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ワームホールを抜けるとそこは異世界だった。-チートなしでも努力で無双したい-  作者: 水波 悠
最終章北の大地編

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衝突

おれは居城の壁に手を付くと、その前後に風魔法を使って空気で壁をつくる。その風の壁と居城の壁の間に、アリスに手を入れてもらい、アリスの風魔法で居城の壁を撃ち抜いてもらう。すると、音もなく壁は崩れ、中への入り口ができた。


「魔法って本当に色んな使い方があるわね。」


この世界の人間は本当の意味で魔法を使いこなすことができている人が少ないと感じている。物事の原理原則を理解しているわけではないから単純に予想通りの魔法は使えるが少し変わった使い方をするのに魔法を使われることはあまりない。


「まぁただ攻撃するだけが魔法ではないってことだよ。」


おれたちは出来た穴をくぐり居城に入ると見た範囲には魔物の姿は見えなかった。できるだけ正面の城門に近づかないように登り階段を探すとちょうどおれたちが入ったところから左に曲がったすぐのところに階段を見つける。2階に上がっても魔物は見当たらなかったため、やはりコウが全てひきつけてくれているのだろう。そしていよいよ3階に差し掛かると、その魔素の高さに思わずおれは倒れそうになる。


「この先、やばいな。」


おれの独り言にラキカも頷く。ラキカも上の階からヒシヒシと伝わってくる強力な魔力を感じ取っているようだ。おれたちが呼吸を整え、いざ上に上がろうと言うときに上から声が聞こえる。


「そんなところで様子を伺わず、さっさと上がってきたらどうだ?」


おれたちは思わずドキリとするがここにいるのがバレているのであれば誤魔化しようがない。おれは剣を構え警戒しながらゆっくりと階段を上がる。しかし、おれの顔が見えた瞬間。


「死ね。」


真正面の玉座に座ったトロールがおれに向かって魔法弾を放つがおれはそれを同じく魔素を込めた剣で撥ね退けながら階段を一気に上がる。


「上がってきちゃだめだ!」


おれは真下に構えていたアリスに声をかけると同時に、部屋の階段付近で待ち構えていたガーゴイルが周囲から飛びかかってくる。それに対し、おれはすぐさま自分の剣に斬れ味付与をかけ、そして踏み込んだ足を軸足にしながら一回転し、周囲に斬撃を飛ばす。


着地点に斬撃が飛んできたガーゴイルは避けることができず、数匹がその場で真っ二つになるが、当然玉座に座ったトロールはその魔素を込めた手でおれの斬撃を払い飛ばす。そしてもう一人、玉座のすぐ横に立っていた剣を構えた銅像のような魔物もまるでハエでも叩くかのように手でおれの斬撃を弾き飛ばす。


「まじか。」


おれはまさか素手で払いのけられるとは思いもしておらず驚くがとりあえずその場は凌げたから良しとしよう。


「大丈夫か!?」


ラキカの呼び声を聞きながらおれは最初の斬撃が当たらなかったガーゴイルに向かって剣を振る。


「多分大丈夫です!」


おれの声を聞き、ラキカが先頭に立ちゆっくりと階段を上がってくる。おれはその間にも階段に近付こうとしてくるガーゴイル軍団を次々に斬り裂く。しかし、次の瞬間、さっきまで玉座の横にいた銅像のような魔物が、予想もしない速度でこちらに突っ込んでくると、おれはそいつの振るう剣を避けきれず、なんとか剣で受け、その勢いで階段から遠く突き飛ばされる。


おれは飛ばされ際にお返しとばかりに斬撃を飛ばすが残念ながらそれもまた弾き飛ばされる。ただ、その効果もありその魔物がおれの斬撃を払い飛ばしている隙に、ラキカとアリスは階段を上がり切る。


