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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
エイディアスの骸骨商会
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ラグボーネの進軍

軍のモンスター討伐隊が出立してから3日後、やはりと言うべきだろうか。

何も起こらない訳が無かった。


エイディアスから2日の距離にラグボーネ軍2500が突如として現れた。


大規模な隠蔽魔法でも使っていたのか。

それに対してエイディアス軍は1200。

本来であれば1700のはずが遠征で大幅に減らされている。


遅くとも明日には2500がこの街へと攻め込んでくるだろう。

この街に攻め込んでくるのはカルヴァとラグボーネの小競り合いと言えたが、それは毎度、エイディアスが撃退に成功しているから言っていられたのだ。


実際に落とされてしまっては、全面戦争の火種になりかねない。


ふざけるな。

今はまだこの国を出る訳にはいかなかった。

俺にとって安全な国はそう多く無い。

やっと得たそれを、こんな馬鹿な作戦で無にかえされてたまるか。


悪い予感、それに従って進めていた準備を俺は行動に移す事にした。

そのために、まずはパラスの親父の店に顔を出す。


「よう親父」

「最悪だな」


言うまでもない。

今回のラグボーネ進攻の事だ。


親父は手にしていたカップで何かを飲んでいた。

昼間から酒か?

やけになるにはまだ早いだろう。


親父に酔っている様子は無い。

下戸ではないだろうから、これくらいは水みたいなものか。


「そうでも無いさ。何と言っても名将ワグナーがこの街にはいるんだからな」

「生きる伝説か?それでも今回は分が悪いだろう」

「これで守りが甘ちゃんシードだったら俺もすぐに逃げ出したさ」


街を出る人間が実際にかなり出ていた。

今も領主の館へと大勢の人が詰めかけているだろう。

数としてはこちらが半数以下。


守りに堅固な塀がある分、数通りでは無い。

しかし戦いは魔法次第でどうとでも転ぶ。

さすがに一撃で塀を打ち壊すような魔法使いがそうそう出てくるとは思えないが。


「なあ、親父。俺たちは何だ?」

「あん?何言ってんだ?お前は?」

「商人だろう?商人とは何だ?」

「機に応じて儲け、変に臨んで儲ける」

「さすが親父だ。なら、それをやろうぜ」


親父は手にしていたカップの液体を一気に飲み込んだ。


「考えがあるなら聞かせろ。話によっちゃあ乗ってやる」


こう言って、親父が今まで乗らなかった事は無かった。






しかし、まさか司令部に通されるとは思わなかった。


今いるのは軍司令部の一室だった。

何に使われる部屋なのかは知らない。

それほど広く無い部屋に机と簡素なイスが6脚置いてあるだけ。


司令部は騒がしかった。

今も対応と作戦立案、状況把握に追われているのだろう。

室内には俺と親父、後ろに立つエキオンしかいない。

言うまでもなく、誰ひとりとして武器は持っていない。


「んで、一体誰を紹介してくれるんだ」

「たまにはお前を驚かせるのも悪く無い」

「は?それって?」


そう言われて思いつくのはひとりしかいなかった。

予想をしていても、そこに現れた人物には確かに驚いた。


「名将ワグナー」

「失礼な奴だな。将軍と呼べ」


思わず漏らしてしまった言葉に、すでに老境に差し掛かっている将軍は嘆息するように言った。






俺が親父に頼んだのは、頭が柔らかくて話の通じる相手、それもなるべく軍の上の方に顔がきく人間を紹介して欲しいという事だった。


それがまさか、トップに通じるとは思いもしなかった。

将軍が席に着く。

こうして間近に見るのは初めてだ。


白髪を短く刈り上げ、頭と同じく白い髭をたくわえた精悍な顔は老いを感じさせない。

鎧ではなく、軍の指揮官が着る上等な平服だった。

後ろには警護か副官か、腕が立ちそうな兵が剣を鞘に入れたまま手に立つ。


「んで、話とは何だ?」

「俺じゃない。こっちの若造だ」

「何だ?若造?時間が無い。手短に話せ」


ごくりと喉がなった。

今さら緊張するようなガラじゃないだろう。俺は。


「今回の危機的状況を多少なりとも緩和する策をお持ちしました」


これから話すのは、俺だから出来る事、俺にしか出来ない事だった。


「なるほどな。確かにひとりでも兵は欲しい。前線たる兵の上で死を恐れず矢を撃ち続けられるスケルトンは確かに有用だろう」


まず話したのは、倉庫のスケルトンの在庫、80体を兵として導入して欲しいという事だった。


「魔力に余裕がある人間なら6人もいれば、魔法使いでなくとも十分に使役出来ます」

「儂はあまりお前の商いには詳しく無い。お前が昔、暴れていた頃のスケルトンと比べて練度はどうなんだ?ビフロンスの?」


将軍でも知ってるか。

エイディアスの骸骨商会ビフロンス。

しかし、今の言われ方は明らかに俺の過去の経歴を指して言っているのだろう。


ビフロンスのデスナイト。

かつてスケルトンを率いて大戦に参加した、生ある死神の落とし子。

もはや昔の話だが。


「使役し、指揮する人間によります。俺なら並の冒険者くらいには使えますが」

「ふん。いいだろう。すぐにこっちに全てのスケルトンを寄越せ。この際、使える物は何でも使おう」


実際に試してみて、駄目なら新兵の盾代わりに使えば良い。

そういう事だろう。

全てのスケルトンを親父が武装させた上で納める事に決まった。


「ありがとうございます。話はこれだけじゃありません。俺を孤軍として軍に組み入れてください」


将軍よりも先に親父に突っ込まれた。


「お前は馬鹿か!?」

「名将ワグナー」「失礼な奴だな。将軍と呼べ」がおかしいと指摘されておりますが、直すのを考えております。

個人的には、よその会社の重役を紹介してくれって頼まれた先で「名物社長鈴木」「失礼な奴だな。鈴木社長と呼べ」的なやりとりのつもりだったのですが。ワグナー将軍と呼べ、とは言わせたくないのですよね。しばらく検討させて下さい。

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