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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
帰還期

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宇宙の旅路

 俺はユーゴ・タマイ。何とか17歳を迎えたが、帝国では指名手配される様な極悪人となっている。

 先の帝国本星奪還戦で、一位の功績を上げたはずだが、それが首脳陣の反感と言うか恐れを買ったというのが帝国から追われる原因だと考えている。


 辺境の秘密牢獄へと囚われ、連日拷問を受けながらも反撃の機会を探し、何とか脱出に成功した。

 その際に宇宙船1隻を拝借したが、先の功績を考えたら安いものだと思う。


 俺の目的はただ1つ。最愛の女性を蘇らせる事だ。彼女と共に過ごした10年間は、濃密で忘れられるものではない。

 彼女の死後、蘇らせるために行動を開始したが、当時はまだ10歳。魔術師としてそれなりの実力を持ってはいたが、何かをやろうとしても外見で判断されがちで、仕方なく領主の庇護下に入り、学校で齢を重ねつつ技術を磨く事にした。


 その後、軍学校へと進んだ頃、帝国は隣国に侵攻されて、首都まで奪われる始末。その奪還作戦に従事した結果、指名手配と宇宙船を得たという訳だ。

 追々帝国には代償を払ってもらうとして、まずは彼女を優先だ。

 そんな俺は俺と彼女が生まれた地への旅路についた。




「牢獄は帝国の辺境に近い星だったか。共和圏との国境とはほぼ逆の位置だな」


 帝国を横断していく必要がある。この船はステルス性能がそれなりに高いので、観測者へそれなりに近づかない限り見つからないはずだった。

 しかし、空間転移は別で、ゲートを開く際にどうしても時空震というか、空間に歪みが生じる事で痕跡が残る。

 水面に石を投げて波紋ができる様な感じだな。

 この波は光速と同等の速度で、星系内くらいなら十分に観測可能。不審船を見つけたら追手が掛かる危険がある。


 この船は帝国船籍を持っているが、正規に登録されない類の船なので、偽装コードを幾つか持っていた。

 伯爵が個人所有の高速船というのが一番使われている。この伯爵が実在しているのかは不明だな。少なくとも領地持ちではない。

 星系間航行はある程度のフライトプランの提出が必要なので、それを照会する前に移動しなければならない。

 まあ、居住者のいないほぼ管理されていない星系を渡って行くのが基本だ。


「本星近郊は有人星系が多くて、民間船の航行も多いので避けたいが、そうなると移動距離が増えるんだよな」


 何十光年の距離を移動できる空間転移だが、もっと長距離を飛ぶことはできる。しかし、距離が遠くなれば僅かな誤差で見当違いの場所に飛ばされる事になり、宇宙の大半は恒星から遠い空間で占められているので、航行に必要な光魔力が補充できない場所に出てしまうと、宇宙船は空飛ぶ棺桶に早変わりだ。

 なので確実に移動できる範囲の星系を渡っての移動が基本となる。


 帝国内の星図は揃っているので、無人星系を渡っていく事は可能だ。ただしそうなると時間がかかり、食料などの心配も出てくる。

 しかし、帝国内では指名手配犯の俺が買い物などできるはずもなく、手持ちの食料が尽きる前に国境を越えてしまいたい。


「指名手配犯だし、いっそ海賊でもやるかね」


 欲しいのは食料だけだし、不足しそうなら現地調達という手もなくはない。サバイバル実習で降りた惑星みたいなのがあれば、別に人を襲う必要もない。

 学校に通っていた6年を思えば、多少時間が掛かっても誤差みたいなものだろ。


 俺は帝国中央部を避けて、辺境を通りながら共和圏を目指すことにした。




 空間転移は魔力消費が大きいので、星系に跳んだら恒星から光の魔力を吸収する帆を張る。この船は何回か連続で跳べるだけの魔力タンクを備えているが、跳んだ先で更に跳ぶ必要が出てきた場合に対処できるように、できるだけ満タンの状態で空間転移を行いたい。

