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マッサたちと、たいへんな計画

「おい、待てよ、おまえら! ……おーい! 待てってば!」


「ちょっと、ちょっと、待ってくださいよー!」


 ディールや、タータさんも呼びかけたけど、子供たちは戻ってこない。

 足を止めたり、振り返ったりする子さえ、ひとりもいなかった。


「何だよ、あいつら……ボートが見つからなかったからって、すねちまいやがって……」


 ぶつぶつ言うディールの声を聞きながら、マッサは、思わず、その場に座りこみ、顔をおおってしまった。


『マッサ、マッサ! だいじょうぶ? だいじょうぶ?』


 ブルーが心配して、マッサのまわりを走り回る。


「王子、しっかりしてください。」


 ガーベラ隊長が近づいてきて、肩に手を置いてくれる。


「そんなふうに、落ち込むことはありません。……確かに、この村には、船もボートもありませんでした。しかし、《惑いの海》に面した村は、ここの他にもあるはずです。その中には、大魔王の手を逃れた村だって、あるでしょう。そういう村に行けば、きっと船が――」


「違うんだ。」


 と、マッサは、泣きそうになりながら言った。


「がっかりしてるのは、ぼくよりも、あの子たちのほうだよ。

 ぼく、王子だから、大魔王をやっつけて、みんなの家族を助けてあげる、って、チッチとタックに言ったんだ。みんな、その話を聞いて、お父さんやお母さんに会えるんだ! って嬉しくなって、ぼくたちを、あんなに手伝ってくれたんだ。

 それなのに、ボートがなくて、大魔王の島に行けない、ってことになって、みんな、すっごく、がっかりしたんだと思う。だから、みんな帰っちゃったんだ……」


「しかし……ボートがなかったのは、別に、マッサのせいではないでしょう。」


 フレイオが、少し早口になって、言った。


「だから、マッサが責任を感じて落ち込むことは、ありませんよ。そもそも、悪いのは、大魔王なんですから。」


「それは……そう、だけど……」


『ねえ、おじちゃん。いまのおはなし、ほんと?』


『おじちゃんたち、だいまおうのしまに、なぐりこみをかけるの? それで、おかあちゃんや、おとうちゃんたちを、たすけてくれるの?』


 ディールに向かってそう言ったときの、チッチとタックの表情を、マッサは、忘れることができなかった。

 あのとき、チッチも、タックも、


(まさか、そんな、とても信じられない。)


 と思いながらも、同時に、


(もし本当だったら、こんなに、すごい、うれしいことはない!)


 と思っているような、きらきら光る、真剣な目をしていた。

 食べたくもない、ぶよぶよの海藻ばっかり食べながら、なんとか暮らしていた子供たちにとって、マッサたちの登場は、ものすごい希望だったんだ。

 それなのに、ボートがなかったせいで、一度、ともった希望の光は、あっけなく消えてしまった。

 いくら、自分が悪いわけじゃなくても、子供たちの今の気持ちを考えると、何だか、自分がすごく情けなくなって、マッサは泣いた。


『マッサ、マッサ! だいじょうぶ? なかないで!』


 と、ブルーが、いっしょうけんめい言ったときだ。


 バリーン!!


 と、急に、村の家のほうから、ものすごい音が聞こえた。


「何だっ!?」


「敵か!?」


 ディールとガーベラ隊長が、同時に叫んで、槍を構える。

 フレイオも、杖を構えた。

 タータさんも、足を踏んばって、四つの拳を、ぎゅっと固めている。

 ボルドンも、


『グルルルルルゥ……』


 と、爪と牙をむき出して、姿勢をぐうっと低くした。

 物音は、まだ続いている。


 バキバキ、バキッ……

 メリメリッ! バターン!

 ドシーン!

 ゴトーン!!


『なに、なに!? なんの、おと!?』


「何だろう……!?」


 もう、完全に涙が引っ込んでしまったマッサは、片手でブルーを抱き上げながら、片手でシャツの下の《守り石》を握って、立ち上がった。

 まさか、鎧を着た猿たちが、マッサたちを追いかけてきたのか?

 まずいぞ。

 もし、そうだとしたら、家に帰っていった子供たちが危ない!


「行こう! みんなを助けなくちゃ――」


「……んんん?」


 マッサが叫んだとたんに、ディールが、何だか、変な声を出した。


「えっ?」


 マッサは、思わず、ディールの顔を見た。

 ディールは、目を丸くして、向こうのほうの何かを見つめていた。

 そのとなりでは、ガーベラ隊長も、ディールとまったく同じような表情を浮かべて、同じ方向を見つめていた。


 いったい、どういうことだろう?

 二人が見ているのと、同じ方向に目を向けたマッサは、


「んんん? ……えっ? えええーっ!?」


 と、思わず大声を出してしまった。


 子供たちが、ぞくぞくと、こっちに戻ってくる。

 しかも、みんな、普通にこっちに向かってきているわけじゃなかった。

 三人ずつ、四人ずつで協力して、エイヤーサー、エイヤーサー、と、大荷物を運んできているんだ。

 その、大荷物というのは――


「あれって……まさか……」


「家の、玄関の、ドアじゃねえか?」


 あっけにとられて呟いたマッサに、ディールが、信じられねえ、という顔で答えた。

 その通り。


 あっちから来る子たちが運んでくるのは、どう見ても、家の玄関のドア。

 そっちから来る子たちが運んでくるのは、どう見ても、物置小屋の壁。

 向こうから来る子たちが運んでくるのは、どう見ても、家の中の大きなテーブル。

 そのまた向こうから来る子たちが運んでくるのは、どう見ても、寝るときに使うベッド。


 エイヤーサー、エイヤーサー! と、漁師らしい掛け声をかけながら、大荷物を運んできた子供たちは、驚いているマッサたちの目の前に、ぼんぼんぼん! と、荷物を置いた。


「はい、これ!」


 と、ちっちゃな手に、大きな金槌を握ったチッチが言った。


「つくろう!」


「……えっ?」


「おふね!」


 あっけにとられたままのマッサに、大きなのこぎりを握ったタックが言った。


「おふね、みんなで、つくろう!」


「つくろう、つくろう!」


 と、子供たちが、声を合わせて叫んだ。


「おふねが、ないなら、みんなで、つくろう!」


 マッサは、目をまん丸く見開いて、ブルーを見た。

 ブルーも、青い目をまん丸く見開いて、ガーベラ隊長を見た。

 隊長が、ディールを、ディールが、タータさんを。

 タータさんが、フレイオを、フレイオが、ボルドンを見た。

 そして、みんなが、マッサを見た。


「つくろう!!」


 でっかいでっかい声で、マッサは叫んだ。


「おふねが、ないから、みんなで、つくろう!!」


 うおおおおおーっ! と、子供たちが叫んだ。

 ブルー、ガーベラ隊長、ディール、タータさん、フレイオ、ボルドンも、叫んだ。

 そして、さっそく仕事にかかりながら、みんなは歌い出した。



  おうちを こわして どうするの?

  でっかい おふねを こしらえて

  とうちゃん かあちゃん たすけだす

  じいちゃん ばあちゃん そろったら

  みんなで おうちを なおしゃ いい!


  おうちを こわして だいじょうぶ?

  でっかい おふねを こしらえて

  とうちゃん かあちゃん たすけだす

  にいちゃん ねえちゃん そろったら

  みんなで おうちを なおしゃ いい!



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