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マッサ、しごとに行く

 むしゃむしゃむしゃむしゃ!

 ブルーは急に、もらった花束を、むしゃむしゃ食べ始めた。


「ああっ!?」


 と、みんなが、びっくりしていると、


『ウフフフフーン……』


 と、ブルーは、すごくおいしい顔になって、にっこりした。


『おいしいもの!』


「えーっ? それ、おいしいの?」


『おいしい!』


 ブルーは、まるでサラダでも食べるみたいに、もらった花束を、もりもりもりと全部食べて、また、


『ウフフフフーン……』


 と、すごくおいしい顔をした。

 それから、マッサの花束も、じーっと見るので、マッサは、困って、


「ねえ、これ、ブルーにあげてもいい?」


 と、小さな女の子たちにきいた。


「いいよ! もじゃもじゃさんに、あげて!」


『もじゃもじゃじゃない! ブルー!』


 ブルーは、そう言いながら、マッサの分の花束も、サラダみたいに、もりもりもりもりっと食べて、また、


『ウフフフフフーン……』


 と、すごくおいしい顔をした。


「なんか、おれまで、腹がへってきたなあ。」


 と、ガッツが、呟いた。

 そのときだ。

 コンコンコーン! と、建物の中で、木の板を叩くみたいな、何かの合図の音がした。


「みんなーっ! しごとの、時間だぞーっ!」


 という声も、聞こえてきた。


「えっ?」


 と、マッサが、びっくりしていると、どやどやどやどやーっと、たくさんの子供たちが、建物から出てきた。

 みると、小さい子は、ひとりもいなくて、みんな、中学生くらいの、大きい子供たちばかりだ。


「じゃあ、行ってくるぜ。また、夕方にな。」


「いってらっしゃーい!」


「みんな、けんかしないで待っててね。行ってきまーす!」


「いってらっしゃーい!」


 中学生くらいの子供たちは、るすばんの、小さな子供たちに手をふると、右の道へ行ったり、左の道へ行ったり、みんなばらばらに、どこかへ歩いていった。


「おれたちは、みんな、それぞれに、しごとをしてるんだ。これから、しごとの時間なんだ。」


「えっ、みんな、大人の人みたいに、しごとをして、はたらいてるの?」


 マッサが、そう言うと、ガッツは、当たり前だろ、というように、うなずいた。


「そうだ。だって、おれたちには、もう、めんどうをみてくれる、家族の大人はいないからな。年上のおれたちが、しごとをして、給料をもらって、小さい子たちのめんどうをみてるんだ。」


 マッサは、何といっていいか、わからなくて、だまっていた。


「まあ、さすがに、大人とまったく同じくらい働くってわけには、いかないけどな。町の人たちが、優しくて、俺たちが、腹をすかせたり、こごえたりしないように、働いたよりも、ちょっと多めに給料をくれるんだよ。なにしろ、『青いゆりかごの家』には今、五十五人も、子供がいるからな。しっかり、給料がもらえないと、みんな、腹がへって、倒れちゃうからな。」


「五十五人も!?」


「あっ、間違えた。五十六人だ。だって、今日、マッサが、新しく仲間に入ったからな。」


 マッサは、また、何と言ったらいいか分からなくて、黙っていた。

 もう、おじいちゃんの家に帰れないということを思い出して、すごく悲しくなったのと、ガッツに『仲間』と言ってもらえて、ちょっとうれしくなったのとが、まじりあって、複雑な気持ちになったからだ。

 でも、マッサの目から、涙がぽろりとこぼれるよりも先に、


「ていうか、おれも、こうしちゃいられねえ! 仕事に遅刻したら、めっちゃくちゃ、怒られるからな。なあ、マッサ、おまえもいっしょに来るか?」


「えっ!?」


 マッサは、急にそう言われて、びっくりして、涙が、引っ込んでしまった。


「今、おれがしごとをしてるところは、人手不足でな。めちゃくちゃ、いそがしくて、目がまわりそうなんだ。おまえがいっしょに来てくれたら、助かるんだけど。」


「えっ……そう? うん、分かった、じゃあ、いっしょに行くよ!」


 マッサは、そう答えた。


「ブルー、今から、しごとに行くんだって!」


『しごとって、おいしいの!?』


 全然、わかってなさそうなブルーを、リュックサックにのせて、マッサは、ガッツといっしょに、大急ぎで、町の中を走っていった。


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