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 とうとう、授業にも差し障りが出てくるようになってしまった。

 度重なる誰かからの嫌がらせにより、寮で大人しくするように、つまりは謹慎するように言われたのだ。

 

 「たぶん、家に帰されなかったのは推薦人のこともあると思う」


 同室の生徒である、レンに言われアルストレーナは首を傾げた。


 「アンの推薦人ってあの賢者トゥオーフ様でしょ?

 やっぱりその辺は学校側も気にしてるんじゃないかなと思う」


 レンはアルストレーナのことを愛称で呼ぶくらいには、親しくなっていた。

 学年はアルストレーナと同じ一年生だが、年は彼女よりも上の十六歳のお姉さんである。クラスと時間割りの都合で校内で一緒に行動することはないが、それなりに仲がよい二人である。

 鬼人族(オーク)と人間のハーフである。

 角もちゃんとあるらしいが、かなり小さいので見事な濡羽色の髪に隠れてしまっているらしい。

 この学校、入学は十歳から受け付けているが、それ以外に特に制限は無かったりする。

 他のクラス、学年、あるいは寮にいる生徒の年齢の幅はかなり広い。

 長寿であるエルフも、千歳を越える生徒がいるし、アルストレーナやレンと同じ人間族でも八十歳の生徒がいたりする。


 「それに、最近は落ち着いていたんだけどまた流行りだしたんじゃ無いかなって思うんだよね」


 「イジメが?」


 「イジメが」


 「嫌な流行だね」


 「そうだね。

 で、学校側も慎重に調べてるんじゃないかな?」


 「でもおかしな話だよね」


 「何が?」


 「ボク、何も悪いことしてないもん。

 やってません、違いますってちゃんと伝えたのになんで悪いことしてないボクが謹慎しなくちゃいけないんだろ?

 だってこう言うのって、言い出した方にも責任があると思うんだけど」


 「あー、そりゃ仕方ないよ」


 「なにが仕方ないの?」


 「こう言うことって、言い出した方の言い分を信じるようになってるから。情報が多い方を信じるって言えば良いのかな。

 タチが悪いのは、噂を流しているところかな。これってさ、証拠が実質残らないし」


 「?」


 「あ、そっかアンはこういうこと経験してこなかったんだよね。

 えっと、噂話って結構厄介なんだよ。

 噂を流す側は、自分が流してると思われないように、『なんか、こういう風に言われてるらしい』とか『知り合いの知り合いから聞いたんだけど』とかそんな風に居もしない他人を作り上げてその人が言ってましたーって言えば、自分が悪い噂を流してる首謀者だってわからないからね」


 「なるほど。

 うーん、なんか想像していたイジメと違うなぁ」


 「どんなイジメを想像してたの?」


 「たとえば校舎裏に呼び出されて、ジャンプしろとか言われたり殴られたり、トイレの個室に入ったらバケツで水をぶっかけられたり、あとは無視されたり教科書やノートを破かれたり、机や私物にイタズラされたりとか?」


 「山奥に住んでたわりに、妙に生々しいイジメを知ってるんだね」


 「お師匠様が時々ご褒美に本を買ってくれたんだけど、その中にそんな内容のやつが入ってた」


 「トゥオーフ様もチョイスがあれだけど、アンもへこたれないよねぇ」


 何しろ、外出が基本禁止だというのに早速幻覚魔法を使って自分の分身を作り上げて、走り込みに行ってしまったのだ。

 もちろん、姿を消してだが。

 ついさっきまで、流した汗を寮母の許可を得て浴場のシャワーで流してきたところだ。

 寮母には部屋で筋トレをしていたと宣ったらしい。

 

 「普通、精神的にかなり来ると思うんだけど」


 「勉強できないのはそれなりに堪えてるよ。

 世界史も好きだなぁ。お師匠様の授業の歴史は、神話時代中心だったし」


 「勉強出来ないのが堪えるって、アンも変わってるよねぇ」


 「そうかな? まぁ、半分強制だったけど学校って勉強するところでしょ?

 だから、本来なら出来ることが出来なくなるって残念なことだと思うけど」


 「あぁ、その素直さが羨ましい。

 どうか、このイジメでグレてくれるなよ」


 「そう思うなら、もう少し助言が欲しいよ。

 レンはボクよりも六歳もお姉さんなんだし。人生の先輩として色々教えてほしい」


 「おや、イジメから守ってほしいとか助けてほしいとかじゃなくて、助言が欲しいと来たか。

 アンは強いね」


 「?」


 「って言っても教えられるほど、私も物を知っているわけじゃないしなぁ」


 「・・・・・・でも、知らないボクより知ってるじゃん」


 「いや、まぁ、そうかもしれないけど」


 やがて、アルストレーナの純粋な瞳に負けてレンは、話始めた。




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