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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
青年期

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リアの才能

「面白い?」


 幾度か魔力庫へと風の魔力を収集したリアがじっと自分……というか、その周囲の魔力を観測していた俺に対して問いかけてきた。

 我関せずの態度をずっと見せていたリアだが、さすがに気になってきたのだろう。


「ああ、面白いな。僕にはできない技術だ」

「そう」


 一言だけ漏らして、リアは再び魔力を動かし始める。しかし、今までとは少し違っていた。純粋に魔力を集めているのではなく、魔力をより分ける様に動かしている。

 僅かな魔力の差、本来は風の魔力として混ざり合っている物を、じわりじわりと分離している様に感じた。


 何をしているのか?

 俺の魔力感知を試しているのだろうか……いや、自分の作業に没頭している様に感じる。先程までの涼やかな印象はなくなり、眉間にシワを寄せながら集中を高めていた。


 そうしてしばらく魔力を選り分けて後、ポケットからライターを取り出す。ん、と思って身を乗り出した所で着火、一気に火柱が起こり更には風向きがこちらへと変わる。


「!?」


 びっくりはしたものの防御結界で防げた。


「残念」

「いやいや、残念じゃないだろ。いきなり何をするんだ!」

「倒して順位上げる」

「いや、審判いない所で倒したって、加点はないぞ!」


 そう言い返すと、リアは目を丸くしてびっくりした表情を見せる。普段は無表情だけに、幼い雰囲気が強まった。


「まあ、対戦だとそんな不意打ちはできないし、あんなため時間も与えないけどな」

「むう」


 むくれた様な、すねた様な声を上げるが、表情はいつもの無表情に戻る。


「ちゃんと先生の話を聞いておけよ」


 飛び級なんだろうが、やはり全体的に幼いらしい。考え方が子供っぽいと思う。自分主体に考えがちなのだ。


「で、何をしたんだ?」

「風には色々な性質がある」


 リアにしては長文のセリフを吐いたら、それで説明は終わりって感じでライターをしまっていく。


「性質って何だよ」

「火が好きな子を集めた」

「風の中から、火が好きな子を集めて火を着けたら一気に燃え上がったって事か?」


 コクリと頷き、説明は終わりとばかりに歩き始めた。校舎の方に戻るらしい。

 火が好きな子……か。

 爆発的な燃焼を可能にする方法としては、可燃物に火を点ける方法の他に、酸素を供給するという方法もある。


 物が燃えるというのは、酸化現象でもある。可燃物と酸素が十分にあれば、一気に酸化が進むので激しく燃える。昔、理科の実験で酸素を集めた中でろうそくを燃やすのを見た記憶があった。


 この世界は魔法で動いているが、物理法則を無視している訳でもない。空気中の酸素を集めて火を点ける事ができれば、爆発するような炎を作る事もできるのだろう。

 この惑星の空気は、地球に近い窒素8割、酸素2割。その2割の酸素を化学反応ではなく、より分けるというのは、どんだけ精密な操作なのだろうか。


 術式で魔法を起動するのではなく、魔力を制御するだけで行えている点もかなりの衝撃だ。俺はあくまで術式を起動するための燃料として、体内の魔力を制御する方法を練習してきた。

 しかし、リアがやったのは、魔力の操作だけで、魔法を使うような事象を起こして見せたのだ。

 これに術式が加わるとどうなるのだろうか?


 オールセンとはまた違った方向の天才であるのは間違いなかった。




 校舎に戻るまで特に会話もなく進む。俺は先程見たリアの魔力操作を自分なりにできないかと周囲の空気を感じようとしている。リアは元々口数が少ないので話しかけてくることもない。

