閑話.金勘定
王都に行くためには準備がいる。
旅をしていたらしいルナは少し買い足せば事足りるだろうが、自身の分はそうはいかない。
水袋や野営道具、武器の手入れ道具等、不足している物が沢山ある。
宿屋の食堂で自身の分の朝食を完食し、目の前に座る少女を見る。食事の時の彼女は少し表情が乏しい気がする。そして、食べるのがとても遅い。
今日は出来れば買うもんについてすり合わせをしたいのだ。彼女は意外と金遣いが荒いので。あと、常識がない。絶対、いらないもんを買うだろう。
ルナの制御に燃えながら、食べ終わるのを待つ。
彼女はいつも、完食して水を飲み、満足げな顔をしてから俺に話しかけてくる。
「さあ!今日は買い物に行きましょう!」
「ああ、旅支度だな」
「はい!たくさん買わないといけないものがあるんです!」
「そうだな。しっかり準備しておくに越したことはないな」
「そうですよね!まずレオルドさんが必要なものですけど、水筒と解体用のナイフに魔道ランタンがあれば大丈夫でしょうか…」
「ああ、あとは武器の手入れ道具に解体用ナイフは万能ナイフの方が使い勝手がいい。それと、携帯食料に2人用テント、移動用の馬なんかもあるといいと思うぞ」
「なるほど!馬、いいですね!買いましょう!」
「馬を飼うとなると、鞍に干し草とかも必要だろうな」
…正直、ルナからこんなに常識的な発案がされると思っていなかったな。まともな話し合いで終わりそうだ。
レオルドは安堵していた。すぐに自身のその考えがぶち壊されるとも知らずに。
「干し草に鞍、ですね!あとは…あ!野菜と調味料も買い足しておかないと!」
「…ん?」
「それから、オレン?も買っておきましょう。おいしかったので」
「ん?!」
「そういえば!レオルドさん用のベッドを忘れるところでした!」
「待て待て待て待て!!ベッド?!正気か?!」
「何がですか?」
「ベッドなんていらないだろう?!」
「何を言ってるんですか?絶対いります!!」
「野営に絶対いらないだろ!」
「いいえ!むしろ必需品です!!」
「いらないというかダメだろ!」
「何がダメなんですか?!」
結局、寝具必要論争をしたのだが、最後には財布を握っているルナが粘り勝ち、寝具を購入する羽目になった。しかも、結構いい値段の。
だが、馬を買ったなら乗るための乗馬服がいる!と思い込み、探している彼女の無駄遣いを阻止することには成功した。とても落胆していたが。
このままでは非常にマズい。ルナにばかり金を持たせてたらダメだ…!
その日の夜、ルナが風呂から上がって気分がとてもいい時。このタイミングを見逃さずに、話をつける!
「ルナ。少し提案があるんだが。」
「何ですか~?」
心臓が鳴っている。この緊張感は初めてのクエストで魔獣に対峙したときと同じだろうか…。
少しの懐かしさに軽い現実逃避をしてしまうが、意を決して口を開く。
「幾らか金を持たせてほしい」
「いいですよ~」
「理由なんだが……いいのか?」
「はい。いくらくらい持っておきますか?」
「そうだな…。食事の時に注文と支払いの両方を俺が出来た方がいいからな。多めに頼む」
「わかりました。少し待ってもらえますか?」
「ああ。構わない」
「ありがとうございます」
こうして現金を手に入れる算段を整えたのだが、後日、100万リグも渡されたのだった。
ポンと渡された大金に彼女が現金を持っていると使ってしまうと判断して、冒険所ギルドの口座で貯金をするように提案したのは英断だったと思う。
その後、レオルドはルナから給料や経費として結構な額を定期的に渡されるが、いつ彼女が持つお金が無くなるか気が気ではないため、昔のような散財をすることはなかったのだった。
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