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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
青年期

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勉強しつつ過ごす日々

 俺が自身の魔法実験を繰り返しているうちに1ヶ月ほどの日数が経っていた。

 冷気の魔法を紐解き、重力の作用を確認していたら、前世の記憶を思い出したりして、理解が深まりかなり使える様になっている。

 特に空気を冷気分解できるようになったのは大きい。酸素の液化温度は窒素よりも高いので、その液体を分離して気化させる事で、高濃度の酸素を得られるようになった。


 ちなみに気体の温度は、圧力を上げると熱も上がり、圧力を下げると温度が下がるという現象を重力操作で行っている様だ。

 おかげで火の魔法を温度上昇させる術式でも、重力操作で火力を上げる式を覚えられた。そこに分離した酸素のみの風の魔力を加えたら、ちょっとした爆発事故を起こしたのも良い思い出。


 そうやって俺が魔法実験を行っているうちに、クラス内順位では貴族連中が順位を上げ始めていた。

 基礎学力の違いによる吸収の早さもあるが、魔導騎士の扱いでかなりの差ができているのも大きい。

 庶民の魔術師は才能型が多く、魔力の扱いも我流がほとんど。そのために決められた方式で魔力操作が必要な魔導騎士の扱いに困っているのだ。


 逆に貴族は素養が幼い頃に調べられ、適性があると判断されたら、そこから魔力の扱いを教わっていく。系統立てて魔力の扱いを習得しているので、魔導騎士の扱いも長けてくる。

 そして魔導騎士同士での対戦が行われれば、勝つのは貴族側という図式ができあがった。


 そうなると才能で魔法を使ってきた者達にも危機感が芽生え始め、授業への集中力が高まっているのが現状だ。

 しばらくは下位の順位変動は激しいだろう。




 そんな中、一気に魔導騎士を扱えるようになったのは、オールセンだった。魔力制御が苦手な彼は、その打開策として義足などの技術を応用して作った小手や具足を開発。魔導騎士を動かすのに必要な魔力制御を、その小手や具足に任せるという荒技で克服した。

 間に余分なパーツを挟む分、直接操作するよりもラグがあると思っていたが、オールセンの調整技術はそんなに甘くない。


 予め一連の動作をパッケージとしてまとめる事で、コンボワークさせる技術に昇華した。拳を繰り出すコマンドを用意するのではなく、上段右から左フック、前蹴りまでをセット化する事で、逃げ場をなくし、追い込み、ダメージを与えるまでを淀みなくこなす。

 それは前世の格闘ゲームでパターン化されたコンボ攻撃の様だった。


 俺との対戦でもそれらを駆使してかなり追い込んで来た。アイネとの白兵特訓で武術の知識を持つ俺は、そんな付け焼き刃のパターンを崩す事も最初は容易だった。

 しかし、アップデートを繰り返すオールセンのコンボ攻撃は、フェイントやキャンセルなどを組み入れる様になり、状況に応じた動きができるようになっている。

 このままでは攻略される可能性も出てきたが、もう少しは粘りたい。




 リアとも少し仲良くなった……気がする。例の森の中で魔力の収集を観察しながら、体外の魔力操作の練習をしていると、ポツポツとコツを教えてくれる様になった。

 ただ少しかじり始めるとリアの技術の凄さがより分かった。自然の魔力を操るというのは、自分の魔力を操るのとは全く別物だ。


 体を動かすのと、スプーンに乗せたピンポン球をコントロールするくらいの違いがある……いや、分かりにくいな。

 起点となるのはあくまで自分の魔力であるのは確かなんだけど、動かそうとしても思った方向に進まず、クルクル回るだけだったり、揺れて落ち着かなかったり、勝手に飛び出てどっかにいったりと、何をするにもままならない感じ。


 リアの様に誘導して、更に分離させるとか、どうなっているのかと思う。


「流れを読む」


 アドバイスとしては漠然としすぎていて、どうすれば良いのか分からない。ただ本人も伝えるのが難しいようだ。

 上流から流れてくる笹舟を川面に石を投げることで波紋を作り、思った場所へと運んでいく……的な事を言われても、無理としか思えない。


 風の魔力は空気の流れ。その流れが大事なのは分かるんだが、単に風向きを読むというのとは違う。こちらが魔力を出せば、干渉して乱れが生じるのだが、それで動く方向を読むとなるとお手上げだ。

