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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
動乱期

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王国艦隊襲来

 俺はオールセンと協力して、軍学校の輸送船で使えそうな隠蔽装置や追加ブースターなどを整備班と協力して用意する事にした。

 生徒達がそうした行動をする事に教員陣も反対はしない。何か行動していた方が、校内の治安にとっても良いとの判断だろう。


 俺達がそうした活動を開始するのと合わせるように、ケルン達は歩兵科の生徒で集まって訓練を行ったり、魔導騎士クラスでは魔導騎士のメンテや模擬戦を行うようになっていった。




 王国軍が国境の星系を制圧してから2ヶ月。帝国の本星がある星系の外縁部へとその姿を現した。やはり海賊騒ぎがあった星系やその他、貴族の領地へと姿を現したのは陽動。

 一気に本星系を攻める算段だったようだ。

 現れた艦隊の規模は5師団にものぼり、帝国の防衛艦隊と同規模である。それならば、要塞砲も備えている帝国が負ける要素はない……はずだった。


 民間にまで情報が下りてきたのは、防衛戦が始まって半日が経った頃。どうしても星系内で情報伝達魔法を使ったとしても、タイムラグが生じてしまう。

 星系内は両軍の空間魔法を阻害するジャマーが展開されているので、伝達速度が遅くなるのだ。


 軍学校では一報を受けて、脱出用の船を起動し始めた。万一に備えてとの事だが、この星自体が戦場になる可能性は低い。

 この世界の戦争は、基本的に宇宙で決まる。衛星軌道上を戦艦で押さえられたら組織立った行動をしていたら、上空から狙い撃たれるのだ。

 ゲリラ戦であっても、空の目があるのとないのとでは大きく変わってくる。

 そんな状況から戦況を覆すのはほぼ不可能なので、無駄な被害を出すくらいなら降伏を選ぶ。


 惑星から脱出しなければならないとすれば、支配者層、貴族達、高級官僚、その最たる者は皇族となりそうだ。

 現皇帝本人が逃げるかはさておき、皇位継承権を持つものは逃されるはず。もう既に本星を出ている者もいるだろう。この辺りはセキュリティの関係から表に出る情報は少ない。


 軍学校の生徒の中には、貴族の子弟も多いので、兵員輸送船で脱出を図るのは自然な流れ。逆に、庶民の中には校舎に残る選択をする者もいた。

 ルームメイトの歩兵科マットや軍務科のローガンは残留組だ。


 船は学年別に1隻ずつ、乗員500名ほどの船。操艦は教員達によって行われる。

 俺は代表となっている参謀科の担当教員に、予備ブースターと隠蔽ステルス魔道具の積み込みを申請して、許可されていた。

 追加ブースターは、船体の外に付ける必要があるが、今のところ格納庫で保管されている。

 隠蔽魔道具は船内で使えば効果を発揮するので、オールセンが管理していた。ただ輸送船自体の装置と干渉する懸念もあるので、使用する際には教員の許可が必要で、動力源となる魔力タンクは外されている。


