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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
動乱期

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帝国の軍議

 先の衛星要塞攻略時に、ルーデリッヒ伯爵へと死んだふりがバレている可能性を示唆した結果、要塞砲による不意打ちを防げたという事が、過大に評価されてしまった様に思う。

 本来なら軍人でもない俺が司令部の軍議に呼ばれるなどありえない。何事も経験だとルーデリッヒ伯爵に連れてこられたが、公爵にまで伝わっているとは思っていなかった。


「呪歌の仕組みを即座に看破し、要塞砲による痛撃を回避してみせた若き智謀。この局面をどう捉えているか、聞かせてくれまいか」


 公爵からの圧が凄い。このまま戦局が進めば俺の功績やルーデリッヒ伯爵の功績が大きすぎるという事だろうか。

 公爵にも何か手柄を上げさせろと。

 しかし、盤面は戦力をぶつけ合っての消耗戦に向かっている。奇策でどうこうできる段階じゃないと思うのだが……。


 本星を背に布陣した王国軍と、衛星要塞を背に布陣した帝国軍。本星の直径範囲内に動きを制限された中での正面戦闘だ。兵を隠す小惑星群などもなく、艦砲は戦艦の防御結界を打ち破れない。

 魔導騎士による防御結界内での戦闘に限られた戦場。後は魔導騎士の配置くらいしか、思案できる部分がなく、個々のパイロットの技量などは分析官などの情報で行われるだろう。


 であれば、俺に期待されている事は何だ?

 盤面に乗っていない情報……。


「さ、先の国境星系での防衛時に、要塞砲による攻撃が効かなかったという話を聞いたのですが、それは本当だったのでしょうか?」


 国境星系を攻めた手は、帝国本星を襲ったのと同じ、呪歌による蹂躙ではあっただろう。しかし、呪歌の効果圏内まで近づく必要があった。

 映像に声を紛れ込ませて呪歌となす技術は俺の知識にないものだったが、それを成すためにもある程度の距離まで近づく必要があったはず。

 なので星系外縁部から居住惑星へと進むまでに、要塞砲による砲撃を耐える必要があった。


 しかし、防御結界ではなく、直撃がすり抜ける様に当たらなかったという話。呪歌以外にも王国軍には奥の手が隠されている可能性があった。


「ふむ、情報分析官」

「はっ、確かに国境星系からの通信によると、要塞砲による砲撃が6回。いずれも直撃コースだったにもかかわらず、戦果が上げられなかったとあります」

「その映像などは、ありますでしょうか?」

「こちらに」


 分析官がディスプレイ上に映像を再生した。まだ遠距離なので解像度は高くないが、突出した艦隊に対して、要塞砲による光の束が撃ち込まれている様子が映っている。

 戦闘の戦艦2隻をまとめて光の奔流が包みこんでいくが、防御結界が作動した際の反応光も見えず、光の束が通り過ぎた後も無傷でその場に残っていた。


「幻影術式じゃないのか?」

「幻影の術式は光魔法に属するので、同じ光魔法の要塞砲を受ければ、映像が乱れ掻き消えます。しかし、映像によるとその様な乱れもなく、姿がそのまま残っているのです」


 分析官により解析された情報で、見せかけの映像ではない事が確認されていた。


「重力解析でもその場に実体がある事か確認されており、そこに存在する艦であるのは確実です」

「し、しかし、防御結界の反応もなく、すり抜けるなど……」


 今までの常識が否定されて首脳部にも混乱が見られた。攻撃が通じない相手となるとどうすれば良いのか。ザワザワと武官達が可能性を話し合うが、公式に発言しようという者は現れない。

 しかし、俺には1つ心当たりがあった。次元回避ディメンションシフト、3次元からより高次へと物体を引き上げる事で回避するという方法。本当に高次へと存在を引き上げられたら、回避どころか無傷で耐える事もできるのだが、そこまで完全に4次へは移行できないらしく、3.5次元といったところらしい。


