第三十七話 南部連合国対合衆国 その6
はい、前回の続きを話します。
合衆国陸軍航空隊内部の戦略爆撃主義者は、自分たちの作戦を通すために大統領へ直接作戦案を持ち込みました。
本来なら陸軍の下部組織である陸軍航空隊のさらに少数派である彼らが大統領に直接面会することは不可能だったのですが、彼らは裏技を使いました。
当時の合衆国大統領は国内を遊説のために頻繁に移動しており、移動時間短縮のために航空機を使用していました。
その航空機は合衆国陸軍航空隊の輸送機でした。
合衆国陸軍航空隊の大型爆撃機と輸送機は機体が同型なのでパイロットや整備員が共用されていました。
これはある意味、陸軍航空隊の急降下爆撃派閥の嫌がらせで「大型爆撃機は全部輸送機にしてしまえばいいんだ」と急降下爆撃派閥は主張し、実際大型爆撃機より輸送機の方が調達予算が通りやすかったのでした。
大統領専用の輸送機は「エアフォース・ワン」と呼ばれていました。
日本語に直訳すると「空軍1号機」ですが、これくらいはジョークとして許されていました。
大統領専用機のパイロット・搭乗員は戦略爆撃派閥の人たちでした。
大統領専用機の飛行中、手の空いた搭乗員と大統領が「雑談」を交わすようになりました。
その「雑談」の中に搭乗員は自分たちの計画を話すようになったのです。
あくまで「雑談」であり、正式な提案でないので他の政府・軍の関係者は気づきませんでした。
大統領は「雑談」を交わすうちに段々と乗り気になっていきました。
そして、この「雑談」を元にした話を陸軍参謀本部に伝えました。
陸軍参謀本部は戦略爆撃派閥の「雑談」に苦々しく思いましたが、陸軍参謀本部内部に多数存在した「南部連合国への先制攻撃」を主張する派閥は自分たちの作戦案と組み合わせようとしました。
合衆国政府の見解では南部連合国は「連邦政府に対して反乱した州の連合体」であるので、南部連合国政府に対しての宣戦布告は必要ないと考えていました。
宣戦布告無しで南部連合国へ奇襲しようとしていました。
その時、南部連合国大統領が死亡しているか執務不能になっていれば、南部連合国政府・軍は混乱し奇襲効果は上がると考えました。
まず南部連合国大統領のスケジュールと個人情報を調べることから始めました。
すでに連邦捜査局FBIによってそれは調査されており、彼は朝食はいつも同じ時刻に大統領官邸でとっており、妻とは数年前に死別しており、息子と娘が一人ずついますが、息子は貿易会社の社員で日本に赴任中、娘はドイツの大学に留学していました。
この情報を元に奇襲計画を立てました。
続きは次回に話します。
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