表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/245

マッサと優しい光

「そうだ!」


 マッサは、いいことを思いついて、暗闇の中でリュックサックをおろし、手さぐりで、中のものをさぐった。


『ウフフフフフ……』


 と、リュックサックの中から、あやしい笑い声が聞こえて、


〈えっ……何だ、何だ!? おい! 今のは、何だ!?〉


 と、モグさんがあわてている声が聞こえた。

 もちろん、リュックサックの中に入っているブルーが、マッサの手にごそごそされて、くすぐったがって笑っているんだ。

 ブルーのことを知らないモグさんは、それを聞いて、どこからともなく不気味な笑い声が聞こえてきたと思ったらしい。


「今のは、ブルーという名前の、私たちの仲間です。」


「なんか、よく分からねえ生き物で、白いもじゃもじゃだ。」


『もじゃもじゃじゃない! ブルー!』


 ガーベラ隊長と、ディールと、ブルーがそう言っているうちに、


「あった!」


 マッサは、目的のものをつかんで、リュックサックの底から引っぱり出した。


「じゃーん!」


 懐中電灯だ。

 これがあれば、暗い中でも、安全に歩くことができる!


 マッサは、カチッとスイッチを入れた。

 ぱっと、黄色い光の輪が広がって、みんながびっくりしている顔が照らし出された。

 次の瞬間、


〈ぎゃーっ!!〉


 と、ものすごい悲鳴があがって、マッサは、もう少しで心臓が止まりそうになった。


〈まぶしい! 痛い、痛い、目が痛い! 目がつぶれる!〉


 マッサのすぐ側で、クマみたいに大きな茶色いモグラ――オオアナホリモグラのモグさんが、叫んでいた。

 長い爪の生えた大きな手で、両目をおおっている。


 しまった!

 モグさんは、いつも真っ暗な地下に住んでいるから、光にすごく弱いんだ。

 さっきも、外に出てすぐに〈まぶし!〉と叫んでいたのに、マッサは、そのことをすっかり忘れていた!


「ごめんなさい!」


 マッサは、あわてて懐中電灯のスイッチを切り、あたりは、また、真っ暗になった。


「本当に、ごめんなさい! 今の光は、もう消しました! 目、大丈夫ですか!? ぼくのこと、見えますか?」


〈うう……死ぬかと思っただ。〉


 モグさんが、ぶつぶつ言う声が聞こえた。


〈まだ、目がちかちかする。おらたちは、まぶしいのが、すごく苦手だからな! さっきの光は、もう二度と、つけねえでくれよ!〉


「わかりました。」


 マッサは、そう言ったけど、このままの暗さでは、とてもトンネルの中を歩いて《魔女たちの都》まで行くなんてことはできない。

 目の前に、ごつごつした壁があっても、落っこちたら死んでしまうような崖があっても、全然見えないから、よけるということができないんだ。


「ねえ、《三日月コウモリ》隊の隊長さんは、今、まわりが見えてるんですか?」


「ええ、少しは。……しかし、それは、上の穴から射し込んでくる光のおかげです。もしも、この場所を離れて、外の光がまったく届かない、本物の暗闇になったら、私でも、ものを見ることはできません。」


「そうですか……。ねえ、ブルーは、どう?」


『ちょっとだけ、みえる! でも、ここ、ちょっとだけ、あかるい。ひかりないと、ぼく、みえない!』


「そうか……」


《三日月コウモリ》隊の隊長も、ブルーも、同じようなことを言っている。

 二人とも、ほんの少しでも明かりがあれば、それでまわりが見えるけど、本当にまったく光がない、真っ暗闇では、ものを見ることはできないんだ。


 どうしよう……

 せっかくいい考えだと思ったのに、やっぱり、地面の下を歩いていくなんてことは、無理なのかな……

 そのとき、ブルーが言った。


『マッサ! あれは?』


「えっ? ……あれって、なに?」


『あれ!』


「えっ? ……だから、あれって、なに!?」


『かたいやつ。』


「えっ?」


『かたくて、まるくて、ひかるやつ!』


「かたくて、丸くて、光る……ああっ!?」


 やっと、ブルーが何を言っているのか分かって、マッサは大きな声を出した。

 でも、大丈夫かな?


「モグさん、すみませんけど、ちょっと、さっきみたいに、両手で目を守っておいてもらえますか?」


 そうことわっておいてから、マッサは首にかけていた鎖をつかみ、そーっと、シャツの下から《守り石》を引っぱり出してみた。


「おお……」


 ぼんやりとした緑色の輝きに、ガーベラ隊長たちが感心している顔が、浮かびあがって見えた。

 マッサの手の中で、《守り石》が、光を放っている。

 マッサの命を守ってくれたときの激しい光とはまったく違って、淡く、やさしい光り方だ。


『みえる、みえる!』


 マッサの背中で、リュックサックから顔を出したブルーが、ぱちぱちと手を叩いた。


「モグさん、この光は、どうですか? これでも、眩しいですか?」


〈おいおい、やめてくれ。おらたちは、まぶしいのが苦手だって、何度言ったら……〉


 そう言いながら、目をおおっている手を、そろーっと、少しずつずらしたモグさんは、


〈おや?〉


 と言った。


〈まぶしくねえ! ……ははあ、なるほど、そいつは、石の光だな。石の光なら、おらたちが暮らす地下でも、ときどき見かけるだ。その光なら、おらの目も、何ともねえ。〉


「やった!」


 優しい緑色の光が、思ったよりも広いトンネルの、岩の天井や壁、仲間たちの姿を照らしてくれている。

 この明るさなら、どうにか安全に歩けそうだ。

 ブルーのアドバイスのおかげで、《魔女たちの都》まで、安全に旅ができるチャンスが出てきたぞ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