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再会

 とにかくオリヴァーに早く会いたい…はやる気持ちがルナを走らせた。ルナはグリフィス家の屋敷を出て庭園を抜け、ドネル川の川岸に到着した。


 やはり前回同様オリヴァーはそこにいて、ルナは心が躍った。前回の要領で――しかし前回より手際良く――オリヴァーが先端にしがみついた柳の木の枝を両手で掴むと、根本の方から陸に向かってぐーっと引っ張って陸地に引き上げた。ルナがオリヴァーを横に向けて背中をさすると、オリヴァーは大量の水を吐いた。


「…助けてくださって本当にありがとうございます。あのままでは死んでしまうところでした。私はオリヴァー・モーガンと申します。あなたには、どこかでお会いしたことが…?」


 前回と同じ反応の、アッシュグレーの髪を濡らしたオリヴァーに対し、ルナは嬉しそうに言った。


「はい。とても最近、この近くで…。オリヴァー、また会えて…良かった!!」


 ルナはその目にキラリと光る涙を浮かべ、オリヴァーを抱きしめた。オリヴァーは、何が起こったのか分からず、びしょ濡れのままきょとんとした表情を浮かべていた。


***


 ルナはオリヴァーに肩を貸し、1時間ほどかけてようやく屋敷に到着すると、真っ先にルナの部屋へと向かった。部屋を開けると、よく知った顔を見つける。


「あ、ルナ様!」

「エミリー!」


 前回と同じように、エミリーに今あったことを簡潔に説明すると、現在のやや異常な状態を理解してくれた。


「この方…オリヴァー様の存在は、今すぐにはグリフィス家の皆さまにはお伝えしない方がいいかと…大騒ぎになってしまうと存じます。」

「大騒ぎになったら追い出されてしまうかもしれないものね…。一旦この部屋で匿いましょう。この方とこの後少し2人きりでお話ししたくて、エミリーは部屋に戻っていてもらえるかしら。」


 エミリーが使用人の部屋に戻ると、ルナはオリヴァーをベッドに座らせて向き合った。


***


「それで…私はチェスター・モーガンとイブリン・グリフィスの結婚披露パーティーを止めるために、100年前からやってきた、…と?そして貴方は、同じ時間を繰り返して3回目…?」


 ルナは、オリヴァーに肩を貸して戻る道中、過去について(ルナの記憶がすでに経験した未来のことについて)、思いを巡らせた。ルナが先ほど手紙を読んだ時、前回のループよりさらに前のループの記憶も頭の中に入ってきていた。


 その世界では、ルナがオリヴァーに会ったのはオリヴァーが姿を消す最終日だった。エミリーはグリフィス家をクビにならなかったものの、イブリンがルナのところに遊びに来るチェスターの姿を発見したことで、「金輪際チェスターと話さない」という約束を破ったとの理由から、あらぬ浮気の疑いをかけられたルナがグリフィス家を追放され、焦ったイブリンはやはりその日チェスターとの結婚披露パーティーを開いていた。


 ルナは追放されたその日、街をあてもなく歩いていたところ初対面のオリヴァーに出会い、名前を確認された上で事情を話された。あまりにオリヴァーが必死だったのと、話の途中で目の前のオリヴァーが消失したことから話を信じ、もう少し早く自分とオリヴァーが会えるよう、オリヴァーが言った通りにエヴァ・グリーンの書物を見つけ、こっそりとエミリーの部屋で儀式の支度をし、オリヴァーが川で溺れていたと言っていた時間の自分に手紙を送ったのだった。しかし、その世界では過去への手紙に記憶を載せて送ることに失敗したため、次の世界では半信半疑のまま謎の手紙を信じて川に行くことになった。


 つまり、今回の世界は過去へ送る手紙によって記憶がループした3回目の世界ということになる。1回目はオリヴァーが消える直前に会い、2回目は川で溺れるオリヴァーに出会った。そして今回が3回目――。


「ええ、そうよ。まだあなたの記憶がはっきりしないのも無理はないわ。前回、前々回と2回とも記憶を取り戻したのは3日後だもの。」

「……確かに、モーガン家の滅亡を止めるために私が100年前からやってきたというのは、あり得ないことではありません。どうすれば、彼らの結婚披露パーティーを止められるのでしょうか。」

「分からないわ。でも前回と前々回で考えると、どちらもイブリンが、チェスターと誰かが仲良くしていたことに嫉妬したのが原因だったわ。1回目は、チェスターが元婚約者の私に会いに来たこと。2回目は、これは確信があるわけではないのだけれど、多分チェスターがエミリーをデートに誘ったこと。」


 オリヴァーがあごに手を当てて考えながら言った。


「結婚披露パーティーを止めるだけだと、根本的な解決になっていないような気もします。結婚披露パーティーが開かれなかったとしても、結局チェスターとイブリンが結婚するなら未来は変わらないのではないでしょうか…。チェスターはエミリーのことを好いているのでしょう?なぜイブリンと結婚を?」

「チェスターにとって、両親の意向は絶対なの。グリフィス家令嬢イブリンとの縁談は、モーガン家にとって決して悪い話ではないわ。」


 オリヴァーはさらに考え込んで言った。


「結果的にモーガン家を滅亡させることになるとも知らずに、ですか…。先ほどルナがおっしゃっていた、チェスターとエミリーのデートは上手くいったのでしょうか?」

「それが分からないの。翌日の朝にはエミリーは解雇されていて会えなかったし、その後チェスターとその話をする機会もなかったから。」

「もしそのデートがチェスターに駆け落ちを決意させるほどのとても素晴らしいものだったなら…。未来は変えられるかもしれませんね。」


 ルナは閃いた表情で言った。


「つまり、チェスターとエミリーを駆け落ちさせるだけの最高のデートを仕込んで、2人を結婚させる…?」


(それが一番楽しそう!ふふ…腕が鳴るわね。)


 2人は笑みを浮かべると、ハイタッチをした。


「ところで、前の世界では私はルナとどのような関係だったのでしょうか?」


 ルナは一瞬寂し気な表情を浮かべた後、笑顔を作って言った。


「とても…大切な人。例え共に過ごした記憶があなたに無かったとしても、また会えただけで私は嬉しいわ、オリヴァー。」


(あの日レストランでした約束、守ってもらうからね!)


***


 ルナが屋敷から男性用の服を取ってくると、オリヴァーはすでにベッドの上で安らかな寝息を立てていた。オリヴァーの濡れたタキシードは椅子にかけてあって、オリヴァーはインナーだけの姿になって何もかけずに寝ていた。タキシードの上からは細身に見えるオリヴァーだったが、こうして見るとたくましい筋肉を付けているのが分かる。


 ルナは優しい手つきでベッドの上のオリヴァーに毛布をかけた。ルナはしばらくベッドの脇に座ってオリヴァーの寝顔を見つめた。やや長めのアッシュグレー髪の毛が、均整の取れた寝顔にかかっていた。ルナはオリヴァーに再び会えたことの喜びをかみしめながら、椅子に座ったまま夢の世界へといざなわれていった。

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