 これまた地道な練習を重ねるしかないだろう。




 そして、問題となりつつあるのは、海賊被害だ。以前から商船を狙った海賊行為は続いていたが、それが徐々に広がっているとの事。

 隣国の海賊国家の差し金だろうと予測はされているが、帝国内の僻地を狙ってかなり広がって活動されていた。


 僻地、辺境から算出されたレア鉱石であったり、原生植物から採れる食材であったり、天然のマナを大量に含んだ魔石など、帝国中央に運ばれる荷物が狙われている。

 輸送船も警戒しているのだが、採算を取るためには過度な警備もできず、襲撃に対抗できずに荷物を奪われるケースが多発していた。


 帝国軍の治安部隊が各地に出張っているが、一報が入ってから駆けつけても間に合わない。どこかで大規模な包囲網を作って、逃さないように対処するしか方法がなかった。


「やはり戦闘機による迎撃しかないよ」

「しかし、海賊船の武装も侮れない」

「装甲はないんだ。一発ぶち当てれば……」

「距離があればそれだけ当たりにくいんだよ」


 ルームメイトのルイスやローガンは、海賊狩りで功績を上げるための方策を話し合っているが、堂々巡りで新しい案は出ていない。


・一般的な船より海賊船の方が速い

・海賊船を上回る機動の戦闘機は航続距離が短く、武装でも海賊船に負ける

・海賊船は自分が優利でなければすぐに逃げる

・どこに出現するかが分からない


 こうした点を改善していかないと、撃破には至れない。

 マットは乗り込みさえすればと言っているが、具体策は出せない。揚陸艇で横付けできるくらいなら、近距離から攻撃魔法を当てる方がまだ可能性はある。


 海賊船を撃破する最大のチャンスは、荷物を奪っている間。この時ばかりは、海賊船も動けない。

 なので輸送船とその護衛を沈黙させた後で、それらの作業に入る。それができなければ去る。


「積み下ろし時間を長引かせて、応援が間に合う様にできれば……」


 輸送船が運ぶのは多くの場合、コンテナを利用する。運ぶ物を同じ大きさで揃えた方が、作業効率が良いからだ。

 積み下ろしが楽という事は、奪う者にとっても楽になる。かといって、コンテナを使わずに鉱石などを直置きなどすれば、運ぶ際に傷つく恐れもあるし、積み下ろしに時間が掛かって商売にならなくなる。


 コンテナを下ろす際に鍵を外す必要があるが、海賊達はその解除方法を心得ている。海賊でも解除に手こずるような鍵を用意できれば、時間稼ぎはできそうだが、この辺の技術もセキュリティのいたちごっこ。先進の鍵が開発されても、それを開ける鍵が開発される。

 解除できないと見れば、即座に脱出するだろうしね。

 援軍が駆けつけるまでの時間を稼ぐというのも簡単ではない。


 なので帝国軍は拠点を絞ってそこを叩く方法でしか対処できないのだ。


「そういえば、荷物にマーカー仕込んで、それを追跡するとかはやってるよな?」

「ん?」


 ふと思いついた事を確認してみると、ローガンが小首を傾げた。


「定期的に信号を出して居場所を教えてくれる魔道具を荷物の中に入れておいて、遠くからでも追跡できるようなシステム」


 GPSの宇宙版みたいな魔道具はあると思うんだが。


「どうだろうか……魔力の消費があると、気づかれて止められると思うが」

「そりゃそうか」


 前世で見たドラマなんかも途中で見つかって壊されるケースがあるもんな。ただちゃんと追跡できるケースもある。


「その手の魔道具があるか確認してみよう。それを気づかれにくい様に細工できれば、逃げられた後に追跡できるかもしれない」

「そうだな。現場を押さえられなくても追跡できれば海賊を狩れるかもしれない」

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― 新着の感想 ―
[一言] 重力を使った冷却魔法は熱交換器のシステムみたいなものかな? 実験には良いけど戦闘に使うには悠長な気がする。 直接相手を加圧減圧して攻撃した方が早そうよね。 というか、重力を扱えるなら悪い事…
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