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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
動乱期

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衛星要塞攻略戦

「しかし、釣れたのは2艦隊だけか。それも戦艦を含まない編成の」

「敵にとって、戦闘不能の艦隊など回収するだけと思っているのでしょう。それでも一方的に戦力を削れるなら、こちらに損はありません」


 呪歌を食らったていで慣性のまま進む艦隊は大きく隊列を乱すこともなく、第2衛星要塞へと向かっている。

 要塞砲を受けずに近づけるだけでも、死んだフリ作戦は有用なのだ。いくら防御結界で防げるとは言え、受け止める度に魔力は食われる。撃たれずに済むならそれに越したことはない。


 しかし、何かが引っかかる。

 3個師団、40隻以上の艦艇を無力化して、鹵獲するとなると2個艦隊で曳航するのは無理だ。このまま衛星要塞に近づくからそこで処理すればとはならない。

 減速しないままに要塞へと突っ込まれたら、艦隊はもちろん、要塞も深刻なダメージを受けるだろう。

 無力化した船を回収するなら、安全距離で処理できるようにできるだけ早く作業したいはず。


 それを2個艦隊のみで対処するというのはおかしい……?


「ルーデリッヒ伯爵、対要塞砲結界の準備をバレずに進められますか?」

「ん? それは魔力量が変わってくるので難しいな」

「最短で展開が間に合う距離はどれくらいですか?」

「そうだな、あと10分ほど進んだ辺りか」

「その距離で攻撃する方が良いかもしれません」

「理由を聞こうか」


 2個艦隊で3個師団の船を止めるにはかなり時間が必要で、ヘタをすると衛星要塞に突っ込みかねないという危惧。それを無視して2個艦隊のみに作業させるというのは不自然。

 そして帝国本星の防衛には7個師団の艦艇と要塞3つを擁して負けた。そこに3個師団で突っ込んでくるというのは不自然に思っていても不思議ではない。


「つまり相手は呪歌が通じていない事を見抜いている可能性があると?」

「はい。そこで相手が取りうる作戦としては……」

「鹵獲作業を進めるフリをして、油断させておいて要塞砲を打ち込む……か」


 要塞砲への防御結界が間に合う距離というのは、相手も把握できてはいないとは思う。しかし、万が一にも距離を把握されていて、展開が間に合わない距離で撃たれると、こちらの被害は甚大となる。

 作戦は最悪を想定してしかるべき。死んだふりがバレる事と、防御結界が間に合わずに要塞砲を食らう事との被害想定を比較すれば、防ぐべきは要塞砲だ。


 もし死んだふりがバレたとしても、第2衛星要塞へ駐屯しているのは4個艦隊ほど。鹵獲に来ている2個艦隊に要塞砲を入れても、3個師団で戦えるこちらが有利だ。


「なるほどな。有利な状況を得て被害を減らしたいと、ギリギリまで引っ張って、要塞砲を食らっていたら話にならんな。艦隊に通信、交戦ポイントを結界が間に合うこの地点に決定だ」

「その距離では2個艦隊への直撃もあまり期待はできませんね」

「慎重に狙えと送れ。そしてポイント到着次第、対要塞砲防御結界を展開せよ」

「了解」


 ルーデリッヒ伯爵の旗艦艦橋で士官が忙しく動き回り始めた。




 規定ポイントへと到着し、帝国艦隊からの一斉射撃が近づいてきていた敵艦隊へと放たれる。巡洋艦3、駆逐艦7の撃破は想定よりも多い打撃だった。

 即座に反応したのは衛星要塞だ。元々狙いをつけていたのだろう、帝国の攻撃直後に要塞砲が放たれる。

 それを4隻の戦艦で展開した防御結界が盾となり防ぐ。次の砲撃に備えて結界を展開する戦艦がローテーションして守りにつきつつ、前進を続けた。


 要塞砲の不発を受けて、要塞の防衛に艦隊が繰り出して来たものの、数の有利は帝国側にある。戦線を押し込み、要塞の抵抗もあったが、大きな被害を出さずに、衛星要塞を制圧することに成功した。

