第十一話 ドイツ対イギリス その3
さて、前回の話の続きをします。
レーダー提督が再就職した民間の船会社は、ドイツ海軍から払い下げられたグラーフ・ツェッペリン級空母二隻と日本製の高速輸送船四隻を所有することになりました。
日本製の高速輸送船の正体は改装すれば空母になる船であり、その性能は正規空母並みでした。
ドイツ海軍は秘密裏に空母六隻から成る空母機動部隊を手に入れようとしていたのでした。
前回話しましたように偽装工作をした理由は、イギリスに気づかれることなくドイツ海軍が空母機動部隊を手に入れるためでした。
もし、堂々とドイツ海軍が空母機動部隊を手に入れたら、それに対抗するためイギリス海軍は自分の空母機動部隊を増強するからでした。
当時のイギリス海軍の空母は装甲空母が主力でした。
装甲空母は飛行甲板が装甲されていますが、それと引き換えに格納庫が狭く、搭載できる艦載機の数が少なくなっています。
ヨーロッパ諸国はどこも本格的な空母を保有しておらず。イギリス海軍の空母が仮想敵としていたのは、地上の基地から発進する攻撃機でした。
特に命中率が高い急降下爆撃機を脅威に感じており、急降下爆撃機が投下する爆弾に耐えるために装甲空母を配備したのでした。
他の理由としては、イギリスでは海軍機も空軍の管轄であり、空軍機の開発・製造が優先されるため、海軍機は後回しにされるため、海軍機は製造数が少なく、調達できる機体数が少ないならば空母の搭載機数が少なくともかまわないと考えていたのでした。
少し話が逸れますが、日本海軍や合衆国海軍では、洋上での空母同士の艦隊決戦を重視していため、空母の搭載数を増やすことを重視したため、どちらも装甲空母は建造・保有しませんでした。(その代わり、損害を受けた後のダメージ・コントロールについては、どちらの海軍も重視していました)
話を戻しますと、イギリス海軍の装甲空母重視の方針を継続させるため、ドイツ空軍も協力しました。
レーダー提督とゲーリング元帥の関係は実は良好で、険悪なのはイギリスに向けた演技でした。
ゲーリング元帥は元々急降下爆撃戦術の支持者でしたが、公式の場で「急降下爆撃のみでイギリス海軍艦艇の撃沈は可能である」「我がドイツ空軍は航空魚雷などを配備する必要は無い。いったん海に沈めて艦艇に向かう航空魚雷よりも直接艦艇に当てる急降下爆撃の方が確実である」と発言しています。
実際に、ドイツ空軍は航空魚雷を保有せず。イギリスの諜報活動もそれを裏付けました。
イギリス海軍はますます装甲空母重視となりました。
時間になりました。
次回も皆様とお話できることを楽しみにしております。
ご感想・評価をお待ちしております。