 リアはそのまま女子寮の方に歩いていったので、女子だったのだろう。


 俺が自室に戻ると、今日は僕が最後だったらしく、そのまま食堂へと移動した。

 食堂のささやかな変化としては、料理にソースの選択肢が増えている。辛くないケチャップソース。それは劇的なほどではなくてもレパートリーに変化を与えていた。


「オムライス」


 ルイスがケチャップで味付けされたコメを卵で覆い、更にケチャップを足したメニューを頼んでいた。


「ナポリタン」


 ローガンがケチャップで味付けされたスパゲッティを食べていく。イタリアの地名を冠しながら、日本で開発されたスパゲッティがこの世界で生まれるはずはない。

 単に俺がケチャップソースの魔道具を食堂の調理人に渡す際に披露したメニューというだけだ。

 ちなみにアラビアータは存在する。トマトソースをベースとするが、辛みを加えた味付けならメニューに加えられていた。


 調理用魔道具を作った職人は、どれだけ辛い物が好きだったんだろうか。いつからこのスパイスの全盛が続いているのかは分からないが、多彩な料理知識は今後、価値を持ってくるかもしれないか。

 ただ毎日の食事に彩りは欲しいから、良い塩梅を見つけていくしかないな。


「鶏肉のケチャップ煮」


 マットは鶏肉とキャベツをケチャップで煮た料理を頼んでいた。

 他のテーブルを見ても、新たに追加されたケチャップメニューを楽しんでいる。貴族の中でも辛味だけの料理は飽きてるんじゃなかろうかと思わせる雰囲気だ。


 俺は揚げ物を自家製のタルタルソースで食べた。マットが興味深げに見てきたのでおすそ分けして、好評を貰う。こちらも早いうちに魔道具化していきたいね。




 ベッドに入ってからは、リアがやっていた空気の分別というのを試してみることにした。リアは魔力の感じ方の違いで、空気の成分を分けていたのだろうが、俺はそれが分子の違いだと知っている。

 そこは少しアドバージとなるかもしれない。


 ただ窒素と酸素というのはほとんど重さが変わらない。そのため、空気中で分離せずに僅かな空気の流れで混ざるのだ。

 なので重さで判断はできないだろう。


 特性としては、酸素はもちろん酸化反応。多くのものが、酸素と結びついて燃焼したり、変質したりする。水素は燃焼して水となり、炭素は燃焼して二酸化炭素として安定。鉄などの金属も酸化する事でその性質を変える。


 反面、窒素は不活性と言われ常温では他の物質と結びつきにくい。また液体窒素が急速冷却でよく使われる様に、液化する温度がかなり低い。


 それらの特性を魔力的にどう感じられるのか……リアは酸素は火が好きと称した。火の魔力と繋がる事で火力を上げられるのが感じられたのだろう。

 移ろいやすい性質の酸素と不活性な窒素。その差を感じられれば、分離できるのか。


 火が好きとは言っても、熱に引き寄せられるわけじゃないはず。あくまで燃えるという現象に使われる。

 となると燃えやすい物に寄り易いのか。

 燃えるといえば炭素とか。燃えて二酸化炭素となるのが分かりやすい。


 となると炭なんかを用意したら良いのだろうか。でも炭って火が点きにくいイメージもある。やはりガス的な物が燃えやすそうだよな。

 ただそこに酸素が寄っていくかというと、そんなイメージもない。


 魔法の制御は人間の意思、イメージに引っ張られるので、自分がイメージできない物は制御しにくい。

 リアは逆に化学知識がないために、風の性格として火が好きな風の魔力というイメージができたのかもしれない。


「そういえば理科の実験で酸素を集めるにはどうしてたかな?」


 過酸化水素水と呼ばれる薬品を使ってたような気がするが、それが手に入らないと駄目か。どこで手に入れるんだっけか。

 ビーカーをひっくり返して、そこに集めていた気がするな。確か水槽の中で、水を通して集めるんだったか。


「つまり水を通すと酸素が得やすい?」


 酸素を集めるんじゃなくて、窒素の方を空気から抜ければ酸素だけが残る。水を通して集めていたって事は、酸素は水に溶けにくく、窒素は水に溶けやすい?


「火が好きな風ではなく、水が好きな風を除く……」


 水で作った膜で空気を濾して酸素を分離できるのなら、そのイメージはできるかもしれない。

 よし、方策が決まれば後は実践あるのみだな。

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