 なので星系にたどり着いたらしばらく休憩だ。


 星系内でも恒星に近い位置の方が早く魔力は溜まるが、跳躍時のポイントが恒星の重力に影響を受ける可能性がある。

 なので星系の中間軌道付近へと跳ぶのが普通だ。戦時中はジャマーの影響を受ける危険があるので、外縁部に出るしかない。

 ジャマーが展開されている中へ空間転移しようとすると、座標が逸れて想定しない場所に出るからな。星系内ならまだしも、何も無い空間に跳ばされる可能性が高い。そこから更に跳躍できればいいが、魔力切れを起こせば棺桶の出来上がりだ。


 俺が渡る星系は居住可能惑星がないか、あっても人が住んでない資源がないと思われる惑星しかない所だ。

 管理者がいる場合もあるかも知れないが、高速船を追いかける足はないだろう。

 転移を行った直後だと、跳んだ先が分かったりもするのだが、それらも専用の装置を積んである船が近くにいないと分からないので、基本的に追手がつくことはなかった。


 辺境を渡っていくと目に止まるのは、ウルバーン星系だ。あと何回か跳躍すれば行けない事もない。

 脱出艇からデータ基盤を抜き出せれば、研究所の座標なんかが手に入るんだが、脱出艇自体は砂漠に埋めてある。

 掘り出している間に領主連中から絡まれると厄介なんだが……。


 研究所のあった場所は曖昧な記憶しかない。現地で探すのはかなりの手間だろう。脱出艇のログデータがあれば、かなりの時短にはなるはず。


「あそこの船ではこの密航船に追いつくことはできないはずだしな」


 辺境の弱小貴族が治める星系なので、艦隊と呼べるほどの船もなかった。確か駆逐艦が数隻とかだった気がする。

 降りてくる船には対処できず、飛び立つ船だけを何とか捕捉、撃破するという方針を取っていた。


「降りるのは問題ないとして、飛び立てるか……だな」


 牢獄を脱出する際に使用した飛翔艇は、そのままこの密航船の降下艇として積んである。それなりの性能があるので、簡単には追ってこれないとは思うが、ここの領主の実力は見ないままに中央に行ったからな。

 そして帝国に指名手配されている身なので、見つかったら追われるのは必至。


 郊外の砂漠に用があるだけなので、街に近づかなければ大丈夫か。情報屋のおっさんやゲニスケフのその後とか気にはなるが、会ってる余裕はなさそうだ。


「さっと行って、さっと去ろう」


 俺は7年ぶりとなる不時着した惑星へ降りる事にした。




 まずは衛星軌道へと入り、ステルス性能を信じて惑星表面の情報を集める。結局、スタルクが狙われた一連の事件がどう決着したのかまでは聞かされていない。

 ただ上空から情報を拾った限りでは、都市部による下層の支配は変わっていないように思われた。通信が行われているのは都市中心部のみで、街の外へと広がるバラック群も健在だ。

 とはいえ中層と下層の人員が入れ替わる形の革命なら、外観は変わらないかもしれない。


 とりあえず栄えているのは都市部と採掘部のみというのは変わっていない様なので、不時着した砂漠への目は無いようだ。


「着陸して軌道上に戻るまでに追手が掛かるか……だな」


 飛翔艇の魔力は満タンにしてあるので、降りて再上昇までは補給せずに行える。問題は、埋めた脱出艇を掘り返すのにどれだけ時間が掛かるかだが、俺の魔力量次第か。

 やる気に満ちている状態なので、平時より力はだせる……かもしれない。

 魔法って精神論な所があるので、本人のやる気に影響される部分があるのだ。


「土の術式で掘り起こして、データ基盤の回収して脱出」


 軍学校で整備に関する資料を読んで、オールセンにも色々と聞いたが、脱出艇は共和圏の代物。ここを離れる前にそれなりにいじってはいたが、やはり知識がない時の記憶なのであまりあてにならない。


「ま、元々計画性のない状況だ。行き当たりばったり……いや、臨機応変に行くしかないな」

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