 輸送船は衛星軌道上にあり、校内の転移装置で船内へと送り込まれた。内装は旅客機に近い。ずらっと前方を向いた椅子が並んでいて、クラスごとに座席が割り振られている。

 その他、軽く運動できるスペースや食堂なども用意されていて、長時間航行も視野に入れられた作りだ。


 各科で点呼が行われ、退避する生徒の搭乗が確認された。とはいえ、実際に星系を脱出するかは戦況次第である。




「最新情報は?」

「ぼ、防衛艦隊が、到着した」


 魔術師クラスの点呼を取って、担当教員にオールセンが情報端末にニュースを表示して見せてくれた。

 星系の外縁部に出現した王国艦隊を挟み込む様な位置へと、帝国の艦隊が出現していた。それぞれ1個師団ほどの規模で、王国軍の左右への展開を防ぐ動きを見せていた。

 現状で王国5に対して帝国7の戦力比。更に帝国には要塞衛星が3基あるので、優位が増した形だ。


「早い援軍だったな」

「た、多分、情報を、掴んでいたと、思う」


 民間には下りていなかったが、王国艦隊を追尾できていたって事かな。逃さないようにしっかりと包囲して、殲滅できる布陣が組まれている。


「こ、これで、勝てる」

「それ負けフラグじゃないか?」

「物語と現実は、違う、よ」


 実際、戦局的に見れば帝国の勝ちだとは思うが、不確定要素も残っている。国境星系からの報で、要塞砲が当たらなかったという話。

 そしてその後の戦況の動きが不明な点。

 星系内は空間転移がジャミングされていて、速報は届かない状況とはいえ、何らかの通信が放たれていれば、周囲の星系で拾えた可能性はある。それもなかったという事は、星系から外部への通信自体が行われなかった可能性がある。

 それは戦局が一気に動いて、星系を制圧された可能性も捨てられなかった。


「王国側が何らかの新兵器を持ってる可能性は高い気がする」

「で、でも、技術革新があったとして、それが、全く漏れないのも、不自然」


 実用試験も行われていない兵器が、いきなり実戦に投入されたとは考えにくく、また途中の星系を無視して帝国本星まで侵攻するなどセオリーを覆せるほどの兵器。事前に実験が行われていたはずである。


 仮想敵国である王国には、諜報部から多くの諜報員が派遣されているだろう。そこで大規模な実験などが行われていたら、何らかの情報が拾えているはず。

 実際に星系が落とされる状況になる前に、対抗策が練られていると考えたい所だ。


「帝国の諜報を掻い潜って、新兵器を作り上げていたとは、流石に考えられないか……」


 もし諜報部を完全に封殺されていたら、その時点で詰み。もっと帝国内の警戒レベルが引き上げられているはずだ。

 現状、貴族が自領に引きこもっている状況ではあるが、負けると思っている雰囲気でもない。

 まあ、日本が敗戦した時も、新聞などは負けるなどとは書けなかった訳で、メディアを通した情報では負けの可能性を論じれないかもしれないが。

 そんなことを考えていると、艦内放送が流れた。


『本艦は帝国本星の衛星軌道を離脱、星系外へ向けての航行を開始する。各員、着席して姿勢を保持せよ』


 緊急発進を告げる内容だ。高加速での星系脱出を試みるという事になる。何らかの戦況悪化の速報が教員達に伝わったと思われた。

 程なくしてシートに押し付けられる様な加速が始まる。こうなると私語も許されない。周囲は静寂に包まれた。


 座席の前方に埋め込まれた情報端末の画面に、状況を説明する文章が表示された。

 星系外に到着した帝国艦隊からの通信が途絶、戦況の詳細が掴めないため、王国艦隊とは逆の方向へと発進する旨が伝えられた。


 艦隊間の砲撃なども観測されておらず、何が起こっているのかが不明なようだ。まだ帝国本星と敵艦隊の間には、防衛艦隊が展開しているので急に攻められる事はないだろうが、安全を期すための発進ということだ。


 天文単位での戦闘というのは中々にもどかしい。最速で情報伝達できる空間転移を利用した通信がジャミングされると、光速通信でも数時間のラグが発生する。

 王国軍と本星の間に展開する防衛艦隊からの通信も1時間ほどのラグがあるので、現在がどうなっているかも分からないので、予測しての行動が必要だった。


 急加速状態から解放されて、シートへの押し付けられる感覚が弱まる。まだ加速状態なので、Gは艦後方へと向いていた。席を立つことは許されていないが、周囲と会話するくらいはできるようになった。


「大丈夫か?」

「く、苦しい、けど、大丈夫」


 反重力の術式で、実際のGからは軽減されているものの、全てのGを打ち消すほどの魔力を浪費する訳にもいかないので、急加速は苦しい。

 体を鍛えていなければ、肋骨が折れるなども危惧されるが、さすがに軍学校の生徒でそこまでの負傷はないようだ。


 情報端末に魔術師クラスの生徒のバイタルを表示して、オールグリーンなのを確認して担当教員に報告を入れる。

 ひとまず、帝国本星から離れる事はできた。

 ここから恒星を迂回して、空間転移のジャマー圏外を目指して航行する事になる。


「さて、戦況はどうなっているのやら……」


 急加速を必要とする状況というのは、不安を掻き立てるには十分だった。

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