マッサたち、ふたたび出発する
『グオーウ、グアーウ! グロロロロロ。』
『いろいろ、ありがとう! って、いってる!』
ボルドンのお父さんの言葉を、ブルーが通訳する。
熊と人間とが仲直りし、大魔王の手下の、鎧を着た猿たちをやっつけた今、《二つ頭のヘビ》山脈は平和になった。
だから、マッサたちは、これから再び、大魔王を倒すための旅を続けるんだ。
「マッサファール王子さま、それに仲間のみなさん。本当に、ありがとうございました!」
《赤いオオカミ》隊の隊長が言って、
「ありがとうございました!」
「このことは、一生忘れませんよ。」
「これからの旅も、どうか、お気をつけて!」
と、戦士たち全員が、口々に言った。
「みなさんも、これから、協力して、この山を平和に守ってください。」
「ええ、もちろんです!」
マッサの言葉に、《赤いオオカミ》隊の隊長が、力こぶを作ってみせた。
「これからは、熊と人間が、力を合わせて山を守っていくことに決めました。見回りのときは、熊たちの背中に、乗せてもらえることになったんです。これで、これまでよりもずっと広い場所を、一気に見回ることができます。」
「あっ……落っこちないように、じゅうぶん、気をつけてくださいね。」
マッサは、ボルドンの背中に乗せてもらったときのことを思い出して、心から、そう言った。
慣れないうちは、絶対、何人も背中から転がり落ちて、大変なことになりそうな気がする。
『ウオッ、ウオッ。グローングオーンガオンガウ、グオーングローンガオンガオーン。』
となりから、ボルドンのお父さんが、嬉しそうに何か言った。
『このやまの、なまえ、かわった! って、いってる。』
しっかり聞いていたブルーが、すかさず、通訳する。
『このやまの、あたらしいなまえは、いいくまとにんげんがすんでる、いいくまとにんげんのやま。……くまと、にんげん、これから、いつまでも、なかよくする!』
「ほんとに、よかったですねえ。」
タータさんが、四つの手のひらでいっぺんに拍手しながら、にこにこして言った。
「こんなふうに、何もかも、うまく解決したのは、マッサの活躍のおかげですよ。さすが、マッサ!」
「いや、一番は、ブルーが通訳をしてくれたおかげだよ。今回、ブルーがいなかったら、ぼくたち、ボルドンたちのことが、何にも分からないところだったもん。ブルー、すごい!」
『ぼく、すごい! えっへん!』
ブルーは、マッサにほめられて、嬉しそうに胸をはった。
「よし……そんじゃ、そろそろ出発するとするか。」
ディールが言って、よいしょ、と荷物をかつぎなおした。
みんな、もう、しっかり荷物も背負って、ふたたび旅を始める準備は万全だ。
「王子、どうか、この先もご無事で。この山を、みごと、平和になさったように、大魔王を倒し、世界を救ってください。」
《赤いオオカミ》隊の隊長が、あらためて言った。
「大魔王が倒され、もう、何者も攻めてくるおそれがなくなったら、我々は、滝の基地を出て、なつかしい家に帰ります。そして、ときどき、この山の熊たちのところへ、遊びに来ようと計画しているんです。」
「それ、すっごく、いい計画ですね!」
マッサは、大きく頷きながら言った。
その計画が、本当になるためには、マッサたちが、これから、めちゃくちゃがんばらないといけない。
すっごく気合いが入るような、すっごく大きな責任を感じるような、とにかく、ものすごく気持ちが引き締まる感じだ。
「みなさんが、はやく家に帰れる日が来るように、ぼくたち、がんばりますから、応援していてください!」
「ええ、全員で、旅の成功をお祈りしています!」
『グオーン、グオーン!』
「それじゃ、ぼくたちは、これで!」
と、マッサたちが歩き出しかけた、そのときだ。
『グオッ、グオッ、ウオオオオーッ!』
遠くの山の斜面を、すごい勢いでこっちに向かって走ってくる、一頭のイワクイグマの姿が見えた。
あっ……もしかすると……あれは、ボルドンじゃないか?
『ガオオーン!』
ボルドンは、最後の坂道でばーんとジャンプして、マッサたちの目の前に、バフーン! と着地すると、
『ガオガオ、グオーッ、ウオーン!』
と、大きく頭を振りながら叫んだ。
『ボルドン、ぼくたちといっしょに、いきたい! って、いってる!』
ブルーが、宝石みたいに青い目を丸くして、そう言った。
『ガオーン、ガオーン!』
ボルドンのお父さんが、だめだ、だめだ! というように吠えたけど、ボルドンは、あきらめずに、お父さんに向かって、何か言っている。
『えーっと……ボルドンのおとうさんは、こういってる。「おまえは、にんげんじゃなくて、くまだから、だめ! くまは、たびなんかしないで、やまにすむもの。それに、おまえは、にんげんよりも、からだが、おおきすぎて、じゃまになるから、だめ!」』
「じゃまじゃ、ないですよ!」
マッサは、思わず、ボルドンのお父さんに向かって言った。
「ボルドンのお父さん、もし、許してもらえるんだったら、ぼくたち、ぜひ、ボルドンに一緒に来てもらいたいです! だって、ボルドンは、強いし、優しいから、仲間になってもらえたら、すっごく、心強いからです。
それに、こういう予言があるんです。『王子と七人の仲間が、大魔王を倒し、世界を救う』――
ぼくたち、まだ、五人の仲間しか集まっていなくて、あと二人、どうしても、仲間に入ってもらわなくちゃならないんです。もし、そのうちの一人に、ボルドンが入ってくれるなら、こんなに頼もしいことはありません!」




