第四十二話 南部連合国対合衆国 その11
はい、前回の続きを話します。
南部連合国大統領のラジオ演説は、合衆国でも一般市民がラジオで聞くことができました。
合衆国も南部連合国も民主主義国家であり言論の自由は法律により保障されています。
どちらの国も、法律で一般市民が外国のラジオ放送を聞くことを禁止することは反対意見が多く、法律で規制することはできませんでした。
例え法律で規制しても、少し無線技術に詳しい人なら簡単に隣国のラジオ放送を聞くことは簡単だったので、法律による規制に意味がないと判断されていました。
そのため、合衆国と南部連合国では国内の自国民向きだけでなく、お互いに向けての宣伝放送に熱心でした。
南部連合国大統領のラジオ演説は国内では南部連合国国民の爆発的な士気高揚をもたらしました。
前大統領の爆死、首都リッチモンドの陥落に一時的に打ちひしがれていた南部連合国国民は雄々しく立ち上がりました。
召集令状が届く前に、各地の募兵事務所では行列ができるほどでした。
合衆国の南部連合向けのラジオ放送では、南部連合国大統領のラジオ演説を「南部連合国大統領の演説は負け犬の遠吠えに過ぎない」と酷評しました。
南部連合国は無駄な抵抗をやめて合衆国に無条件降伏するべきであり、南部連合国は合衆国に併合されるべきであると主張しました。
統一された合衆国は白人が主導した国家となり、南部連合国の有色人種を優遇する政策は廃止されるべきであり、そうすることで真に偉大な「アメリカ合衆国」が誕生するのだと主張しました。
その放送に南部連合国国民は反発しました。
南部連合国では大統領には白人しかなったことはありませんでしたが、市長や知事には日系人や黒人がなることもありました。
大統領に日系人や黒人がなるのも時間の問題と考えられていました。
南部連合国でも肌の色で差別する人間がいないわけではありませんでしたが、それは少数派であり、大多数の人々は異なる人種が共存する社会を築いていることを誇りに思っていました。
合衆国の宣伝放送は、その誇りを傷つけたのでした。
合衆国の宣伝放送の担当者はほとんとが白人優越主義者で、合衆国至上主義者でした。
それに対して、南部連合国の合衆国向けの宣伝放送は、合衆国政府内部で密かに進められていた計画を暴露しました。
それは合衆国国内に住む日系人全員を財産を没収して強制収容所に入れるという計画でした。
それは北米大陸に住む日系人に大反響を巻き起こしました。
続きは次回に話します。
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