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次の更新は6/26(火)予定です。
肉の血抜きをして、その辺に生えていた野草で肉を包む。
そして石を積み上げて作った簡易釜の上に、オオグが用意した網を乗せ野草で包んだ肉を乗せた。
「この雑草は、一応香草なんだ。肉のクセを消してくれる。
んで、そこの木になってる果物を採ってきてもらえるか?」
ただのステーキでも良いが、この際だから蒸し焼きにしようとオオグが提案し、作ってくれることになった。
オオグは手際よく準備をし、あっという間に三人分の香草の蒸し焼きの準備をしてしまった。
焼き上がるのを待つあいだ、近くの木に果物が実をつけていたことに気づき、アルストレーナが軽くジャンプしてその木に登ると、三個分果物を採って降りてきた。
香草の食欲をそそる香りが漂いはじめる。
「出来上がったら、この柑橘類の果物の汁をかけるとさっぱりとした味わいになるんだ。残ったらデザートとして食べても良いしな」
「先生、なんか慣れてますね」
「趣味でキャンプとかよくするんだ。こうして狩った獲物は解体して売ったりもできる。そうしてちょっとした小遣い稼ぎもしてる」
「ボクは香草の蒸し焼きははじめてだから、楽しみ!」
「家だと出て来なかったのか?」
オオグが訊ねると、アルストレーナが家族のことを思い出しながら答えてくる。
「フライパンやでっかい鉄板で焼いたりしてました。
お母さんは肉を小さく切って卵や粉と一緒に揚げたりしてました」
「ドラゴンのカツレツかそれも美味しそうだな。
まだ肉あるし、作って見るか」
アルストレーナの話に刺激されたオオグは、近くに小さな魔方陣を展開させると、その中に腕を突っ込んだ。
かと思ったら、山を逆さにしたような、もしくは将軍などが戦場で装備している兜を逆さまにしたような鍋が出てきた。
たっぷりの油が注がれている。
「収納魔法ですか?」
物珍しそうに、アルストレーナが訊く。
「そう、覚えておくと便利だぞ。あとで術式教えてやるよ」
「ほんとですか?!」
「アルストレーナさんは、魔法の下地は出来てるんだよな?」
「はい!」
元気よくアルストレーナが返事をする横で、レンも軽く手を上げて、
「先生、私は?」
なんて聞いてきたので、
「一緒に教えてやるよ」
笑いながら、オオグはそう返した。
卵を含めて必要な材料を揃え終えると、他の肉を調理していく。
「それにしても、お前らも大変だな。エステルに目をつけられて」
「そうでもないですよ」
「エステル先生はボクを助けてくれた恩人ですから」
「あぁ、なんかかなりの騒ぎになったらしいな。
アルストレーナさんは、顔を蹴りつけられたんだろ?
見たところ痕は残ってなさそうだな」
「実は魔法でダメージを受けにくいようにしてたんです」
「へぇ。そうか。
それにしても、そんなに虐めは酷いのか?」
「オオグ先生は出張が多いですから、知らないんでしょうけど少なくとも私達一年生の中の虐めはそれなりに酷い方だと思います」
「レンは何されたんだ?」
「私は陰口が酷いです。ほら、亜人だから」
「ボクは、なんか勝手に嫉妬されて虐めの犯人に仕立てあげられてました」
「やっぱ、どこにもそう言うのはあるんだな」
オオグのどこか他人事のような呟きに、レンが呆れて返す。
「先生方ももう少し頑張ってなんとかしてほしいんですけど」
網の上に鍋をおいて、適度にまで熱した油の中にドラゴンのカツレツを泳がせながら、オオグは返した。
「こう言っちゃ身も蓋も、そしてやる気がないように感じるだろうが。
そう言ったバカは、普通の救いようのない俺みたいなバカより始末が悪い。んで、自滅することが多い」
「先生、いくら先生が文系で他の先生方よりも立場が低いからってなんでも自虐が過ぎますよ」
「あははは、基本自分が動きたいって思った時にしか動きたくねーもん、俺。だから、趣味は体育会系だけど仕事は大人しい文系なんさね」
そう言いながら苦笑する彼に、少し引っ掛かりを覚えてアルストレーナは訊いてみた。
「あの、ひょっとして先生も昔虐められっ子とかだったりしたんですか?」
カツの揚げ具合を確認しながら、オオグは逆に問い返す。
「なんで?」
「なんとなく?」
さらに疑問系で返ってきて、なんだかおかしくなってオオグは大笑いした。
「いや、そんなに笑うことですか?」
「悪い悪い。アルストレーナさんは、勘がいいんだな。
それ大事にしなよ」
「はぁ、わかりました」
そこで、ちょうど蒸し焼きが完成した。
少し冷まして、包んでいる香草をむいて果物の果汁をかけずにまずは一口、アルストレーナとレンはかぶりついた。
目を丸くして、果物の果汁をかけてまたかぶりつく。
昨日は木の実しか食べていなかったし、エステルの仕込みとはいえ変質者のような存在遭遇して気が張っていたこともあり心が休まらなかったのだが、それが一気に回復した。
美味しそうに肉にかぶりつく二人に、さらにドラゴンのカツレツを、べつの大きな葉っぱを皿がわりにして提供すると、これも夢中で食べてしまう。
遅れて、オオグも肉を堪能した。
「お母さんのとは全然味付けが違うのに、すっごくおいしい!」
「このカツ揚げもサクサクジューシー、うんまぁい。
先生、いいお嫁さんになるよ!
私が保証する」
「そりゃどーも」




