マッサ、仲間をさがす
「えええーっ!!」
マッサは、大声で叫んだ。
仲間を集めて、大魔王と戦うだって!?
たしかに、そういう話は、物語の中では、よく見る。
マッサも、自分が書いていたおはなしの中で、最後は、騎士ブラックを、最強の大魔王と対決させようと思っていたくらいだ。
でも、そういうおはなしの中で、大魔王と戦う人たちは、騎士ブラックみたいな剣の達人とか、そうじゃなかったら、強力な魔法使いとか、とっても頭がよくて作戦を立てるのが上手な人とか、そういう、特別な力を持った人たちだ。
マッサは、急に、王子様だった、ということが分かったけど、ただそれだけの、まったくふつうの男の子だ。
けんかなんか、ほとんどしたことがないし、魔法も使えないし、作戦を立てたことがあるといえば、ドッジボールでどっちによけたらいいかとか、おじいちゃんに怒られないようにするにはどうしたらいいかとか、そういうレベルの話だ。
「だ、だ、だ、大魔王と戦うなんて、そんなの、無理ですよーっ! だって、大魔王って、めちゃくちゃ強いんでしょ!? ぼく、戦いなんて、全然、やったこともないのに!」
「いえ、大丈夫です!」
また、その場の大人たち全員が、うんうん、と力強くうなずいた。
「なぜかといえば、こういう予言があるからです。
『王子と七人の仲間が、大魔王を倒して、世界を救う。』
これは、十年前の戦争が終わったとき、力の強い魔女たちが、この国の未来を占ったときに、出た言葉なのです。
そのときの私たちには、この予言の意味が、よくわかりませんでした。なにしろ、そのときには、もう、王子様は、行方不明になってしまっていたのですからな。王子様がいなければ、予言は、そもそも、かなわない。つまり、これは、もうだめだということなのではないかと、がっかりする者もいました。
しかし、今、王子様が戻っておいでになった! 予言が、本当になったのです。
きっと、残りの言葉もかなって、王子様が、大魔王を倒してくださるに、ちがいありません!」
「ええーっ……!」
そうだ、そうだ、よかった、よかった! と、大人たちが喜ぶなか、マッサは、とんでもないことになってしまった、と思いながら、立ちつくしていた。
自分が、じつは王子様だった、と聞いて、急に、えらくなったような気がして、嬉しい気持ちも、さっきまではあった。
でも、今は、自分が王子様だったなんて、なにかの間違いであってほしい、という気持ちのほうが、ずっと強くなっている。
ただ、えらいだけなら、嬉しいけど、王子様だからって、いきなり、大魔王と戦わなきゃいけないなんて、むちゃくちゃだ!
「でも、ぼくが、どうやって、大魔王を倒すんですか!? ぼく、そこにいるガーベラ隊長にも、絶対、勝てませんよ!?」
「どうやって、ですか? うーむ……それは、私たちには、わかりませんな!」
「そんなあ……」
マッサは、がっくりした。
そんな、たよりないことを、胸をはって堂々と言わないでほしい。
「しかし、王子様は、たった一人で大魔王と戦うわけではありません。『王子と七人の仲間』ですぞ! 仲間を集めて、大魔王に勝てるだけの戦力を、ととのえればいいではありませんか。」
「えっ……まあ、たしかに、それは、そうですけど……」
マッサは、複雑な顔で言った。
「じゃあ、誰か、ここにいる皆さんの中で、ぼくと一緒に大魔王と戦ってくれるっていう人、いますか?」
一気に、その場が、しーん、となった。
マッサは、がくっ、と、ずっこけそうになった。
人には、大魔王と戦え、なんて言っておいて、自分たちは、自信がないから参加しないなんて、無責任すぎる。
マッサにだって、自信なんか、まったくないのに!
と、そこへ、
『……はっ! どこ? ここ、どこ? くらい! せまい! ぼく、さかさま!』
リュックサックの中から、がさごそ、がさごそと、ブルーがはいだしてきた。
『おはよう、マッサ! ……あれ? あの、こわいやつ、いなくなった!』
そうか、ブルーは、化け物鳥を見て気絶しちゃってから、ずっと、マッサのリュックサックの中に、つめこまれたままだったんだ。
「うわ! 王子、いったい何ですか、荷物から出てきた、その、白いもじゃもじゃは?」
『もじゃもじゃじゃない! ぼく、ブルー!』
そう、騎士団長に怒ってから、ブルーは、リュックサックにつめこまれていたせいでついた、へんな寝ぐせをとろうとして、白いふわふわの毛を、ちっちゃな両手でさっさっさっとなでて、毛づくろいをした。
「これは、ブルーっていって、ぼくの友達です。」
『ともだち! ……マッサ、なに? みんな、どうしてる?』
「うん……なんだか、ぼく、王子様だったみたいなんだ。」
『おうじさま! それ、おいしいの?』
「いや、王子様は、食べ物じゃないよ。それでね、ぼく、大魔王っていう、こわいやつと、戦わなくちゃいけないんだって。七人の仲間といっしょに……」
『なかまって、なに? おいしいの!?』
「違うよ! 仲間っていうのは……友達のことだよ。」
『ともだち!』
ブルーは、そう言って、
『はいっ!』
と、ちっちゃな片手を、ぴん! とあげた。
「えっ? なに?」
『はいっ!』
ブルーは、もう片方のちっちゃな手も、ぴん! とあげた。
『ぼく、マッサのともだち! なかま! はいっ!』
「……えええーっ!?」
マッサは、また、ずっこけそうになった。
大魔王をやっつける『七人の仲間』のうちの、ひとりめが、ブルー!?
まわりで、ぽかんとしていた騎士団長や、おじさんやおばさんたちが、わっはっはっは、と笑い始めた。
「いや、いや、まさか。」
「それは、ないでしょう!」
「こんな小さな生き物が、大魔王を倒す仲間だなんて。」
「この生き物は、きっと、話の意味が、分かっていないのでしょうなあ。」
『わかってる!』
ブルーは、かんかんに怒って、言った。
『ぼく、マッサのともだち! マッサのなかま! ぼく、マッサと、いっしょ!』
「……本当に、そうかも知れませんよ。」
そう言って、一歩、前に出てきたのは、ガーベラ隊長だった。
「私が、西の森で、王子をはじめて見つけたとき、王子といっしょにいたのは、このブルーでした。これは、運命というものかもしれません。」
『うんめい! おいしい! ウフフフーン……』
「いや、運命は、おいしいものではないが。……とにかく。」
おほん、と咳ばらいをして、ガーベラ隊長はブルーと、マッサをまっすぐに見つめ、言った。
「そういうことを、運命だと考えるなら、あのとき、私が、あの場所で王子を見つけたことも、運命と言えるかもしれません。私も、王子といっしょに大魔王と戦う『七人の仲間』の一人となりましょう!」




