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すみません、間に合いませんでした。

もう少々お待ちください。


 「今回の仕事について改めて説明するぞ」


 エステルの説明に耳を傾ける。

 ヴェルサス領領都にある場末の宿屋。

 その一室での作戦会議である。


 「つっても、王妃様を取り戻す。それだけだ。

 基本、俺とオオグは手出しをしない。

 必要な情報は事前に説明したとおりだ。

 無駄なことはするな。王妃様が騒ぐようなら多少力づくで連れてこい。

 どんなことが起きても自分達で対処するように。

 ただ、ヤバイと思ったらすぐに連絡入れろ」


 アルストレーナとレンは頷いて、宿を出ていく。

 その格好は夜なので迷彩になるよう黒い布で身を包んでいた。

 夜の街。

 屋根の上を猫のように身軽に走り抜ける。

 そして、エステルの与えてくれた情報にあったヴェルサス領領主の別邸へとやってきた。

 本来の目的用途は、愛人を囲うための邸といったところだろう。

 ここに王妃様が囚われているらしい。

 手信号で合図を送り、警備の少ない場所から潜入すると同時に、邸の中が騒がしくなった。

 警報音までなりだしてしまう。


 思わず、物陰に隠れた二人は顔を見合わせた。


 「バレた?」


 レンの呟きにアルストレーナが答える。


 「うーん。魔法センサーとか無かったと思うけど」


 「じゃ、私ら以外に偶然に泥棒が入ったとか?」


 「どのくらいの確率かはわからないけど、たぶんそんな感じじゃないかな?」


 と、その時だった。

 アルストレーナとレンは気配を感じて、頭上を見た。

 二人の頭上を、おそらくこの騒ぎを作ったであろう者達が邸から邸を取り囲む塀に飛びうつって行くところだった。

 それは、三人だった。

 一人はアルストレーナとレンの二人のように黒づくめで、女性を抱き抱えていた。

 もう一人も黒づくめで、一人目の後に続いていく。

 抱き抱えられている女性の容姿が一瞬だけ見えた。

 それは、事前にバジルから聞かされていた王妃様と酷似していた。

 と、塀に二人めが飛びうつった時だった。

 警備兵が放ったらしい攻撃魔法が直撃した。

 一人目は、それに気づいたが、少しだけ戸惑ったかと思うと夜の闇に消えていった。

 攻撃魔法が直撃した二人目がアルストレーナ達の前に落ちてきた。


 それを、レンが受け止める。

 

 「どういう状況?」


 アルストレーナがわかるわけはなかった。


 「あ、これヤバイよ」


 ただ冷静に落ちてきた人物の状態を確認して、アルストレーナは続けた。

 顔、というか頭にも黒い布が巻かれていて判別ができない。

 しかし、攻撃によって痛みに呻いている声からするに若い男性のようだ。

 

 「背中からお腹にかけて穴あいてる」


 予想外の緊急事態である。

 完全に予想外であり、そして想定外だった。

 とにかく、このままこうしているとアルストレーナとレンも見つかってしまう。

 落ちてきた人物を捨て置いて逃げることもできた。

 しかし、王妃の件がある。

 一人目がどこの誰なのか聞き出して、王妃を奪還しなければならない。

  

 そこからの二人の行動は早かった。

 アルストレーナが落ちてきた人物に魔法で止血をし、その間にレンがエステル達に連絡を入れる。

 落ちてきた人物がアルストレーナを見て、呻きながら小さく、本当に小さく呟いた。


 「とう、さー?」


 その呟きはアルストレーナにも聞こえていたが、痛みとショックによる幻覚でも見ていると思って、気にしなかった。

 止血が終わるとレンが落ちてきた人物を肩に担いでその場を後にした。

 血だまりだけが、その場に残されることとなった。


 来たときと同じように、屋根を走り抜ける。

 

 そして、宿屋へと戻ってきた。

 宿の外には連絡を受け取ったエステル達が待っていて、こっそりと怪我人を運び入れる。

 詳しい事情をアルストレーナ達に説明させながら、こう言うことになれているのかオオグが手当てをしていく。

 覆面をとって、その素顔をみたエステルが驚いような顔になった。

 と、そこに、バジルが母親を無事に取り戻したと勘違いして部屋に入ってきた。


 「え、なんで、どうしてーー」


 手当てされている痛みと失血によって意識のない、その人物を見てバジルが戸惑った声をあげた。


 「どうして、兄さんが?」



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