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40 バブルクラブ

 現在、バブルクラブとルリカラは美味しそうにソードフィッシュの撒き餌を食べており、何なら僕たちは眼中にないぐらいに夢中だ。


「あの撒き餌、他に変な調味料入れてないわよね?」


「何もしてないよ。インベントリで解体して出た、ただの死骸だから」


「そんなに美味しいなら、私も一口……」


「やめときなさいルイーズ。変なものが含まれていたらお腹こわすわよ」


「う、ううー。がまんするー」


 その変なものを僕の目の前でルリカラは美味しそうに食べている。それは巣穴から匂いに釣られて現れたバブルクラブもそうだ。


 出てきたバブルクラブは全部で七体。こんなに数がいたのか、さて、どうしたものかと考えていたのたけど……。


 近くにいる僕らには目もくれずに撒き餌を食べている。彼らに魔物としての矜持はないのだろうか。


「アルベロ」


「ええ、そうね。作戦開始といきましょう。攻撃後にバブルクラブが暴れるかもしれないから気をつけて」


 当初の予定通り、僕とルイーズはバブルクラブに近づいていく。アルベロは一番巣穴から遠い場所にいるバブルクラブに標準を定めた。


 しかしながら、かなり近寄っているにも関わらずバブルクラブはこちらを見向きもしない。何かの作戦なのだろうかと勘ぐってしまうほどにスルー。


 そして、アルベロの矢が頭部めがけて寸分違いなく命中する。


 爆散するバブルクラブの頭。そして、後ろに力なく倒れる。


「ニール」


「任せて」


 バブルクラブが動かないことを確認して、インベントリに入れる。


 ここまでは順調といってよかった。こんな安全で簡単な狩りならバブルラグーンに移住を考えてもいいぐらいに最高の場所かもしれない。


 海があり、美味しい食べ物があり、困ったら塩でひと稼ぎできてしまう。


 ところが、そんなに甘くないのが異世界らしい。


 頭を吹き飛ばされた音には他のバブルクラブもさすがに気づく。本当はきっとまだ食べていたいのだろうけど、危害を加えてくるのなら戦うのも吝かではないといった雰囲気。


 まるでこちらが魔物のような対応をされる。


 まあ、魔物からしたら僕たちは紛れもなく敵であり食料なんだろうけどさ。


 ということで、目が紅く光ったバブルクラブは僕とルイーズを囲うように素早くチームプレイを展開した。


「えっ、意外と賢い!」


「そんなこと言ってる場合じゃないよー」


 バブルクラブの弱点は横にしか移動できない機動性の悪さだ。つまり、片方を大盾で抑えてしまえば反対側にしか動けない。そこをルイーズが牽制しながら動きを止めてアルベロが仕留めるはずだった。


 ところが、常に動きながらチームプレイで攻撃されるとなると事情は変わってくる。


 前後左右から攻撃が止むことなく迫ってくる。ランクDとはいえ、攻撃力と防御力は随一。ただ弱点がわかりやすいからランクDなのだ。


「ルイーズ、盾の内側に!」


「うん。あとすぐに動ける準備をして。アルベロが狙ったバブルクラブのところを抜けるよー」


「う、うん」


 大盾には激しい爪攻撃が重くのしかかって来る。ローリングカニアタックが止まらない。耐久ステータス上がっていて本当によかった。これFのままだったら耐えきれなかったかもしれない。


「ま、まだ?」


「もう少しだよ。アルベロの狙いはあそこ!」


 ルイーズにハンドサインを送ったらしいアルベロの攻撃がもう少しでくる。あと少しの辛抱だ。


「呼吸を合わせて、あそこを抜けるよ。一、二の三、はいっ!」


 何も考えずにルイーズと一緒にバブルクラブにタックルをしようと突っ込む。爪の攻撃をかわして、かわして、とにかくかわす!


 大盾はいったん捨てて、とにかく全力で走り抜ける。


「い、いっけぇぇぇ!」


 次の瞬間、目の前のバブルクラブの頭が爆散して前かがみに倒れてくる。


「ニール、私の後をついてきて!」


 ルイーズは一足先にバブルクラブの甲羅を踏み台にして囲いを抜けた。


 同じように後を追うように足を踏み込むと、ヒビが入っていたのか足が沈み込んでしまう。


「し、しまった」


 崩れ落ちる僕を狙うように複数の爪攻撃が迫ってくる気配を感じる。本当に迫っているのかわからないけど、後ろを振り向く余裕なんてものはない。


「ニール、飛んでー」


 ルイーズに言われるままに砂浜へダイブ。


 一面まばゆい光に包まれて音が消えていく。まるでスローモーションのようにゆっくりと空中をタイブしたまま時が止まってしまったかのような不思議な感覚。


 自分でも何が起こっているのかよくわからない。


 砂浜に頭からぶつかりそうになったところをルイーズが手を引いてくれて、なんとかぶつからずに脱出に成功したっぽい。


 すぐに態勢を整えて、後ろを振り返るとバブルクラブが力を失ったかのようにゆっくりと裏向けに倒れてくるところだった。


「えっ、こ、これは!?」


「あれ、あれ」


 ルイーズが見ている方角はアルベロのいる場所で、その頭の上にはどこか凛々しい姿のルリカラがバブルクラブ同様に魔力切れで倒れ込むところだった。


「聖なるブレス!」


 どうやらルリカラに助けてもらったらしい。


「ルリカラちゃん、今日もおねんねだねー。抱っこさせてもらおっと」


 ブレスを吐くとほぼ丸一日近く目覚めなくなるので、まだ朝だけどお役目御免である。


 あの数のバブルクラブを一気に倒してしまえるのか……。


 それにしても助かった。アルベロの攻撃があるからブレスがなくても倒せたとは思うけど、少なからず僕は怪我を負っていたはずだ。


 ルリカラが目覚めた時に、何かご褒美のご飯でも用意してあげよう。

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