第四十一話 南部連合国対合衆国 その10
はい、前回の続きを話します。
パイロットたちは全員パラシュートで脱出し、無人となった機体はアメリカ南部連合国大統領官邸に突入しました。
機体は大統領官邸で爆発しました。
その光景を見ていた合衆国が潜入させていたスパイたちは、ただちに合衆国に報告しました。
映画であるように隠し持っていた無線機で連絡したのではなく、一般の公衆電話を使ったのでした。
開戦前は、南部連合国と合衆国との間での一般人の電話は可能でした。
合衆国のスパイたちは機体が南部連合国大統領官邸に突入予定時刻の少し前から、官邸が見える場所にある公衆電話から合衆国に電話をしていました。
その中には合衆国大統領官邸と陸軍参謀本部と通話しているものもあり、大統領と陸軍参謀総長は、南部連合国大統領が死亡もしくは執務不能な重傷になったと判断しました。
合衆国大統領は陸軍参謀総長を通してアルファベット二文字からなる命令を全軍に向けて打電しました。
それは「GO」でした。
それを受けた合衆国陸軍は事前の計画通りに南部連合国への侵攻を開始、南部連合国首都リッチモンドは一週間で陥落、爆破された南部連合国大統領官邸からは南部連合国大統領の遺体が合衆国陸軍によって発見されました。
合衆国大統領は、ラジオ演説で南部連合国を再併合するまで戦争を続けることを宣言しました。
それに対して南部連合国の一般市民は混乱しましたが、南部連合国政府と軍の上層部は冷静でした。
首都リッチモンドは国境から近いので、合衆国から先制奇襲を受けた場合には早期に陥落することは予想されていました。
そのため、政府と軍の中枢機能は各都市に分散されていました。
大統領官邸が航空機の体当たりにより爆破され、大統領が死亡したのは予想外でしたが、政府と軍の機能は停止しませんでした。
首都リッチモンドを離れていたため無事だった副大統領が、大統領の権限を継承、新たな大統領となった彼は南部連合国全土に向けてラジオ演説をしました。
まず、彼は前大統領の死を悼み、彼の死が合衆国による「卑劣な犯罪行為」によってもたらされたと強調しました。
合衆国は「犯罪者の集団」であり、黒人だけでなく我々南部連合国国民全員を奴隷にしようとしていると断言しました。
そして、演説を次のように締めくくりました。
「第一次南北戦争では我々の先祖は奴隷制度を続けるために戦いました。だが、今では、この国には奴隷は一人もいません。我々は誰かを奴隷にしようとは思わないし、他の誰かの奴隷になろうとも思いません。南部連合国全国民の皆さん!我々が奴隷にならないために、武器を持って立ち上がってください!」
この続きは次回に話します。
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