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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
帰還期

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発掘と再会

 不時着したあの時とは違ってきっちりと飛翔艇をコントロールしての着陸。誤差はほとんどなく、脱出艇を埋めたポイントのすぐ脇に止められた。


「座標的にはここのはずなんだが……さすが砂漠」


 周りを見渡しても見覚えのない地形に変わっていた。地中に向けて探知波を放ち、ビーコンを探る。

 設置して7年経つが、地中というのは土の魔力が絶えずあるということなので、魔力源には事欠かない。

 ただ他人に発見されると面倒なので、微弱な信号しか発しないように設定していた。


「これか……よし」


 目的のモノを見つけた俺は、まずは風のドームを作って、土魔法を使って掘り起こしていく。砂は崩れやすいので、固めながらの作業となって時間は掛かる。

 とはいえ焦ってモノを壊しても意味がないので、根気よくやるしかなかった。


「……ん?」


 すると索敵用の魔力感知に引っかかる物があった。脳内ライブラリからどういった魔力かを検索してみると、魔道具のバイクであることがわかる。しかも魔力機関の波長が過去のライブラリに一致するものがあった。


「俺が残していったバイク?」


 ベルゴに没収されていたバイクは、確か回収していたとは思うが、スタルク襲撃後にどうなったかまでは分からない。

 結局、下層による下剋上はスタルクへの襲撃に上層部が介入した事で俺は現場から離れる事になった。

 そのまま中央へ行くまで、情報もなかったのでどう結末を迎えたのか分からない。


「俺のバイクに乗る奴……まあ、味方もいないし敵か」


 俺は帝国で指名手配犯。この辺境のしかも情報封鎖されてるような下層にその事実を知る者はいないだろうが、警戒はしておくしかない。

 風のドームを破るには、かなりの魔道具が必要なので上層部のエリートでなければ問題ないはずだ。

 俺は掘り起こし作業を進めながら、バイクが接近してくるのを待った。




「ユーゴの兄貴ッスか!?」


 風のドームに触れるほど近づいてきたバイクから、俺を呼ぶ声が聞こえてきた。その声にはあまり聞き覚えがない……気がする。


「誰だ?」

「俺ッス、モルンッスよ」


 モルン、モルン……誰だっけ?


