蒸気機関車の給水・給炭以外は駅に停車しませんでした。
停車駅で日系人がホームに降りることは許されず。食事はすべて食堂車で取ることになっていました。
列車の切符代と食事代は合衆国政府の支払いでした。
列車には警備のために海兵隊が乗り込んでいました。
警察でも陸軍でもなく海兵隊が警備した理由は、警察が日系人をまともに警備するとは思えず、陸軍も徴兵された兵士が多いため信用が低く、常備軍である海兵隊が一番信用できたからでした。
この列車に乗りカナダに移動した日系人の一人は戦後のインタビューで次のような言葉を残しています。
「無料で特急列車に乗せてもらえて、食事も無料で、しかも、護衛まで付く!合衆国政府は私たちを大切にあつかってくれたね!」
もちろん、皮肉で言っています。
続きは次回に話します。
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