 前世に海賊をしていたという男が、幽霊船の船長と噂されていたという自慢話をしていた。その手段がこの次元回避だったらしい。

 王国には亡国の姫だけでなく、幽霊船長も逃げ延びていたのだろうか。


 次元回避の弱点は、魔力消費だ。空間転移に比べても消費する魔力量が多く、長くは続かない。ただ致命的な攻撃を回避できるというのは、それだけでかなりの脅威だ。

 対処方法としては、継続的な攻撃を行う事になるだろう。それはそれで簡単ではないのだが、高次に逃げている間は、相手からも攻撃できないはず。


「考えられるのは高次回避かと思われます。対処法としては、継続的な攻撃。一撃性よりも、継続的にダメージを与える術式を利用するのが良いでしょう」

「ふむ」

「それに魔力消費の多い回避方法なので、何度も使えるものではありません。知っていれば、それほど恐れる事でもありません」


 武官達に安堵の雰囲気が広がっていく。


「これは艦単位ではなく、魔導騎士でも一度は可能と考えた方が良いです。相手の攻撃を確実に躱せるというのが、どれだけ優位かは皆様には良く分かると思います」

「もちろんだ。姑息な手段であろうと種が分かっていればどうということもない」


 少し驚きを見せた武官達は、力強く頷いた。




 軍議が解散となり、俺は公爵の乗る旗艦に残される事になった。軍全体を見渡して、気づいたことがあれば伝えよとの命だ。

 実際は下手に出しゃばると目障りになりそうなので大人しくしておくつもりだった。

 ただ1つ、伝えておく事はある。


「公爵閣下、敵が次元回避を使用するタイミングですが、魔導騎士同士が乱戦している所へ、艦砲射撃を行う可能性が高いかと具申します」


 魔導騎士といえど軍艦の主砲が直撃すると、防御結界では防ぎきれない。ただし魔導騎士同士が近距離で戦う状況であれば、フレンドリーファイアの危険があるので、そこへ砲撃でもしようものなら味方を巻き込み、士気が下がる。

 ただ王国軍の魔導騎士なら一撃を次元回避でしのげるとすれば、乱戦状態でも攻撃し得る。それどころか、前線の魔導騎士をマーカーとして使用する様な事も可能で、命中率を上げることができるだろう。


 そうした事を説明した俺をちらりと見た公爵は、そのまま去っていった。この見立てをどう使うかは、公爵に委ねる事にする。

 間違っていると思うか、部下への信頼度を上げる為に利用するか、判断を任せた。




 旗艦の軍議が行われた会議室で、俺は情報分析官と戦場を確認する役目をこなす。戦艦同士が互いに打撃を与えない距離まで接近し、魔導騎士が発艦していく。

 相手を攻める部隊と戦艦を守る部隊とに分かれて、相手の魔導騎士と戦う事になる。


 ルーデリッヒ伯爵の艦隊も戦列に加わっており、ケルンもまた守備隊として、軍艦の警備にあたっているらしい。

 俺は情報分析官に許可を得て、マーキングさせてもらう。常時見続ける事はできないが、接敵するなど戦況に変化があれば、一報が入る様にしておく。


「この辺りと、この辺りの警戒が必要かもしれません」

「警戒と言うと何を?」

「敵の巡洋艦か、駆逐艦が慣性航行で迫ってくる可能性があるかと」


 戦場において慣性航行何ていうのは良いまとになる。しかし、推進機関を切って長距離を飛んできていると、発見が遅れる可能性があった。

 第2惑星でスイングバイを行い、推進装置を切って直進できる軌道で距離を稼ぎ、予想外のポイントから急襲して旗艦を狙う。そうした作戦の取れそうな軌道を潰しておきたい。


 相手からすれば敵陣の奥深くへの攻撃は、かなりの危険を冒す事にはなるが、後方に位置する旗艦を叩くことには意味がある。

 皇太子がいるからだ。

 王国は皇帝を手中にしており、反撃の旗頭である皇太子を倒すなり捕まえるなりすれば、皇室の権威は失墜を免れない。第2、第3の継承権を持つ者もいるだろうが、本星を巡る攻防で連敗したとなれば、結束は崩れる事になる。


 戦力で互角でも援軍があり得る帝国軍に対して、孤立する可能性のある王国軍は、正攻法での叩き合いは望まないはず。

 何らかの策を仕掛けてくる可能性は高い。その芽は摘み取っておかねば、旗艦にいる俺自身が危険だった。

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