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 それから更に数日後。

 全生徒にお触れが出た。


 「クラス変えのお知らせだ」


 「クラス変えのお知らせだね」


 下界ではかなり上等な紙に、とても綺麗な字がプリントされたそのお知らせをアルストレーナとレンは見る。


 「学年上がるときに、成績とか取ってる授業とか色々加味してバランスよくなるように調整するとは聞いたことあるけど」


 レンはお知らせの紙を読みながら呟いた。

 

 「この中途半端な時期にやるのって、やっぱりこの前の騒動が関係あるのかな?」


 アルストレーナの言葉に、レンが『たぶん』と返した。

 そして、続ける。


 「でも」


 「うん」


 「この試験って何するんだろ?」


 お知らせの紙には、今のところ専攻科目が決まっていない生徒限定で、特別なテストをすると書いてあった。


 「さぁ?」


 アルストレーナに聞かれてもわかるわけはない。

 ペーパーテストなら事前に勉強できるが、テスト内容が明らかになっていないとそれも出来ないわけで。

 レンは気楽に言う。


 「とにかく、明日から学校も再開するし、そしたら詳しい説明もあるかな?」


 「だと良いけど」



 そして翌日。

 レンの予想通り、全学年の全教室の朝のホームルームの時間にてテストの内容が説明された。

 基本は全員強制参加であること。

 しかし、専攻科目がある場合、つまり将来の目標や卒業後のビジョンがしっかりしているものは除外されることが説明された。

 更に、このテストにおいて優秀な成績を修めた者は、特別クラスへとクラス分けをされると言うことだった。

 この学校で特に優秀であり、才能がある者として将来が確約される、いわば特別扱いのクラスへと入るのである。


 「そう言うの無いって話だったのに」


 実力主義を謳うなら、生徒の選別はした方が良いのだろう。

 アルストレーナが聞いた噂によると、前からそう言った話は出ていたらしいがずっと却下され続けていたとか。

 やはり教師のなかにも、そして生徒にもある種の選民思想を持つものがいるらしく、今回はその主張を聞いた形になる。

 ただ、どう言ったやり取りがあったのかは、一生徒であるアルストレーナにはわからない。

 さて、そのテストの方法だが。


 「早い話が、何事にも対処できて、どんな事態でも難なくこなすことができるってのが優秀な生徒の条件ってことになった。

 だから、サバイバルゲームね」


 帰宅後。

 何故か、アルストレーナとレンの部屋を訪れたエステルが、手土産のとても美味しい茶葉を使って自分でお茶を入れて飲みながら説明した。


 「鯖が威張るゲームですか」


 「一部の人しかわからない、返しをありがとう。レンキリエさん」


 「レルンフォルトです、先生」


 「そうそう、レルンフォルトさん」


 「でも、それと先生がボク達の部屋にいるのと何か関係があるんですか?」


 アルストレーナの当然すぎる疑問に、エステルは国も傾けるんじゃないかという笑みを浮かべると、説明してきた。


 「いやぁ、君たちには話しておこうと思ってね。

 このテスト、そもそもが釣りなんだ」


 「釣り?」

 

 「何を釣るんですか?」


 「自意識過剰なバカ生徒達」


 「はい?」


 「で、アルストレーナさんにはその餌になってもらおうかなって」


 「アンを、餌にするんですか?」


 「そ、今のところ餌に適任なんだよ、彼女。

 で、実力があるって自惚れまくってるバカ共をバカにするには丁度いいし」


 話を聞きながら、アルストレーナは思った。

 エステルは、人格、あるいは性格にかなりの問題があると。


 「ボクは美味しくないと思いますけど」


 「まぁまぁ、色々説明させておくれよ、生徒諸君」


 この部屋に生徒は二人しかいない。

 

 「上級生で進路が明確な生徒はともかく、それ以外の一部の生徒、それも選民思想や選民意識が強い生徒からすると、アルストレーナさんの存在は気にくわないものなんだ」


 「あ、それについてはこの前の騒動が起きる、さらに前にレンから聞きました。

 なんか、皆に合わせよう、早く学校に慣れようとしてたのが裏目に出たって話ですよね?」


 「そうそう。でも推薦人の存在でそれがやっかみに繋がったわけだ。

 で、さらにそれがイジメに繋がった。

 勉強は出来ないし、実力もないのに、狡いっていうアレな。

 実際は真逆なのにな。

 ま、そんな思い込み、それがこの前の騒動になったんだけど、俺がアルストレーナさんを助けたことで、教師の一部にもそれが面白くない者達がいて、俺に喧嘩を吹っ掛けてきたわけだ。

 『エステル先生が特別視するほどの生徒ではない。もし特別視するならそれ相応の実力を示してもらわないと、納得できない』ってな感じでさ。

 基本、この学校専制政治、独裁政治っぽい部分があるから」


 なら見直せば良いのに、とアルストレーナとレンは思ったが、口には出さなかった。


 「教師連中にも野心があって、俺を蹴落とそうとしてるわけだ。

 でも、実力でも財力でも誰も俺には敵わないからな。

 だから、責任を取らせる形で追い出したいんだろうな。

 だからこそのサバイバルゲームってわけだ。

 体育の時に野外活動の訓練があるだろ?

 あんな感じで数日生徒同士で班を組んで行動してもらう。冒険者科目を取ってると、よくある訓練だ。

 と言っても、その班分けの時点で色々仕掛けるんだけどな」


 そうして、エステルはまたニンマリ笑った。


 「つまり、過激な選民意識、選民思想を持ってるある種の問題児達を炙りだそうってことですか?」


 「それもあるけど、疑いが強いやつらの確実な証拠が欲しい。

 アルストレーナさんのことを舐めきってる連中は、絶対に行動に出てくるだろうから」


 と、今度はレンが口を開いた。


 「で、それを私に聞かせるメリットは?」


 「悪く言えば巻き込むため、よく言えばアルストレーナさんと一緒に協力してほしい」


 「え、ってことは」


 レンの顔が気色ばんだ。


 「確実に一緒の班になれるように、仕込みはしておくから」


 一方、エステルはとても悪い笑顔だった。

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