 まあ、相手も負けは覚悟で痛手を受ける前に撤退していったので、戦果は要塞の占拠に限られたが。




 要塞を押さえた先行艦隊は、そこで後続を待つことになる。本星には王国軍3個師団が待っており、こちらと戦力は互角。

 もし帝国軍から鹵獲した船を使える様になっていれば、戦力的に相手が上となる。更に本星周辺にも防衛機構はあるので、攻める側が不利でもある。

 要塞砲も本星を背に布陣されているので、使うことはできない状況だ。


 皇太子を擁するヴェルグリード公爵の艦隊を待つのが元々の作戦だ。もし王国が皇帝を盾にしてきた場合に、貴族の立場で強行はできない。

 皇太子自らが王国を批難しつつ、攻撃する必要があった。




「艦隊同士の砲撃戦で終わったから、出撃はなかったぜ」

「まあ数の差が圧倒的だったからね」


 衛星要塞の食堂でケルンと会って話す機会があった。互いの近況を報告しあったが、ケルンは新兵としてかなりしごかれているらしい。

 魔導騎士部隊への配属だが、メンテナンス作業などを叩き込まれているとのこと。


「俺の事を知ってて怯まない連中が集められててな」


 ケルンは幼い頃からロッドの対戦相手を求めて、ルーデリッヒ家の家臣団を練り歩いていた。気の置けない仲であるというのは、良い面もあれば容赦ないシゴキを受ける面もあったようだ。


「おかげで整備の成績が上がりそうだ」

「このまま本星を奪還できれば、軍学校の再開も早くなるかな」


 捕らぬ狸の皮算用とも少し違うが、この戦役に参戦したという実績は、軍学校でも評価されるだろう。

 ただ本当に早期に再開されるか、そもそも奪還が上手くいくのかもまだまだ不透明だ。


「マットが無事だといいけどね」

「軍学校に残った生徒、それなりに居たよな」


 敵国に占領されたというのは、懸念しかない。


「無茶な反撃をしていなければ、この短時間でどうこうなる事はない……と信じたいな」


 そうならないために、できるだけ早く奪還したいと思った。




 要塞奪取から2日後、ヴェルグリード公爵率いる本隊が合流。10個師団規模の軍勢が整った。

 対する王国軍も帝国本星の衛星軌道上に軍を集結、侵攻時の5個師団に加え、鹵獲した帝国の艦船を2個師団分戦列に並べてきていた。

 更には要塞ほどではないが、防衛機構を備えた衛星が4基浮かんでいる。


「戦力としては五分と言えます」

「ふん、海賊風情蹴散らしてくれましょうぞ」


 分析官の報告に対して、公爵の取り巻きらしい貴族が気炎を吐いている。


「要塞砲は王国軍が本星を背にしている事で使用できません」


 戦艦を貫けたとしても、その余波で本星の地上まで焼かれてしまうからだ。


「逆を言うと、王国軍はその範囲外への布陣はし辛い状況で、密集しています」


 惑星1つ分の移動範囲は、宇宙規模の戦闘で考えるとかなり狭いと言える。


「密集している分、対艦防御は堅いので魔導騎士による白兵攻撃が有効と思われます」

「望むところよ」


 要塞砲を防いだ様に、戦艦が密集した陣形で防御結界を張ると、生半可な火力では突破できない。結界内へと侵入し攻撃できる魔導騎士や戦闘機での近距離戦が雌雄を決する事となるだろう。

 クラス対抗でもそうであったように、魔導騎士による戦闘は、戦場の華。武人の多くはその操縦に長けており、自信を持っていた。


「戦艦の縦列陣形で相手に接近、近距離戦で仕留めにかかります」

「ふむ、正攻法ではあるだろうが、戦力が互角では被害も大きかろう?」

「なに、海賊風情に遅れをとる帝国騎士はおりません」


 公爵の疑問に武官が力強く応える。


「戦の基本は防衛が有利。地の利を活かせるからな。相手は鹵獲した艦船を使用している分、乗員の数は十分ではない可能性もあるが、もう一つ二つ有利な点が欲しい所だが」


 しかし、公爵とすれば根性論的な回答ではなく、論理的な優位性が欲しいらしい。


「さて、若き知恵者よ。何かないかね?」


 何故か軍議に呼び出され、端で大人しくしていた俺に、公爵は話を振ってきた。無茶振りにも程がある。

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