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19

 「はい、現行犯な」


 何処からともなく現れたエステルに教室中がどよめいた。


 「な、なんで俺を拘束するんだ!」


 「お前らもなぁ。動くなよ」


 優秀な生徒と言われ、今までアルストレーナに土下座を強要し蹴る等の暴行を加えていた少年を尻に敷きつつ、エステルはその少年に便乗して同じように暴行を加えていた他の生徒の動きを魔法で拘束した。


 「こっちのことは知ってるか?

 捜査委員会担当の教師、エステルだ。

 お前ら、集団暴行で退学な、はい決定」


 さらにどよめきが大きくなる。


 「なにを、言って」


 「いや、この学校私闘とかイジメとか原則禁止なわけよ。

 生徒同士の喧嘩もな。ルールとマナーを守って気持ちよく過ごすのが社会の常識だ。

 本来なら指導したりと段階を踏むんだが、今回のは俺の独断でお前らを即刻退学にすることにした」


 「ふざけんな! 殺すぞ!」


 少年の叫びを皮切りに、今まで男女問わずこのクラスのイジメの主犯各だった者達が、それもそこそこの実力を持っていてそれなりに己の能力に自信もある者達がエステルへと攻撃を仕掛ける。

 それは魔法であったり物理的であったりと様々だ。

 それを薄く、しかし美しく微笑んでエステルは返り討ちにしてしまった。

 その光景をアルストレーナは、見ていた。

 他の生徒が廊下へ避難するなか、彼女はその場から動くことなく成り行きを見ている。


 「別にふざけてねーよ?

 ほら、どうした殺してみろよ。

 お前は、俺を殺すだけの実力があると自負してんだろ?

 ほらほら、やってみろよ」


 少年は変わらず尻に敷かれたまま身動きが取れないでいる。

 返り討ちにあった者達も、立ち上がれないように足を怪我させられていた。


 「出来ないだろ?

 お前には出来ない。そんな実力がなくて弱いから。

 少なくともお前は、俺にこうされるくらい、尻に敷かれて動けなくなる程度には弱い。

 なぁ、そんな弱いやつがどうやって俺を殺すんだ?」


 ニヤニヤと美女は、こんどは意地の悪い笑みを浮かべる。


 「ほらほら、やってみろよ」


 「こんなことしてタダで済むと」


 「責任者が覚悟もなく責任者をやってると思うなよ、ガキ」


 途端に、空気が重くなった。

 

 「それと、お前は今、俺を殺すって言ったよな?

 これは脅迫行為だ、殺害予告だ、そこで転がってるやつも俺を攻撃してきた。

 これで殺人未遂だな。この一連のことを学校外の捜査関係者に言ったらどうなるんだろうな?

 あ、そうだ、そこにいる銀髪のーーええとアルスさん?」


 いきなり名指しされて条件反射でアルストレーナは返答した。


 「アルストレーナです」


 「そうそう、アルストレーナさん。彼女への暴行罪と誹謗中傷もちゃんと罪になるから。

 そっちで泣き真似してる今回の主犯さんも、今後が楽しみだ」


 「な、なん、で、そんなこと言うんですか!

 私はーー!」


 「イジメの被害者? 違うなお前は加害者だよ。

 その動かぬ証拠をこっちは持ってる。

 あ、そうだ! お前さんがいま自分のしてきたことを告白するんだったら退学については考えてやってもいい」


 「そんな、してないことは言えません!

 嘘でもいえません!」


 「彼女がそんなことするわけないだろ!」


 ギャーギャー喚く二人に、エステルは呆れたと言わんばかりに、立ち上がると少年を蹴り付けた。

 顔面にも重たい蹴りを加える。

 どうやら蹴りどころが悪く目が潰れてしまったようで、のたうちまわってしまう。

 それを冷めた目で見た後、嘘泣き主犯各の少女へエステルは近づいていく。

 思わず怯えて、少女は体を震わせる。

 

 「そうかそうか、嘘でも言えないか。だよな、してないことは認められないよな?」


 ニコニコとエステルは言ったかと思うと、少女の頭を掴んで床へと押さえつけた。


 「でも、お前はしたんだよ」


 「いたっ、ちが、してない!」


 「うん、してないんだよな? でも、したんだよ」


 もう一度同じことを言って、エステルは少女の顔面を蹴り付けた。

 そして、何度か蹴りも入れる。

 

 「これで、お前はアルストレーナさんと同じになったな。

 彼女も認めてなかった。そんな彼女にここにいる連中は集団暴行をしたわけだ。

 俺への脅迫と殺人未遂は許す気ないけど、アルストレーナさんへの誹謗中傷と悪意ある噂を流したことくらい認めた方が、まだ印象が良いと思うけどな」


 そこまで言ったとき、バタバタと生徒指導担当の教師達がやってきた。

 教室の光景を見て、アルストレーナを指導した者がエステルに突っかかっていく。


 「エステル先生、何をやっているんですか!」


 「何って教育的指導兼見せしめ処刑」


 「見せしめって、こんなことをして、どうなるか分かっているんですか?!」


 そこで、エステルは笑顔を絶やさず紙を取り出すと、それを突っかかってきた教師へ見せた。


 「先生こそ、生徒とこんなことして無事で済むと思ってたんですか?

 去年から泣く泣くこの学校を去っていく女子生徒が多くて、保護者からも抗議が入ってたって言うのに、どういうわけかその抗議がこっちまで来なくて握りつぶされてたことがわかったんですよね~。

 と言うわけで、署名を集めた結果先生のブツを切り落とすことが決定してたんですけど、話、行ってませんか?

 それとこの学校が実力主義ってのはご存じですよね?

 俺は現在この学校にいる誰よりも強い。どんな経歴を持つ先生方より強い。

 だから、いざと言う時こうして悪いことをした生徒達をシメることだって出来るし、他の先生方の進退に関する決定権だって持ってる」


 エステルと突っかかってきた教師の間に険悪な空気が流れる。

 直感的に嫌な予感がして、アルストレーナも廊下へと避難する。

 すると、アルストレーナのことを気にしていた生徒数人が、殴られ頬を腫らした彼女のもとにやってくると声をかけてきた。

 と、その時だった。

 鈍い、しかし壁が壊されるような音が聞こえて、つい気になってしまったアルストレーナは教室の出入り口へ戻り、中を確認した。


 そこには天井に頭を突っ込ませて、体をブランコのように揺らしている生徒指導の教師の姿があった。

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