「兄貴に鍛えてもらったスタルクの戦闘員ッスよ」

「ああ、下っ端ーずの……」

「そんな覚え方ないッスよ」


 がっかりした雰囲気の呟きが聞こえた。

 俺は風のドームに少し穴を開けて、モルンを招き入れる。下っ端ーずならば多少武装していたとしても、俺が負ける要素はないし大丈夫だろう。


「で、何しに来たんだ?」

「そ、そりゃ、空から誰かがやってきたなら、確認くらいするだろ……でしょう?」

「別に敬語とかいらないから。前に落ちてきた時は、誰も確認に来なかったし」


 不時着した時の方が派手に落下して、音とかも酷かった。それなのに確認にくる者などいなかったのだ。


「それは兄貴が作った畑にいたから」


 俺が不時着してアイネが亡くなるまでの5年間、野菜類を栽培するのに近くにあった閉山した鉱脈の施設を利用して畑にしていた。

 俺が街に出る時に魔力供給を絶って、風化していくのに任せていたはずだが、それをまた復活させたということか。


「魔力はどうしたんだ?」

「兄貴が置いていった魔道具で、供給パネルを作ってさ……まあ、やったのは俺じゃねぇけど」


 最後の襲撃でスタルクが拠点にしていた坑道は潰れていた。その為に新たな拠点の一つとして、俺が畑にしていた旧鉱山も利用しているらしい。


「まあ、それは勝手にやっててくれたらいいよ。俺はすぐ立つしな」

「え、皆に会ってくれないんスか!?」

「俺は長居できない状況でな」


 帝国内の情報などまともに届かない下層。そこから更に離れた廃坑で作業しているモルンは、俺が指名手配犯として追われているなど知る由もない。

 かいつまんで逃亡中だと伝えた。


「さすが兄貴、半端ねーっ」

「そんな訳で忘れ物を掘り出したら去るから」

「それ、どれくらい掛かるんです?」

「半日くらいで何とかしたい」


 俺がウルバーン出身と記録されているので、ここに来る事を帝国軍が予測している可能性はある。できるだけ早く離れたかった。


「俺より兄貴に会いたがってる奴らがいるんで、連れてきますから待っててください」

「帝国軍が来たら面倒だから保証はしないぞ」


 俺の言葉を聞いたかどうか、モルンはバイクで走り出していた。




「思っていたより深い」


 モルンが去った後も砂を掘り返していたが、記憶より砂が深い。この辺りに厚く砂が盛られていたようだ。

 下手に掘るとサラサラ流れ込んで作業が台無しになるので、固めながらというのが手間。中の基盤はある程度丈夫だろうし、いっそ吹き飛ばすかとも考えたが、それでデータが失われたら危険を冒してウルバーンに来た意味がない。


 焦る気持ちをなだめながら、何とか脱出艇の外壁が見えるところまできた。ハッチを開けて中へと入ると、流石に7年程度では砂が入り込むほどの劣化はしていない。

 コックピットへと移動して、操縦桿の下辺りを開けて中身を確認する。


 魔力を流して記憶回路を探し、その部分を起動。引っこ抜けるデータを脳裏のストレージへと写す。基盤ごと抜いてもいいのだが、それよりも情報を引っ張り出す方が早いと判断した。

 変に力が掛かって壊れたとか嫌だしな。

 中身の分析はまた密航船の方に戻って、情報端末などと合わせてやった方が早いので、俺の目的は完了だ。


 ハッチを潜って地上に戻り、砂を固定していた魔力を抜くと、サラサラと砂が流れ込んで痕跡を消していく。


「もう来ることはないと思うけど」


 アイネとまた来ることもあるかもな。




「兄貴ーっ」

「兄ちゃん!」


 その作業を待っていた訳ではないだろうが、俺が風のドームを解除したところへ声が届いた。3台のバイクが向かってきていた。

 俺は飛翔艇を起動しつつ、到着を待つことにする。


「兄ちゃん」

「ユーゴ兄」

「おう、坊主」


 モルンが連れてきたのは、情報屋のおっさんといつぞや開拓船を見に行った時にトラックに潜り込んでいた兄妹だった。


「話してぇ事は色々あるが、あの時の約束を果たして貰おうか」

「約束をした覚えはないんだけど」


 惑星が出る時に子供達を連れて行ってくれと頼まれたのは記憶にあった。


「本人に意志があれば連れてくって言っただろうがよ。コイツラはお前について行きてーんだよ」

「おう、兄ちゃん。連れてってくれ」

「お願いします、ユーゴ兄」

「お前が指名手配を受けてるのも知ってるがよ、それ以上にここもきな臭くなってんだ。詳しくはコイツラから聞け」


 元気一杯だった兄は、そのまま年を重ねたやんちゃ坊主で、兄の後をついて回っていた妹は、少し落ち着いた雰囲気になっていた。


「押し問答している時間もないか……分かった、乗れ」


 俺は子供達を飛翔艇へと促す。するとモルンが近づいてきて、背中のリュックを渡してきた。


「兄貴の畑を受け継いで作った作物です。持ってってくだせぇ」


 食い扶持が増えたので有り難く受け取る。野菜類の有無は食のレパートリーが増えるしな。素材カートリッジから作る料理は、味や見た目も申し分ないできではあるのだが、地球の記憶がある俺にはどこか味気ない。

 やはり自分の手を使って料理したものというのは美味しく感じられる。


 俺は飛翔艇へと乗り込み、子供達にシートベルトを締めるように促すと、ウルバーン星を離陸する。

 レーダーで軍が動いていないのを確認しつつ密航船へと向かった。

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