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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
エイディアスの骸骨商会
16/67

領主との面会

「まさか領主とはな」

「それだけの働きはしただろう」


領主の館に招かれていた。

ただし非公式にである。


俺の服装は平服だった。

エキオンは裸に例の使役されているモンスターである証の札を掛けていた。


はっきりいってダサイ。

それを言って、既にエキオンに怒られていた。


「さて、そろそろ来るだろう。黙ってろよ」

「了解した」


通されたのは領主が私的に使っている客間だろう。

ただしそれでもいやに広い空間に、馬鹿にでかいテーブルが置かれた部屋だったが。


待つ事しばし、控えめなノックの後に、領主が現れた。

これがエイディアス公か。


「お待たせしたようだね。私がアドルフ・タスラ・エイディアスだ」

「拝謁の機会を頂き、誠にありがとうございます」

「あまり肩肘張らずとも良い。今回はあくまでも私的に君と会っているのだから」


輝くような金色の髪。

既に40は過ぎているだろう。

しかし、貴族にありがちな醜く太った体ではない。


もしかしたら鍛えているのかもしれない。

姿勢の良さがよりスマートに見せていた。


「そう言う訳には参りませんでしょう。しかし、作法に疎い身ですので、失礼がございました際には、ご容赦頂ければ幸いです」

「良い良い。ワグナーから話は聞いている。驚いたよ。これほどの武勇を誇るべき人物が領内で穏やかに暮らしていたとは」


領内でスケルトンの奴隷商人として以外の姿はあまり見せていない。

軍と無関係に暮らし、傭兵として依頼を受けたりもして来なかった。

何しろ、ゴブリン程度の雑魚を相手にする時すら剣を取らなかったのだ。


この街で俺が剣を手に取っている姿を見た人間はごくごく少数。

ダンジョンに行くのにも、ギルドを通さずに勝手に向かっていた。


昔の話を知っていても、それは昔の話なのだろう。

そう思わせるように動いていたのだから当然そうでなくては困る。


「なんと言っても此度の戦の英雄殿であらせられるのだからな」

「それは身に余る評価です」


席を勧められたので座る。

白髪の執事がいつの間にか近づいて来ていてイスを引いた。

さすがに領主の館の中ともなると、執事であってもただ者ではないのだろうか?