「先程の攻撃を避けるとは、人間風情がなかなかやりますね。」


「あぁ、こいつらがおそらくオルガをやった奴らだろう。マーマン、お前は今上がってきた奴らを可愛がってやれ。お前はこのボグイッド様が直々に遊んでやろう。」


「承知しました。それでは、少しは楽しませてくださいよ!」


マーマンと呼ばれた銅像もどきがアリスとラキカに顔を向け、ニヤリと笑うと、アリスに向かって剣を振り下ろす。


「アリス!」


おれはアリスに注意を促すが、それを邪魔するかのようにボグイッドがおれに魔法弾を飛ばす。


「俺様相手に随分と余裕だなぁ、少年よ。」


おれはアリスたちを助けに行きたかったが、どうやらそうはいかないようだ。魔法弾を撥ね退けると、その魔法弾を追いかけるかのようにすぐ後ろにはその巨体からは想像できないスピードでボグイッドがおれにむかって突っ込んできていた。この巨体でこの勢い、まともにぶつかったら腕がまずい。おれは身体強化をかけ、青白い光を纏いながらボグイッドの足元をくぐり抜け、おれにむけて振り下ろされる棍棒を避けながらすれ違いざまに足首に斬りつける。


おれの剣は狙い通りヤツの足元を斬りつけるが、残念ながらこの程度の斬撃ではかすり傷にしかならないようだ。おれはすぐに振り返り今度は脇腹あたりにむかって剣を振り上げるが今度は体を捻って躱される。逆に剣を躱されて出来た隙にボグイッドからの追撃が迫る。おれはそれをサイドステップでくぐり抜け、ボグイッドから一度距離を取ることにした。


「この巨体でなんちゅうスピードだ。」


さらにたちが悪いことに、振り下ろされた棍棒の通ったあとは床が大きく抉れていた。


「さらにはこの攻撃力、紙一重で躱してもだめってことか。」


おれは剣をしっかりと握り直し、ボグイッドとの戦い方を考えるのであった。


一方、おれとボグイッドのこの一瞬の攻防の間にラキカとアリスの戦いも始まっていた。


最初にアリスに振り下ろされた剣をアリスは何とか躱すが立て続けにマーマンはアリスに剣を振るう。くるくると場所が入れ替わり、中々ラキカは攻撃のきっかけを掴めずにいたが、ようやく攻めるタイミングを見つける。


「そんなにアリスばっかり気にかけてていいのか?」


ラキカはマーマンの後ろに回り込み斬り込むと流石に背後からの攻撃は嫌なのか、マーマンは横に躱す。


「そちらこそ、私なんかに2人で相手をしていてよいのですか?」


アリスはその言葉を遮るかのように氷魔法で創り出した無数の槍をマーマンに向かって打ち放つ。マーマンは飛んでくる槍に向かって剣を一振りするとその剣圧で氷は粉々に砕け散るがその隙にラキカが再びマーマンに肉薄し、斬りつける。


「やはり2対1は少し分が悪いですね。」


マーマンはそう言うと剣が届く寸前にラキカとの間に風を巻き起こし迫りくるラキカを吹き飛ばし、距離を稼ぐ。


「まずは弱そうなあなたからです。」


マーマンはアリスの方に詰め寄るとマーマンのその言葉がどうやらアリスの逆鱗に触れたらしい。


「いつまでもただ後ろで魔法を使ってるだけの私じゃないのよ!」


アリスはそう叫びながら、魔素をその手に溜め始めるのであった。

居城に侵入したショウたちは早速目的の親玉、ボグイッドと遭遇出来ましたが、いきなり目を付けられたアリス。少し最近周りが活躍しすぎな気がするので、アリスにも少しがんばってもらおうと思います。

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新作、始めました! 不遇な扱いを受けていた少年コウが、その境遇に隠された力を使いこなし、内面と向き合いながら強くなっていく冒険譚です! 是非、お読み頂けると嬉しいです!

忌み子のボクが、“気”と自分を受け入れたら、いつの間にか世界の命運を握ってました-

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