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 「禁止って言うか、魔法が使えないようこの庭園に特殊な結界を張ったんだ。でも、この事は俺しか知らない。

 魔法がつい強すぎて怪我をさせてしまったとか言わせない配慮だ」


 お知らせをしていない時点で、配慮ではない気がするが言わないでおく。

 

 「でも、これで身体強化系は使えない。

 日々、訓練を怠っていなければ全員で良い勝負が出来ると思う。

 それと、ほら、これも渡しておく。あいつらのことだから『うっかり忘れて』渡し忘れることがありそうだからな」


 そうして二人がそれぞれ受け取ったのは、リュックサックだった。

 中にはサバイバル用ナイフと塩、胡椒等の調味料、マッチ、そして空の水筒が入っている。

 それと、こういった時の訓練用の武器を選ばせられた。

 アルストレーナは剣、レンは弓を選ぶ。 


 「食料は各自が調達すること。

 もちろん、水もな。ここにいる魔物や植物を自分達で捕って自炊すること」


 「かなりガチなサバイバルじゃないですか」


 レンがあきれている。

 アルストレーナは、目を輝かせて質問をした。


 「ドラゴンはいますか?」


 「おー、いるぜ。ここもそうだけど他の訓練庭園も空間を弄ってるから、広さはちょっとした無人島並みになる。

 険しい山や谷なんかもあるから、奥に進めば進むほど強い魔物と出くわすことになる。

 その辺は地上と同じだ」


 「了解しました!」


 うきうきしているアルストレーナにエステルが逆に聞いた。


 「ドラゴン、好きなのか?」


 「はい! 食べると美味しいんですよ!

 大人だと肉が固いんで、出来るなら子供が良いですねぇ。尻尾のステーキが好きです。

 シチューに入れて煮込んでも美味しいですよ」


 「アルストレーナさんって、けっこうこう言うサバイバル、野営に慣れてたりする?」


 「慣れてる、かはわかりませんが。経験はあります。

 実家で父に仕込まれました」


 実家で野営を仕込むってのも、そんなに珍しくもないがアルストレーナの歳を考えると少々早い気もする。


 「ビックフットの皮とか、剥げますよ」


 「そりゃ頼もしい。んじゃ、この試験はそれなりに楽しめるはずだ。

 それと、潰しあいも兼ねてるから、惜しまず実力を出せよ二人とも」


 エステルの言葉に二人は頷いた。



 そして、試験が始まった。

 各班が庭園のあちこちに散らばる。

 まず、最初の十分間は攻撃してはいけないことになっている。

 最初の十分が過ぎて、合図の花火があがった。

 

 散らばった一年生達が一斉に動き出す。

 と、同時にあちこちで戸惑いが生まれた。

 索敵魔法が使えない、飛行魔法も使えない、もちろん攻撃魔法も回復魔法も解毒魔法も使えない状況となっていることに全員が気づき始めたのだ。

 予想外のことがおこり、とくに三組の面々はヒステリーを起こしたりパニックになるものもいた。

 しかし、意外と冷静な者もいたようで、それぞれ食料を探す班、アルストレーナを早々に潰そうとする班とすぐに班ごとに行動を開始したのだった。


 「よく、川の流れに沿って行動すると良いって言うけど。

 あれも危険なんだよ」


 「なんで?」


 「ボクの実体験なんだけど、お父さんにくっついて山に入った時に遭難しちゃったことがあって、家の近くに川があったから山の中の川を探し出してその流れにそっていけば家に着ける、もしくは人里に出られるって思って実行したんだけど、気づいたら谷の底にいたことがある。

 水が流れて行くのは下に向かってだから、結果的に谷に流れて行くみたい。

 で、動き回った分体力も消耗するから早く動けなくなるし。

 天気が悪かったりすると鉄砲水に巻き込まれたりするらしいよ。

 その時はお父さんがすぐ助けにきてくれたから、なんともなかったけど。

 そうやって体力を消耗して、鉄砲水に巻き込まれなくても衰弱死することもあるってきいた」


 「へぇ、でもアンのお父さん凄いな、よくわかったね谷底にいるって」


 「素人がよくする行動パターンだから、当たりをつけたみたいなことは言ってた」


 「アンのお父さんすげぇ」


 アルストレーナが父から聞いた話では、山道がある山なら一度頂上を目指す方が良いらしい。

 登るのはキツいが、山道というのは山頂に繋がっているので、道が見つけやすくなるらしい。


 「血は繋がってないんだけどね」


 「へ?」


 二人は、水を確保したあとドラゴンを求めて山のなかを歩いていた。


 「ほんとのお父さんは、ボクが生まれる前に馬車に轢かれて死んじゃったんだ。今のお父さんは、お母さんの再婚相手。

 ほんとのお父さんとも仲が良くて、その縁でお母さんと一緒になったみたい」


 「そうなんだ」


 「うん」


 「複雑な家庭環境だったりする?」


 「うーん、そうでも無いかな?

 普通に一緒に狩りしてたし、ボクがイタズラすると拳骨が飛んできたし。

 その辺は普通だと思うけど」


 「そっか」


 「服を脱ぎ散らかしてたら、怒られたよ」


 「うん、普通だ」


 「教えてもらったときも、別にとくに何も思わなかったし」


 「そっか。何て言うかほんとの子供じゃないから意地悪されるんだー、とか理不尽に怒られるんだーとか思わなかった?」


 「比較する他の家族がいなかったからなぁ、とくにそう言うことは考えなかったと思う。

 すごく怒られたのは、お父さんが捕ってきた、猿の魔物を解体して頭を放置してたんだけど、それを台所に持ち込んでテーブルに置いたんだ。お母さんを驚かせようと思ってね。

 そしたら、予想以上にお母さんが驚いて、気絶しちゃって、その時は罰として物置に一日閉じ込められた」


 台所に入ったら魔物の生首が不意打ちでお出迎えは、見慣れてても驚くだろう。


 「そりゃ、また。

 と言うか、アンってけっこうお転婆だよね」


 「そうかな?」


 言いながら、気配に気づいたアルストレーナが手でレンにだけわかるように信号を送る。

 それにレンが応えて、迎撃の準備に入った。

 三組か、他のクラスの生徒かはまだわからない。

 しかし、どちらにせよドラゴン狩りの前の準備体操にはちょうどよかった。



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