マッサ、目的地が決まる
「ありがとう、ガーベラ隊長。……ありがとう、ブルー!」
『フフン! なかま! おいしい!』
「こちらこそ。予言の七人に加わることができるとは、名誉なことです。」
いっしょに戦ってくれる仲間が、いきなり、二人も増えて、マッサは、すごく心強くなってきた。
「えーと、それじゃあ……えーと……ぼく、まずは、何をしたらいいんですか?」
「そうですね……」
ガーベラ隊長は、少し考えてから、言った。
「まず、何よりも先に、王子が生きていらっしゃったということを、女王陛下に報告しなくてはなりません。」
「えっ?」
隊長のことばに、マッサは、混乱した。
「女王陛下って……ぼくの、お母さん、なんでしょ? それで、ぼくのお母さんは、今、行方不明になっちゃってるんじゃないの?」
「ああ、説明が足りませんでしたね。」
そう言って、ガーベラ隊長が、くわしい話をつけたしてくれた。
「十年前の戦争で、王子の母上が、行方不明になってしまわれたので、今は、その前の女王でいらっしゃった、あなたの祖母君が、もう一度、女王の座についておられるのです。」
「そぼぎみ、って?」
「母上の、母上……つまり、王子の、おばあさまですね。」
「ぼくの、おばあちゃん!?」
マッサは、めちゃくちゃびっくりして、思わず、大きな声で叫んでしまった。
「おばあちゃん……元気だったんだ! ぼく、会ってみたい。どこで会えるんですか?」
「女王陛下は、魔女たちの都にいらっしゃいます。」
「魔女たちの都?」
マッサは、その名前に、おどろいた。
おはなしに出てくる『魔女』というと、白雪姫に毒りんごを食べさせたり、あやしい術をつかって、人をカエルにしてしまったりする、悪い魔法使い、というイメージがある。
「どうして、おばあちゃんは、そんなところにいるんですか? 捕まってるんですか?」
「捕まってる、ですって? とんでもない。」
マッサの言葉に、今度は、ガーベラ隊長のほうがびっくりした。
「女王陛下は、魔女の都のお城に住んで、この国を治めていらっしゃるのです。女王陛下ほど強い力を持つ魔女は、今のこの国には、誰もいません。」
「ぼくのおばあちゃん、魔女なんですか!?」
マッサは、さっきよりも、もっと大きな声を出してしまった。
『まじょって、なに!? おいしいの!?』
「違うよ、ブルー、魔女っていうのは、魔法を使う女の人のことだよ。……ガーベラ隊長、ぼくのおばあちゃんは、魔法が使えるんですか!?」
「もちろん。変身の魔法、ものをあやつる魔法、そして、空を飛ぶ魔法……どれも、完璧です。その娘である、王子の母上も、同じくらい、強い力を持った魔女だったのですよ。」
「へえ……!」
マッサは、びっくりすると同時に、わくわくしてきた。
自分のおばあちゃんが、魔女だなんて!
孫のぼくが、会いにいったら、喜んでくれるかな。
それで、ぼくに、いろんな魔法を見せてくれたりしないかな。
変身の魔法、ものをあやつる魔法、空を飛ぶ魔法……
いったい、どんなふうにしたら、そんな魔法が使えるんだろう。
想像しただけで、わくわくしてくる。
「じゃあ、ぼく、これから、その、魔女の都っていうところに行けばいいんですね!」
マッサは、元気よくそう言った。
『まじょのみやこ! ぼく、いっしょにいく!』
ブルーも、元気よく言った。
でも、反対に、まわりの大人たちは、どことなく元気のない顔になった。
「あれっ? みんな、どうしたんですか?」
「そう、王子は、これから、魔女の都に行かなくてはなりません。……その、行く方法が、大きな問題なのです。」
騎士団長が、むずかしい顔をして言った。
「何しろ、ここから、魔女の都まで、歩くと、二ヶ月くらいかかりますからな。」
「ええーっ!?」
「馬で行くという方法もあるのですが……歩くにせよ、馬にせよ、地上を進むのは、危険です。そこらじゅうに、大魔王の手下の、化け物オオカミがうろついていますからな。やつらは、こちらのにおいをかぎつけて、おそってくるのです。だから、見られないように隠れたり、夜にこっそり動こうとしたりしても、すぐに見つかってしまう可能性が高い。」
「……あっ、はい! ぼく、思いつきました!」
マッサは、学校で先生に問題を出されたときみたいに、手をあげて、言った。
「それなら、ぼくが、ここに連れてきてもらったときみたいに、ガーベラ隊長たちに、空を飛んで、魔女の都まで、おくってもらうことは、できませんか?」
「うーむ……」
マッサは、いいアイデアだと思ったけど、みんなは、まだ、むずかしい顔をしている。
「もちろん、できることは、できます。」
ガーベラ隊長が、むずかしい顔をしたまま、そう言った。
「風の具合にもよりますが、たぶん、一週間ほど飛べば、魔女の都に着くでしょう。ですが、問題は、化け物鳥です。」
「あっ、そうか……」
自分が、そのことを、すっかり忘れていたことに気付いて、マッサは、がっくりした。
「飛んでいるときに、化け物鳥のむれがおそってきたら、私たちは、王子を守りながら戦わなくてはなりません。王子をお守りしながら、やつらと戦うことが、できるかどうか……」




