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マッサと不思議な光


(あっ!)


 えんとつが、かたまりのまま、自分の上に降ってくるのが見えたしゅんかん、マッサは、目をつぶった。

 もうだめだ。

 あれが落ちてきたら、自分は、死んでしまう。

 重いレンガに押しつぶされて、ぺっちゃんこになって、死んでしまう――


 ピシャアアァァァン!!


 ものすごい音がした。

 マッサは、かたく目をつぶったまま、その音を聞いていた。

 何だろう。近くに、かみなりでも落ちたのかな。

 ……それにしても、えんとつ、なかなか、落ちてこないな。

 だって、ぼくが、こうやって、ものを考えてるってことは、ぼくは、まだ、生きてるってことだもんな。

 ……それとも、まさか、ぼくは、もう、ぺっちゃんこになって死んじゃってるんじゃないだろうな?

 じゃあ、今、こうして考え事をしてるぼくは、幽霊になっちゃってるってこと!?


 マッサは、おそるおそる、体を起こして、右目だけ、うすく開けてみた。

 それから、左目も、おそるおそる、うすく開けてみた。

 そして、両目を、目玉がおっこちるんじゃないかというくらい、まんまるく見開いた。


 ふしぎな緑色の光が、マッサのまわりを包み込んでいた。

 マッサの体を中心にして、まるで輝くボールみたいに、緑色の光が広がっているのだ。


「うわっ!」


 何が起こったのか分からずに、ふっと上を見たマッサは、もうちょっとで、おしっこをもらしてしまいそうになった。

 上から降ってきた、大きなえんとつのかたまりが、そこにあった。

 緑色の光の上に、のっかっているみたいに、ふんわりと、浮かんでいる。


「えっ……えっ、ええっ!?」


 混乱しながら、マッサが見上げているうちに、えんとつのかたまりは、マッサの目の前で、サラサラサラ……と、砂粒よりもこまかいかけらに砕けていった。

 そして、傘をさしているときの、雨のしずくみたいに、緑色の光をよけて、サラサラサラ……と、マッサのまわりに、まるく、降り積もった。

 マッサの体には、小さな小さなつぶのひとつさえも、当たらなかった。


 ギャオーッ! ギャオーッ!


 はっと気付くと、緑色の光をあびた化け物鳥が、目をおさえるようにして、もがいていた。

 マッサを守った、この光は、化け物鳥にとっては、毒みたいな効果があるらしい。


 そもそも、この光は、どこから出ているんだろう?

 そういえば、この色、どこかで、見たことがあるような……?


「あっ!?」


 マッサは、気付いて、自分のシャツの中に手を突っ込んだ。

 そして、おじいちゃんの家の『あかずの間』で見つけた首飾りを、引っ張り出した。

 まるくて、手のひらくらい大きな、緑色の石が、マッサの手の中で、きらきらと輝いていた。

 見たこともないくらい、きれいな光だ。

 化け物鳥は、苦しんでいるけど、マッサは、ちっとも目が痛くなったりしない。

 逆に、ずっと見つめていたくなるような、優しい感じがする光だった。


 マッサが、手のひらにのせて見つめているうちに、緑色の石の光は、すうっと、弱くなっていって、やがて、もとに戻った。

 マッサは、ぼうぜんとしながら、とにかく、石を、もう一度シャツの中にしまった。

 すると、そこへ、


「うおおおりゃあああ!」


 と、聞いたことのある声が聞こえてきた。

 あっ、あの声は!


「ディールさん!」


 マッサが、思わず、せまい道から顔を出すと、ちょうど、タカの顔のかたちをした兜をかぶった騎士が、長い槍の一撃で、化け物鳥をしとめたところだった。


「ディールさん!」


 マッサがもう一度呼ぶと、その騎士は、びくっとして飛び上がり、右や、左をきょろきょろ見て、やっと、マッサを見つけた。


「あーっ! おまえ!」


 かぶとの、目をかくす部分だけを、がしゃっと上に上げて、その騎士は怒鳴った。

 その声と、目だけで、はっきりと分かった。やっぱり、ディールだ。

 ディールは、すごい勢いでマッサのほうに走ってくると、いきなり、バシンとマッサの頭をはたいた。


「いったああああ!」


 ごつい革の手袋をつけている上に、力が強いから、めちゃくちゃ痛い。

 マッサが、文句を言うよりも先に、ディールは、すごいけんまくで怒鳴りつけてきた。


「おまえ、なに、こんなとこを、ふらふらしてんだ! 子供は、ちゃんと隠れ場所に入ってねえと、あぶねえだろうが! ガッツに、そう言われただろ!?」


「ううう……」


 これまでに起きたいろんなことを、説明したかったけど、叩かれた頭が痛くて、それどころじゃない。

 マッサが、泣きそうになっていると、


「ディール、どうした?」


 また別の、なつかしい声が聞こえた。


「あっ、隊長! 見てくださいよ。マッサのやつが、こんなところに!」


「なに!?」


 つかつかとやってきた、よろい姿のガーベラ隊長が、マッサを見て、きびしい調子で言った。


「マッサじゃないか! 化け物鳥の襲撃のときに、子供がひとりで外を出歩くなど、とんでもない! 命をそまつにするな。」


「うう……いや、ちがうんです。聞いてください……」


 やっと、ディールに叩かれた頭の痛さがおさまってきたので、マッサは、これまでの出来事を、じゅんばんに説明しはじめた。



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