妙な関心をしていると、すぐに紅茶が用意される。


「すまないな。本来であれば大々的に評されて然るべきなのに、このような礼の尽くし方になってしまって」

「事情は分かっております。私からは文句などございません」


おそらくカルヴァ本国にはアンデッドの件は伏せられるのだろう。


伏せた所である程度伝わるのは間違いないが、公式にそれを認めては世間の風聞と評価に影響が出る。

将軍が言っていた、所詮はモンスターという事だ。


どんなに役立てた所で、モンスターの力で何とかなりました、とは領主の口からは何があっても言えない。


「これはここだけの話にしてもらいたのだが、今回の件でゼルト男爵をはじめ、多くの貴族に処罰が下されるだろう」


これは、思ってもみない話が飛び出したな。


「実際、今回の件は相当に危なかった。少しの状況の違いで落とされていてもおかしく無かった。そしてそれは君がいなければ確実だっただろう」

「領民として、多少なりともの助力をと考えるのは当然です」

「なかなかにガードが固いな。率直に言おう。これから大きく国内の情勢は動く。その時に君のような人材が悪い流れに乗ってしまうのは困るという事だ」


やはりそういう事か。


今回、戦に多大な成果を残した人間が現れた。

それも領民ではあっても、ただの平民だ。

それこそ金や地位でどう転んでもおかしく無い人間。


それを放っておく事はどうあっても出来ないだろう。

例えばゼルト男爵のような人間の元に流れてしまっては目も当てられないという事だ。


「私はこれからも領民として、閣下に恥じる事のないような暮らしを続けていくだけにございます」

「しかし、君は英雄だ。英雄が今のままの暮らしを続けるのは私の矜持に反する。君には望むものを与えたいと思っている」


あくまでも私的にではあるが、と付け加えられた。


そのまま受け取れば子飼いとして役に立てとも言われている事になるな。

やり手だとは聞いていたが、面倒な事だ。


さて、どうする。

ちらりとエキオンを見た。

エキオンは俺の命令通りにぴくりとも動かない。


「そういえば、君のその赤いスケルトンはなかなかに凄い戦士だそうだな。並の戦士が束になっても叶わないとか」

「少しばかり魔力をつぎ込んで造りました特別製ですので。それでも所詮はスケルトン。エイディアス軍の精鋭とは比べるべくもございません」

「馬に乗せれば天を駆けるような動きを見せ、剣を取れば疾風のように敵を斬り刻む。あの巨大なスケルトンばかりが話に登るが、見ている者は見ているものだよ」


量産しろと言われても面倒だな。


「私がこれまでの人生の全てを掛けて魔力を注ぎ込んで参りました魔力素材を使ってこその結果にございます。私でもこれと同等のスケルトンは残りの半生を掛けねば得られないでしょう」

「そうなのか?そのように素晴らしいスケルトンならば欲しがる人間は私の知り合いにもいくらか心当たりがあったのだが」

「申し訳ございません」


本当にそれは知り合いか?

期待していた訳では無かったが、やはりエイディアス公も貴族か。


いや。

自らも野望を持ち、他人の野望にも敏感になれなければ、領地を治める事等出来ないのだろう。


実際、エイディアス公の領政策に不満は無い。

だからこそ、ここの領民として暮らしているのだから。

しかし、こう何事も否定するばかりでは不審しか持たれないだろう。


どうする?


エイディアス公は力を持っていても望みが少ない人間がいるという事をあまり信じないタイプの人間のようだ。


何か分かりやすく納得させられる物を望まなければ、処理される方向にも動かれかねない。

不穏な空気がほんの微かに感じられる。


別にどこでだって暮らしていけるが、今回の件で得た評価を面倒の一言で失うのは馬鹿野郎だろう。

それに、この地から出て行くつもりも今の所は無いのだ。


仕方無い。

決めた。

他所の国に奪われて、不便が生じるよりは、マシだろう。


「閣下。ひとつだけ、お願いをしても宜しいでしょうか?」

「勿論だとも。そのつもりでここに君を呼んだのだから。まさか金なんてつまらない事は言ってくれるなよ」

「私に領地を頂きたい」


さすがにこの発言は予想外だったのか、エイディアス公の口が間抜けに開いた。






俺が要求したのはあの廃村だった。


エイディアスからも適度に離れていて、今回のようなラグボーネなどの他国との干渉の心配がない土地。


問題はモンスターの襲撃が放置された結果、増大しており防備を備えなければならない事だろうが、スケルトンがいればそれも問題ないだろう。

今ではヒュージスケルトンすらいるのだから。


貴族でもない人間に領地を与える事は出来ない。それも、今回の成果はあくまでも非公式なものなのだから、その恩賞という訳にもいかない。


建前としてそう否定してから、結局は認められた。

エイディアス公にとっても面倒の無い土地だったのが理由だろう。


元々あそこはエイディアス公の領地だ。


他の領主や国が粉を掛けようにも、ほんの少し、間諜を村人に混ぜればすぐにも報告できる距離なのだから。


ひとまずは特使という形で村の再開発を行い、しかるべき時にしかるべき位を貰えるという形に落ち着いた。


俺は、はっきりとは言わなかったが貴族として上の地位が欲しい、そんな野望を持っている男だとエイディアス公は思っているだろう。


面倒事が増えるのは間違いないが、これでひとまず決定的な面倒事からは足を遠ざけられたはずだ。


その代わりにあの廃村の整備を行わなければならなくとも、そのための資金は出してくれると言うのだから良いだろう。

好き勝手やるだけだ。


邸を出て、帰りの道すがらにエキオンが呆れたように言った。


「色々と才能のある男だったんだな」


交渉の事を言っているのか。


「さてな。これから面倒が増えていくだろう。ボロが出たらあっさり死ぬかもな」


これは冗談ではない。

あまり目立てば毒殺でもされかねない。

冗談と見せて、本気で思っているのがバレたのか。


「そうならないように私がマスターを守ろう」


思わず笑ってしまった。


「そうか。しっかり頼む。相棒」


そう言って差し出した拳に、エキオンは拳を合わせた。


明日から1日に1度、7時ごとの掲載にします。よろしくお願いします。

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