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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
避けられない戦い
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彼に関するレポート


かつて、カルヴァ国エイディアス領のかたすみにアーレスと呼ばれる小さな村があった。


その村にはスケルトンが歩き回っていたという。


占拠や支配をされている訳ではない。

人を助け、守り、その発展に尽くしていた。


その村を治めた領主はグレンデル、リッチを倒した英雄として名を馳せた人物で、小さな村を瞬く間に発展させた。


豊かな畑は毎年、莫大な麦を生み出した。

麦以外にも、ここから輸出される茶は銘茶として今でも名高い。


モンスターに襲われる事の無い理想郷。

人は増え、発展し、やがては街となり、今もなお、楽園にある街として世界中に知れ渡っている。


領主はその後、エイディアスの軍へと入り、ラグボーネへの進軍に副将として参加。

勝利へと貢献。


その功績から、ラグボーネの統治に大きな発言権を持つと、瞬く間に劣悪だったラグボーネの食料政策を改善。


以降、エイディアスの属領となった領内の安定した統治に尽力し、大きな支持を集める。


晩年は、大戦でバラバラになっていた魔法系統の収集に努め、魔法学校をエイディアスに設立。

魔法式の正しい理解と応用を広め、大きな成果を残した。

彼が教えた弟子達は衰退しきっていたアンデッド創造魔法を習得しており、今でも厳しい環境の開拓事業に大きな寄与をしている。


彼の死にはふた通りの話が残っている。

このふたつにはどちらにも信頼に足る記録が残っていないため、ここではどちらも支持せずに、その話のみを記載する。


ひとつは、多くの弟子達と彼自身が造り出したアンデッドに見守られながら、静かな眠りについたとする話。

これは彼の功績を考えれば当然とも言える結末だろう。


もうひとつは、死後、デスナイトへと転生。多くの弟子達と彼自身が造り出したアンデッドと戦い、そして滅んだとする話。

これは彼のあまりにも多過ぎる死を見てきたその生を考えれば十分有り得る結末だろう。


このふたつの話が残った事により、彼の人生は長く長く語り継がれ、そしてそのおかげで伝説になったとも言える。






人物評としては様々で西方諸国では悪魔の先触れ、生あるデスナイトなど、もはや人間にされる評価とは思えない物が多い。


彼に深いゆかりのある地では、苛烈で人嫌いのひどい人物だったとする評価がある一方、彼が造ったスケルトンはとても人間味のある性格をしていたとも言われている。


最後に、彼の簡単な略歴を記載し、レポートとして提出する。



カドモス・オストワルト

※元々は偽名だったと推察。彼が生まれた時に親から付けられたであろう名前は不明。大戦時にはコードネームとしてビフロンスと呼ばれていた。


幼少時は戦災孤児として西方諸国のいずれかで暮らす。


その後、隠者に拾われ、隠者からアンデッド創造魔法をはじめとした魔法を、アーレスと呼ばれたデスナイトに剣技を教わる。


隠者の元で10年前後、暮らした後、大戦に参加。

西方諸国の資料から、おそらく15歳前後であったと推察。


その後、12年程、西方諸国を転戦。

工作員としてずばぬけた功績を上げ、中でもノナカ砦を単独で落とした事は現在でもどうやって為されたのか、その考察・研究が行われている。


また、前線でスケルトンの軍勢を率いて活躍していた記録も残っている。


20代後半で終戦を迎え、同時期に成立したカルヴァ国に亡命。

さらに30歳前後でエイディアス領へと移る。


カルヴァ、ならびにエイディアス内部ではスケルトン専門の奴隷商人として隠遁生活を送った。

※何らかの研究目的(一説によると、デスナイトに関する研究であったとも)でスケルトンを造り続け、その結果不要になったスケルトンを奴隷として売っていたとする記述も発見されている。


決して自ら剣を振らず、そのため彼が現役の戦士である事を知っていた者はほとんどいなかったと推察。

話によると、ゴブリン程度の弱い相手でもスケルトンに任せ、絶対に剣を抜く事は無かったらしい。

スケルトンを辺境に売り、苛烈な環境での労働に当てる事で評価を上げる。


30代後半、おそらく38歳前後の時にラグボーネとの小競り合いが起こる。

この時にワグナー将軍率いるエイディアス軍に協力、戦闘に参加。


この時、彼はまだ西方諸国の刺客に狙われている危険性があった。

基盤を築いたエイディアスがラグボーネに落とされ、政情不安になると、どのような勢力の侵入があるか分からなくなる。

それに対応するために参加したものと推察。


ヒュージスケルトンをはじめとした精強なアンデッドを引き連れ、ラグボーネの撃退に大きく貢献。

※これは非公式な記録であり、正式な記録はない。


この事は、隠遁生活の終わりとして、戦士として、領主として、そしてネクロマンサーとして、彼の人生に大きな影響を与えた。


30代後半でありながら、恐るべき身体能力を発揮した理由は以下のように推察。


隠者よりアンデッド創造魔法を生きたまま掛けられた事により、肉体強度に、特に骨格強度に大きく補正があったと考えられる。


また、膨大な魔力を誇っていた事については、骸装と呼ばれる、デスナイトの鎧を身に着けていた事が原因であったと考えられる。


身につけた者に死の属性を与える鎧であり、人間が装備すると、呪詛が身を蝕み、やがては発狂に至る。


ただし、彼はネクロドライブを隠者にかけられた結果、それが免疫の役割を果たしていて、効果が薄かったと推察。


身体にたまった呪詛を魔力として使い、それが結果的に普通の人間よりも大きな魔力容量となって発現していたと考えられる。

※人嫌いとの評価が、その呪詛によるものなのかは不明


少年でありながら、大戦時に活躍し、肉体年齢のピークを過ぎてなお活躍したのは、以上2点が彼に大きな補正として作用した結果ではないだろうか。


以下、次回提出レポートに続く。


※このレポートの続きは保管書庫焼失とともに失われてます。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。   <エイディアス国立図書館>



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